行ってらっしゃい
「おはよーー!?って、なに!?どうしたの金造!」
「□□姉………」
朝、京都出張所に行くと、いつも元気な金造が、凄く暗かった。
しかも部屋の隅で落ち込んでるものだから、ジメジメとしてて、キノコが生えてるのかと思ったくらい。
「ちょっと金造!こんな所でキノコ栽培しないでよね!」
「□□姉……俺どないしたらえぇんやろ……」
「あ……あれ?」
いつもの金造だと、”キノコ食い放題やないか!”くらいの元気な返答があっていいのに……
今日の金造は本当に変だった。
「やっぱ□□姉も、言葉の壁って大きい思わへんか?」
((何が?))
て、思ったけど、言葉の壁=外国語にピンときた私は、あぁ…金造アホだし、バンドの歌詞が外国語で困ってるんだなって思った。
「そんな悩まなくても、金造は歌上手いんだからさ、音楽で気持ちは伝わるよ!」
「音楽で……」
「ほら、こう…魂の歌!みたいなさ、音楽って心に響いたり、伝わるのってあるでしょ?」
私の言葉に金造は妙に納得したらしく、”そっか…魂の歌な”とフムフムと言っていたら、金造の顔は徐々に明るく、いつもの金造に戻っていった。
「解った気ぃするわ!□□姉ありがとう!!オレ、ソ◎ルキングになってくる!!見といてな!!」
「((ソウ◎キング!?))う、うん頑張れ金造!!」
そう言って金造は凄い勢いで、明後日の方向に走って行った。
「え、ちょっと何処行くの金造!!仕事場そっちじゃっ………」
”早いから…”今日の金造は意味がわからない………とか思っていたら、いきなり後ろから、”□□”と声をかけられて、驚きのあまり身体がビクってなった。
振り返り声の主を見やると、柔造が立っていた。
だが、金造に続いて柔造も変だった。
「ビックリしたんだけど……てか、柔造も何でそんな暗い顔してんの?」
振り返り見た柔造には、いつもの笑顔は無く、何処か暗かった。
「□□・・・驚かんで聞いて欲しい事があるんや・・・・・・」
柔造は真面目な顔をして言うものだから、私もその空気に呑まれて、何を言われるのかと心構えをした。
「俺な・・・・・・・・・ヴァチカンに移動命令がでた」
「えっ・・・・・・うそっ・・・」
「俺と、金造もなんや・・・・・・」
「金造も!?」
柔造が言った事に、私は先程の金造の不思議な言動と行動を思い出した。
((だから・・・金造、言葉の壁とかって・・・・・・))
「それでも・・・どうしてそんな急にヴァチカンなんて!?」
「俺は志摩の跡継ぎ、やろ?せやから・・・お父がまだ元気なうちに、ヴァチカンで鍛錬積んで戻ってこいて・・・」
「そんなっ・・・今のままじゃダメなの・・・?」
「これからは明陀の仏教だけやなく、よりあらゆる祓魔知識に通じるように、悪魔祓いを学ばなあかんて事らしい・・・・・・金造も同じや」
柔造は志摩の跡継ぎで金造も同じ志摩の・・・・・・皆を引っ張っていくには、能力が高くないと仕方の無い事なのかもしれない。
私が勝手に志摩家の問題に口を出すわけにはいかない・・・けれど・・・
「ヴァチカンなんて嫌だ。柔造も金造も居ない京都なんて考えられないよ・・・行かないで!」
「□□・・・俺と一緒に行くか?」
”え?”と私は柔造に聞き返す。そうすると柔造は私に白い一枚の封筒を差し出してきた。
「□□・・・・・・、□□にも辞令や・・・せやから、□□さえよければ一緒に」
「柔造・・・・・・」
私は、柔造から受け取った白い封筒を開けて、中の紙を取り出す。
辞 令
所属 京都出張所・祓魔一番隊
▽▽ □□
願いによりヴァチカン勤務を免じます
発令日 20××年4月1日
「・・・・・・え?あれ・・・今日って・・・」
「裏みてみ」
なお、嘘であるので信じないように。
「なっ!!!!!!!ウソって!!!!!」
「あっはっは!!!今日はエイプリルフールやで□□!まんまと騙されおったなっ!」
「ひっどっいっっ!!私がどれだけっ!!」
「どれだけ、なんや?□□?」
”ん?”と柔造は何だか嬉しそうに私に聞いてくる。
((どれだけ・・・嫌だって、思ったかって・・・でも))
「もう知らないっ!!柔造のアホーーーー!!」
「あーー、ホンマ楽しかったわ〜□□のいい顔見られたしなぁ」
ニコニコといい笑顔で言ってくる柔造が、本当に腹立たしかった。
「あれ、そう言えば金造って・・・」
「あぁ・・・・・・金造アホやからな・・・信じてるんや」
その時、バタン!とドアが開いたと思ったら金造がやってきた。
・・・・・・・・・・・・大荷物を抱えて・・・・・・
「金造なんやその荷物!!?」
「行く準備に決まってるやないか!柔兄のも持って来たでっ!!」
「俺のもっ!!?」
「おん柔兄!!早うヴァチカン行くでっ!!世界が俺を待ってるんやーーーーー!!」
私は、しばらく面白いから見ていた。
「ウソはよくないよ柔造!行ってらっしゃい〜ヴァチカンのお土産よろしくね!」
4月1日・エイプリルフール
12/04/01
[bookmark]