サクラサク -入学式-






高校入学の登校初日……




どうやら私、人を轢いてしまいました。




もしかしたら二人も……






先程まで、私は綺麗な桜に見とれ、気分よく自転車で走っていた筈だったのに……この状況は如何なものか……



完全に、よそ見をしていた私が悪いのだが……。


私の自転車の下敷きになっている人と、私が下敷きにしているピンクの頭の人……

制服を着ているのを見る所、正十字学園の男子学生の様だったが、突如訪れたこの状況に、冷汗をかいてしまう。



「す、すみませんでした!!あぁ…お年寄りじゃなくてよかった!いや、違う、本当すみません、大丈夫でしたかっ!?」



慌ててピンクの人から退けたら、思わず本音が漏れてしまったが、それよりも、自転車で轢いてしまって怪我をしないわけがない。

”大丈夫ですか!?”と側にいた、眼鏡をかけた坊主頭の男子生徒は、すかさず、自転車起こして、下の人を救出していた。

その人はムクっと起き上がるやいなや、



「……ゴラァァァア!いきなり何すんねん!自転車で突っ込んできよって!!轢き殺す気かぁぁ!!あ゛ぁ!?」

「!!?ひぃっ!すみませんっ!」



ドーン!という効果音と共に般若が背景に見えそうなくらい、もの凄い形相で睨みつけられてしまった。

起き上がったその人は凄く身長の高い人で、上から思い切り見下ろされて、私はビクビクとしながら謝るしかない。


((金髪メッシュとか、ヤンキーだっ!!怖いよっ!))


よく、ドラマでヤクザにぶつかって因縁つけられる人がいるが、今まさにそんな気分だ。




「あたたた、いやぁビックリしましたわ〜!………お、可愛いらしい女の子やないですか!嬉しいわ〜!」



ピンクの人もムクっと起き上がって、制服の汚れを掃いながら、私を見てそんな風に声をかけてくる。


((こっちの人はなんか、軽い……?))


”志摩さんも大丈夫でしたか?”と声をかけられていたのだが、その人は”女の子が降ってくるて、なかなか無いから嬉しいわ〜”などと、怒ると言うよりも意外と喜んでいるようで……



((ヘンタイだっ!!))



私は凄い人達にぶつかってしまったと思い、係わり合いになって難癖つけられる前に、



「不注意で本当にすみませんでしたっ!!失礼しましたっ!!」



と、自転車を急いで回収し、全速力でペダルを漕いで、逃げる様にその場から離れた。



((都会は怖い人ばかりだっ!!))



田舎者には恐ろしい経験をしてしまった。

先輩だったらどうしょう…御礼参りとかあったりして…と、考えると恐ろしく、私は真っ青になってしまう。



((私の高校生活終わった……きちんとお詫びした方がよかったかも……))



逃げてきてしまったのを後悔した私は、一応名前は覚えてるから、いざとなったら頼りの綱に聞こうと思うのだった。



((金髪メッシュが”ぼんさん”ピンクが”しまさん”……よし。))



轢き逃げてしまったままでは気分が悪いので、何かお詫びを考えなくては…と思っていたのだが……


この学園の広さと生徒数を考えると、会えるかすら怪しくなってきたのだった。


何故かというと、私は何とか無事に、入学式会場である大講堂にたどり着いたのだが、その大講堂目一杯に人が集まっており、人数の多さに驚いてしまったからだった。



((こんなに人いるとは…さすが、名門正十字学園……私の地元とは大違いだわ))



地元はいつもガランとしていて、人が集まるのは花火大会やお祭りのイベントくらいだったから、人数の多さに人酔いしそうだった。


先程の人達が先輩か何かもわからないし、この人数じゃもう会うことも無いんじゃないかなって思ってきたので、先程の事はあれで終わり!と自己完結する事にした。







『新入生代表、奥村雪男!』

『はいっ』





朝からぐったりしながら考え込んでいたら、いつの間にか式は進んで、新入生代表の挨拶だった。



代表の挨拶をする”奥村くん”て人は、入試トップだろうし、優秀なんだろうなぁなんて思いながら、私は壇上に上がる姿を見る。


入口で貰った入学式のパンフレットに、新入生代表挨拶”特進科・奥村雪男”と書いてある。


眼鏡をかけていて、如何にも、秀才オーラが出ていて、特進科なのも納得してしまう。

見た目で判断するのはよく無いけれど、やはり頭よく見えるのだから仕方ない。





式が終わり、大講堂から外に出ると、少し人だかりが出来ている所があった。


女子生徒ばかりの人だかりに、後ろの方から何かと覗いてみると、代表挨拶をしていた奥村くんがその中心にいるのだった。


代表挨拶で早くも有名人な奥村くんは、彼の容姿からか、お近づきになりたい女子達でいっぱいだった。



そんな人だかりを横目に、私はこれから行く所があるのだけれど、場所がなぁ………と、思っていたら




『○○、○○!』




と私の名前を呼ぶ声が聞こえる。

誰だろうと、キョロキョロと辺りを見渡したが、見知った顔がいなかった。



『○○!下ですよ、下』

「えっ!?」



と聞こえた声に下を向けば、私の足元には薄紫の色でピンクの水玉リボンを付けた犬がいた。




『お久しぶりですね☆』








えぇっと……







私、喋る犬に知り合いなんていないんですが…………












。。



12/04/14




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