お帰りなさいませお嬢様
「お帰りなさいませ□□お嬢様」
「なっ!?」
「今日はお早いお帰りでしたね」
「ど…………どうしたの…柔造」
扉を開けたら、黒の燕尾服姿の柔造に出迎えられた。
あまりの突然の事に、驚いて口を開けて固まっていたら、ニコリと笑った柔造が”いかがなさいましたか”と聞いてくる。
柔造の整った顔に、黒の燕尾服なんて凄く格好よくて似合ってて、髪も整えて眼鏡もかけちゃって……
でもその前に………
「その服どうしたの?」
「いつもと変わらない服でございますが、どこか変でしょうか?」
「だって團服の法衣じゃないし……」
京都出張所では明陀宗の人が多いから、正十字騎士團の團服は法衣を着ている人が多い。
私だってその一人で、目の前の柔造だってそうだ。
「法衣ですか?…失礼ですが□□お嬢様…私、この方法衣は着たことがございません……」
「そんな!私と同じ團服の法衣だよ!今着てるんだから」
「その……私には□□お嬢様のお洋服が、法衣にはとても見えないのですけれども……」
柔造が不思議そうな顔をして私を見ている。
「何言って!今着て……無い!?何でドレスっ!?」
私は今、祓摩師の仕事で戻ってきたばかりで着替えていない。
それなのに祓摩師の團服の法衣でなく、何故かきらびやかなドレス姿だった。
「どういうこと…だって、私はお嬢様なんかじゃないし…服だってこんな綺麗なドレス着たこと無いし…」
「どうやら大分お疲れの御様子ですね…今夕飯の御準備を致しますね」
そういって柔造は、胸のポケットから鈴を出し、白い手袋を付けた手でその鈴をチリンと鳴らす。
そうすると違う扉から……
((と、いう前にここ何処!?こんな広くて綺麗な場所知らないんだけどっ!))
凄く綺麗な、広くホテルのロビーの様な空間に私は立っていた。
高い天井には大きなシャンデリアと、細かい装飾の施された壁には絵画が飾られ、床も大理石だった。
柔造が鳴らした鈴の音に、これも同じ様に扉に細かい装飾がなされ、金色の取っ手を開けて出て来たのは…
「きっ!金造っ!?」
「□□さまお帰りなさいませ。ただ今御夕食の準備を…」
「金造!金造もどうしたのっ!みんなコスプレ!?」
立派な扉から出て来た金造に思いっ切り突っ掛かってしまった。
金造の服も、柔造と同じ様な黒の給仕服だった。
「!?…□□さま、ど、どうなさって……」
「金造も似合ってるけど!て、そんな事はいいからどういう事なの!?」
私が急に金造にずいっと近づいたものだから、金造は顔を少し赤くしながら困った様子だった。
そんな私と金造を見ていた柔造がクスクスと笑い、
「□□お嬢様、金造も困っております故、どうぞその位で御勘弁を……」
「そ、そうです□□さまっ!お料理が冷めてしまいますのでお早めにお召し上がり下さいっ!」
「金造まで……確かにお腹は空いてるけれど……」
夕食の単語を聞いた途端にお腹が空いてきてしまう。何とも正直な身体だった。
そうして長い廊下を歩き、金造に案内された部屋も、私が先程までいた所とまた違って、広い部屋だった。
そこには長いテーブルひとつと、椅子が端と端に一脚ずつあり、テーブル上には蝋燭と彩り豊かなお花が飾られ、グラスやホークやナイフなどの銀食器がセットされていた。
「□□さま、こちらに」
と金造に椅子を引かれて、何だか申し訳なく腰かける。
金造に話かけようとする前に、金造はスっと私の側から下がって食事の準備に行ってしまう。
そして、シンとした部屋にひとりぽつんと待って居ると、ガチャっと音がして、私が入ってきた違う扉から入ってきたのは八百造さんだった。
八百造さんは柔造さん達とは違い、立派なスーツ身を包み、一緒に入ってきた柔造さんに椅子を引かれて、私と反対の椅子に座る。
「八百造さん!……スーツ姿も素敵ですが、いつもの素敵な法衣姿はどうしたんですか!?」
「………柔造、今日の□□はどうしたのだ?いつもは私の事をお父様と呼ぶのに」
「!!?おっ、お父様っ!?」
「はい…お帰りになられてからあの様子で…法衣がどうとか…」
「そうか、疲れているのかもしれないな。食事の後でも□□がリラックス出来るように、マッサージでもしてやりなさい」
八百造さんに言われた言葉に、柔造さんは私の方に視線を向けてニコリとよい笑顔になり、
「畏まりました」
と一言述べ、八百造さんに一礼すると、柔造はコツコツと靴を鳴らして私の方へ近付くと、私の耳元にて
「□□さま、それでは後程お部屋にお伺い致しますね。□□さまに喜んでいただける様、精一杯努めさせていただきます」
なんてニコリと楽しそうに笑う柔造に、私は何だか恥ずかしくなり顔を赤く染めるのだった。
………………という夢を見た。
本当はその続きもあるのだが……私の口からはとても言えない。
しばらく恥ずかし過ぎて柔造が見れなかった。
(終わり。オチなし)
。。
執事ネタ、途中で力尽きました(笑)
のでこちらでw
12/03/27
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