光に包まれながら




冬の寒い時の空は
空気が澄んでて星が綺麗なのだと君は教えてくれた。


君から教えて貰うまで、僕の中の星空は、ビルの隙間から見える、ただ光を燈しているモノでしかなかったんだ。




「星を見に?」

「そう!夜こっそり抜けて見に行かない?」



□□は、何か凄く楽しそうな顔をしているのがわかった。
それと、次に僕が言う言葉を凄く期待しているんだという事も。


「僕は大丈夫だけど、□□さん寮抜けて来れるの?門限だってあるでしょ」

「あ、また雪は”先生”して!こういう時は無し!」

「あぁゴメン。まぁ実際先生なんだから仕方ないよ。”□□”は何で星を見に行きたいの?」


つい授業での癖が出てしまった事に□□に指摘さてしまった。


「今日の夜に、流星群が見れるんだって!時間もそんなに遅くじゃないみたいだし、どうかなって!」

”雪が行かないって言っても、燐を誘うか最悪一人でも行くけど!”


そんな事を言う□□が、何故だかいつもより強気なのは気のせいだろうか?


「夜に一人で出歩くのは絶対に駄目だよ。それに兄さんを誘わなくても僕は行くから安心して」

「ホント!やった!」


僕は□□が兄さんと二人で行くと言うものならば、明日は課題の量を増やさなくては…と考えていた。
その結末にならなくてよかったと兄さんには思ってもらいたい。


「じゃぁ夜にね!」

「あ。今日は凄く冷えるらしいから暖かい格好で来ないと駄目だからね!」


”わかった!大丈夫!楽しみにしてるねー!”
と言って□□は笑顔で帰って行った。

急遽出来た夜の予定に僕も心を踊らせつつ、今日は早く仕事を切り上げようと決めた。




 +++++++++




−−くしゅんっ

「□□大丈夫?さっきからくしゃみばっかりしてるけど……」

「だ、だぃじょ……くしゅん!」


隣を歩いている□□は先程からくしゃみを続けている。
暖かい格好をして来た方がいいと言ったのに、帽子と手袋はしているものの□□は僕から見たら凄く薄着だ。

冬の風邪も悪化させたら大変だし、僕が一緒だというのに風邪をひかせてしまうわけにもいかない。
塾では□□の教師という立場なわけだし。


僕は、もしもの為にと思って持ってきていたホッカイロを□□に渡し。
温かいお茶と、ひざかけ、それと……


「ゆ、雪?…こんなには大丈夫だよ?」

「風邪をひかない様にしなきゃね!」

「あ、ありがとう」


最後に僕の首にあったマフラーを巻いてあげる。
□□の首には少し大きいマフラーに顔を半分くらいのぞかせて□□は”でも凄く暖かいよ”と話す。

暖かいとニコッと笑った□□は空を見上げて話しだした。


「今日みたいな寒い日って凄く空気が澄んでて星が綺麗に見えるんだよね」


□□がそうやって見上げた空に目を向ける……


僕の目の前に広がる空はは、今まで見たことの無い景色だった。


光り輝く星々。
月があるわけでは無いのに、星達の一つ一つの輝きが空を明るく照らし出す。

まさに満天の星空と呼べるような空だった。


僕は今まで夜空を見上げる事が無かった様に思う。

小さな頃は泣いてばかりいて、夜は自分にとって怖いものだった。
歳を重ねれば、学業と祓魔師の両立で慌ただしい毎日を送り、空を見上げる余裕すら無かった。

だから僕が知っている星空は、ビルの隙間から見え隠れする、ただの光でしかなかったんだ。


「凄い…こんなにも星が……」


自分の口から漏れた感嘆の声。星空がこんなにも綺麗だと知らなかった。


「私の生まれた所は凄く寒い所で、こんなに都会じゃ無かったから空も広かったの。だから今日みたいな寒い日は星を見たくなる」


□□は何処か自分の故郷を懐かしむ様な顔をした。


「綺麗な星を見るとね、凄く心が癒されて元気を貰えるの」

「あぁ、本当だね…何だか凄く心が落ち着いていく」

「だから、毎日忙しそうな雪にもどうしても教えてあげたかったの」



”あとね!こっち来て”
□□は僕の手をとって歩きだす。見せたいモノがあるのだと言う。



”見て綺麗でしょ?”

そう言って□□が立ち止まった先に、
僕らの住む《正十字学園町》を一望出来る、星の様にキラキラと輝く夜景があった。


「此処も私のお気に入り!誰にも秘密だったの!」


僕の手を握って□□は笑顔で話す。



「夜景も、星と一緒。空気が澄み切った寒い時は1番綺麗に見えるの。
……そして、これが、私達の住む、私達が守る町の光。
私はこの輝く光にも元気を貰えるの……」



光り輝く町を真っ直ぐに見つめながら、□□の言葉は、どこか決意の様な重い彼女の意思が感じられた。

□□は、よく一人で此処を訪れていたのだろうか。
この景色を見て、何を考え思ってきたのだろう……

それは僕にはまだわからない。

けれど、今…隣に立つ僕の気持ちは伝わる様に、と□□の手を強く握り締める。



「あ!今流れた!始まったのかも!見れた?」



君の笑顔と、握り返して来る手の感覚、この景色を僕は胸に刻む。



そして、流れ星へと願いをこめて。


僕自分の目的と、隣で笑う□□の笑顔を守っていけるように祈ろう。



この輝かしい、光に包まれた中


僕よりひとわまり小さな、君の手を握りながら。





。。





初、雪男夢でした!
もっと仲良しでもよかったかな。
まぁ付き合い当初くらいで……

私の中の雪男は自然でいうと夜で星空ってイメージだったりします。
何処か落ち着いてるから大人な感じ。
嫉妬はよくするけど(笑)


こんな感じで雪男も増やして行きたいですね!
読んでいただきありがとうございました!



2012/02/08


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