決意を胸に






ガラガラと扉を開けて


「ただいま」


と帰れば。奥の方からパタパタと駆けてくる音がして


「竜士さんお帰りなさい!」


て□□が嬉しそうな笑顔で出迎えてくれる。


「今日はどうでしたか?」

「大した事あらへん。いつもと同じや」

「鞄持ちますよ?」


とニコニコしながら言ってくるのに”これぐらい自分で持てる!恥ずかしゅぅ事せんでえぇ!”て言ってたら

「………どこぞの新婚夫婦かぁ!!」


て俺の後ろの志摩に突っ込まれた。


「坊〜何やのぉ、俺らに見せ付ける為に呼ばはったん〜〜甘くて砂吐く思いましたわぁ……」

「し、志摩さん………」


何かブツブツとふて腐れる志摩と子猫丸と一緒に、虎屋へと学校から帰ってきた所だった。

二人に気付いた□□はまた笑顔になって。


「廉造くんに子猫丸くんもお帰りなさい!ゆっくりしてって下さいね!今お茶用意します」


て□□が声かけただけで先程までふて腐れてた志摩もコロっと態度変える。


「ハィ!おおきにっ!」

「ありがとうございます」

「竜士さん失礼しますね。今ご用意します」


”おん。よろしゅうな”て言うと一礼してパタパタとまた戻って行った。

その後ろ姿を見て志摩がデレっとしながら


「いやぁぁ□□ちゃんはホンマ可愛いらしぃなぁ〜可憐ゆぅか花があるっちゅうか」

「アホ言うとらんで行くで」

「あででででで!」


志摩の耳を引っ張る。”坊痛いわぁぁ”なんて言う姿に子猫丸も飽きれている様だった。





トントン

と叩く音が聞こえると”□□です。お茶をご用意しました”と声がする。
”入ってえぇで”と俺が声をかけると”…失礼します”とスっと戸を開けて□□が入ってくる。

志摩は相変わらずで、□□が来るまで俺の部屋でダラけきっていたのに、□□の声がするなりビシっと身なりを整える。

□□は茶菓子とお茶を俺らに出してくれて、そんな姿をデレっとしながら見ていた志摩が□□に話しかけていた。


「寂しゅうなるなぁ〜□□ちゃんのお茶もしばらく飲めへんくなんのわ」


学校ももうすぐ卒業式で、俺らは春から東京の正十字学園に通う事になっていた。
今日も志摩と子猫丸とその話しをする為に呼んだのだった。


「そうですね…私も寂しくなります……」


俺のとこからは□□がその時どんな顔をしていたかわからなかった。

”何かあったら何時でも呼んで下さい。仕事に戻りますんで”と□□はまたそっと部屋の外へと出ていった。




二人と話しもすみ、遅くなると悪いだろうからと帰路につかせた。

志摩と子猫丸を玄関先まで見送ると、虎屋の入口付近で□□が何かしているのが目に留まった。

俺の視線に気付いたのか□□はニコっと笑って声をかけてくる。


「竜士さん、お二人は帰られたんですか?挨拶しそこねてしまいました…」

「別にえぇ、また来る言うとったさかい……」


俺はそこで□□がしている作業を見てそんな時期か……と思っていた。


「お雛様か…もうすぐなんやな」

「そうですね…雛祭りの前にはもう竜士さんも卒業ですね……」


”寂しくなります…”と言う□□は本当に何処か寂しそうな顔をしていた。
そんな姿をみて、俺は話しかけようとしたのだが、その前に□□はいつもと同じ様な笑顔になった。



「早く出してしまわないと女将さんに怒られてしまいますね!」

「雛祭りあて、まだまだ先やないか、そんな焦る事ないんやないか?」

「それがですね…急がないとダメらしいんですよ!」


□□にどういう事なのかと聞いたら、急いで出す理由が”婚期を逃す”とか……そんな話し初めて聞いた。

俺は男だから雛祭りをする事は無いし、そういう話しは知らなくて当たり前な訳だが。


「女将さんが、私の為に早く出して早く仕舞おうて言ってくれて」


((オカンらしい…□□んこと娘みたいに可愛いがっとるからやろな……))


「でもお雛様って一年に一回だけで、後はずっと暗い所で眠ってる訳ですよね。
そう考えると早く出してあげたいけれど、早く仕舞われるのは悲しいんじゃないかなって思っちゃいますね…」


□□は優しい手で雛人形と雛飾りを取り付けていく。

”俺も手伝うわ”と言えば□□は嬉しそうに”ありがとうございます”と言うのだった。

雛飾りなんぞやった事が無い俺は、小さい細かな飾りに手こずっていると□□にクスっと笑われて何だか照れ臭かった。


「春からは竜士さんともこうやって、一緒に何かしたり話すのも出来なくなってしまうんですね………」


作業をしながら□□は先程俺に見せた寂しそうな顔をしながら言う。


「それこそ雛人形みたいに一年に一回しか会えない…とかだと寂しいですね」





春から俺は東京へ行く。

それこそ□□が言う様に年に一回帰って来るかもわからなくなる。


□□が住み込みで虎屋で働き始めてまだ日は浅いけれど、一番に俺の世話をやいてくれていた。

歳も俺と近い方だからか、オカンが虎屋の仕事の他に俺の世話係として□□をつけていた。


□□に”坊”と呼ばれるのは何だか壁を感じて嫌で、無理に名前で呼んで貰う様にしたのだが、□□は年下の俺に”さん”をつけて呼ぶ。


”サン付けせんくてええ”と言ったのだが

”女将さんや他の方の為にも馴れ馴れしく呼ぶ訳にはいかないですから”


と律儀な性格だった。


毎日の様に側に居た□□が近くにいない生活は俺も考えられなかった。

けれど春からは離れる事になるのだ。

優しいやつだから、俺の世話をしてくれていた□□はきっと寂しく無いわけがない。



「□□、□□にはホンマ世話んなったな。ありがとう…」

「そ、そんな事言わないで下さい!」

「俺はまだまだ未熟やから、こんな事しか言えんけど……」



俺の言葉に□□は申し訳なさそうにしていた。

けど俺は寂しいと言う□□を安心させてやれる言葉をかけてやりたかった。



「俺は!立派な祓魔師んなって必ず戻ってくる!」



俺は自分で決めた事を貫き通したい。その為に春から東京へ行くと決めたのだ。

寺の皆の為だけじゃなく、こうやって側で支えてくれていた□□の為にも立派な祓魔師になって戻ってくるのが一番だと思った。


俺の話しを真面目に聞いてくれていた□□が、

”はい。私はずっと応援してます”と笑顔で言ってくれたのが嬉しかった。




「それに…安心せい!□□が出遅れん様に俺がもらったる!」




□□は俺の言葉にキョトンとしていた。



「えぇか□□!三年や!三年したら必ず戻る!それまでそのまま待っとれよ!えぇな!」



フン!って俺は□□に命令の様な啖呵をきった。

□□は俺の言葉を何処まで理解したのかはわからないが、笑って



「はい!ずっとお待ちしてますっ!」



て言うからきっともう大丈夫だろうと思った。

側にいなくなるから寂しい思いをさせてしまうのだが、先の約束があれば□□なら待っていてくれるのではと思う。



後になって俺は、自分が凄い事を言ってしまったのに気付いて……恥ずかしさのあまり真っ赤になるのだった。





次の日の朝、

食卓に並ぶ 赤 飯 を見て呆気にとられていたら、そんな俺を見てオカンは何も言わずにニヤニヤとしていた。


((クソッ!!ニヤニヤしよって!!))


思い切り赤飯を掻っ込んで朝食を食べると、急いでその場を後にした。



「行っとくる!!」



「竜士さん、気をつけて行ってらっしゃい!」



と□□が笑顔で送り出してくれる。


きっと俺が家を出る時もそうやって送り出してくれるんだろう。


そしていつもの様に

”お帰りなさい”

と笑顔で出迎えてくれるだろう。



早く立派になって□□の所へ戻れる様に………






また一つ決意を胸に。



。。




坊ーーー!!可愛いよっww

雛祭りネタでこれも大分早いですがwほら!お雛様は早くださないとね!(←どんなんだ)

またもや中学ネタでスミマセン。。
お雛様って旅館とか必ずあると思って勝呂だと適任だなと。。

俺がもらってやるよ!なんて真っ赤になって言ったら可愛いじゃないですかっww


皆に愛されてる坊が可愛いなぁw

赤 飯 とか絶対出るでしょ!!


きっと啖呵きったとき声デカすぎてみんな聞こえてますw(だから赤飯)

坊をあたたかぁく見守るんですよね!

ヒロインは3つか4つ上くらいで他所から虎屋に働きに来た、という感じで住み込み設定にしました。美味しいですねw

メイドともまた違いますが、献身的に親身に仕える・・・ってやっぱメイドみたいなもんか!

お坊ちゃまですからね。。それもありか。。


坊には早く迎えに来ていただきたいですね。ヒロインも健気に待っててくれそうです。

学生の3年は長いですが、社会人の3年は短いのできっとあっという間です!


勝呂で雛祭り如何でしたでしょうか?


感想などいただけたら嬉しいですね!読んでいただきありがとうございました!



12/02/26




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