とある夏の日




(夏の日、金造と)



「あっつ……何なのこの日差し…」

「ほんま…しんどっ」

「こんな炎天下の中、しかもこーんな真っ黒い團服で外とか、殺すきか!!熱中症で倒れるわっ!」



この夏の最高気温を更新したこの日、京都出張所には余り嬉しくない知らせが届いた。



「『街中で相次いで倒れる人が続出』…って、この暑さじゃ誰だって倒れるって……」

「ほんまやな。俺らが倒れるっちゅうねん」

「それだけならただの病院だけど、『皆魔傷を受けて倒れていた』のだから悪魔の仕業だし……」



出張所にそんな情報が入り、私達は街中で目撃情報があった場所等を見回りしていた。

見回りで真っ先に行動するのは下の役目……若手の方である私達は真っ先に外に出された訳だ。

手分けしてそれぞれの箇所に別れた為に、私は金造と回る事になり今に至る。



「まぁ祓摩師の出番になる訳ですよね金造サン!」



私は少しニヤニヤしながら



「ほら、だってこういう時は金造が一番『金造様の出番や!』って駆けてくじゃない?やっぱりここは金造様の出番だと思うんですよ私はッ!!ネ!!」

「……なんや…その顔。いつも変やけどもっと変になっとるで」

「うっさいわアホ!……あー…暑くて金造怒鳴るのも疲れる」

「喋るんも怠うなんな……」



隣を歩く金造を見ながら、いつもはウルサイくらいに元気なのに、今日は物静かだと思っていたらそういう事か。



「金造も話したくないくらい怠いとかあるんだね。もっと騒ぐかと…」

「そんなしとったら余計疲れるわ…いざって時に動けんと困るやろ」



そう言って口を閉じ、真っ直ぐ前を向く金造。

私は”いざって時に”という言葉に、金造もやっぱり祓摩師なんだなと思った。


(金造……黙って真面目にしてれば格好いいのにな)


「あ゛ーーっ!!もうダメやっ!!」

「え?」



急に大声を出したかと思えば、隣で團服の法衣の腰から上だけを脱ぎだす金造。



「ちょっッ!!金造!何してんの変態!!」

「無理や!堪えられん!……あ゛ーこの方がまだマシかも」



下はいつもの法衣で腰で纏めた衣服を結び、上半身がタンクトップ姿の金造……

格好いいなんて思った数秒前の私、訂正。

(金造はやっぱりアホだ。ドアホだ!)



「信じらんない!!だらし無さすぎ!志摩隊長に見つかったら怒られるよ!てか私が一緒に歩きたく無い!」

「気にすんな」

「気にするっ!!」



はぁぁ…と今日一番の溜息をついた私。

このまま任務を続けたら、私が熱中症と心労で倒れてしまいそうだ。



「わかった。金造……そのままでいいから、ちょっとあっちで待ってて」



私は少し木で影になっていた所を指差す。

”おん、何や?”と言う金造を睨みつけて”いいから!”と待機させる。




数分後、金造の所に戻って来た私は唖然とする。


何故か金造の路上ライブが始まっており(そのままの格好で)、暑さのせいだかわからないが頭に血が昇りすぎた私は、買ってきたゴリゴリくん(ソーダ味)を金造の顔面目掛けて大きく振りかぶった。


私は、甲子園の球児に負けないくらいの素晴らしい腕前で、金造の顔面にストライクをかまし、すかさず京都出張所の志摩隊長へと電話をかけた。





「うん、冷たくて美味しい!夏はやっぱりアイスだね!」





私は、傍らで金造を叱り付ける志摩隊長の冷気を感じながら、買ってきたゴリゴリくんを食べるのであった。




そんなとある夏の日。







。。





12/09/05



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