肩を抱いて







「竜士さま、廉造知りまへんか?」

「□□、まだおったんか?志摩ならもう帰ったで」

「え、ほんまですか!……廉造何も言うてくれへんのやもなぁ……」



放課後、俺の教室に珍しく□□が来たと思ったら、どうやら志摩に用があったらしい。



「なんや用事あるからて、メールきたで?子猫さんも一緒に帰るからて」

「…なんやのもー!!双子なのに酷い思いまへんか?……後でどついたるわ……」



そんな物騒な事をぶつぶつ言う□□は、志摩の双子の姉だった。

髪は茶色に染めて、身長は詳しく聞いたことは無いが、女子の中では大きい方だと思う。

双子だけに顔は似ているが、性格は真逆だった。

性格でも似ている部分もあるのだが、□□は頭もよく、しっかり者だった。



「竜士さま、帰るんやったら一緒帰りまへんか」

「おん。ちょ待ってな」



□□は俺が片付けるのを待って、一緒に帰る事になった。



窓の外を眺めると、空から大粒の雨が落ちている。

もう春だというのに、外は春らしい天気どころか、ここ数日雨が続いていた。


朝、それこそ春を思わすよい天気だとしても、夕方には雲行きが怪しくなり、今の様な雨が降り出す。


そして、今日もまた突然の雨に、鞄には傘が入っておらず、濡れて帰るしかないなと考えていた。



「竜士さま、傘持ってはりますか?」



隣を歩く□□もそんな外の天気を見てか、俺に聞いて来た。



「無い……いつもやったらあるんやけど、この前使うて置いてきてもうた」

「一個しか無いんやけど、うち置き傘しとるん入ったって下さい」

「おん、すまんな□□」



□□はそう言って自分の靴箱を開けるのだが、すぐに”あれ…”と声が聞こえる。

そして、靴箱の中には一枚の紙があり、そこには……



『□□、傘借るで! 廉造』



「なんてやつや!うちがいつも靴箱に置き傘してるん廉造知っとるから!……やられたわ」


□□のしっかり者な性格を理解した上で、志摩はこういった事をよく□□にしている。
ずる賢いやつだと思う。

課題なんかも、□□がやったのを丸写しして、ばれて怒られてるのはいつもの事だ。



「……すんません竜士さま…傘、廉造持ってったみたいで、少々お待ちしてもろてもええですか?」

「俺は傘無くても平気やで?」

「いえ!そないな訳にはいきまへん!風邪引かはったら大変です!」



雨に濡れたくらいで風邪を引くほど柔ではないが、□□が言うには、春といっても夕方から気温は下がり、肌寒いから体を冷やしては大変との事だった。



「傘なら、今用意します!ちょっと電話かけてきますね」



そう言って□□はニコリと笑うと、鞄からケータイを出し、電話をかけに行った。


電話先は何と無くわかったが、多分廉造だろう。


すぐに□□は電話をかけて戻ってきた。

ニコリと笑う顔は、□□の兄である柔造を思い起こす。



「今、廉造に持って来させますんで」

「なんや、わざわざ悪かったな」

「そんな、気にせんで下さい。廉造が悪いんやから」



それから廉造が傘を持ってくるまで、□□と立ち話をしていた。


外は、雨足が強まり、遠くで雷の音が聞こえる気がした。


すると・・・・・・今まで普通に話をしていた□□が、口数も少なくなり、何だか浮かない顔をしている。

そして、□□は俺の上着の袖をぎゅっと握ってきた。



「□□?……どないした?」

「竜士…さま…うち……」



とその時、ピカっと空が光ったと思ったら、ゴロゴロと大きな音を立てて雷が鳴り響いた。



「ひゃっ!!」

「おわっ!□□っ!?」



雷が鳴り響いた時に、ぎゅっと□□に抱き着かれてしまう。

急な事に俺はドキっとしてしまうが、□□は肩を震わせていて様子がおかしい事に気付く。

またピカっと空が光り、ゴロゴロと雷がなると□□はそれに合わせてビクっと反応する。



((□□…雷、苦手なんか……))


「あっ…竜士さま…す、すみません…つい……子供っぽいんやけど、雷だけは苦手で……ひゃっ」



□□は突然俺に抱き着いて、恥ずかしくなったのが、頬を赤く染め一度身体を離した。

そして、また鳴った雷の音に、□□は今度はしゃがみ込み手で耳を覆ってしまう。


フルフルと肩を震わせている、□□に俺も隣にしゃがみ込み、少しでも恐さが和らぐ様にと髪を撫でてやる。



「い、いつもは廉造が傍におってくれて……」

「おん。そうやったんやな……」



志摩と□□は双子だから当たり前だが、生まれた時から一緒だ。

昔から仲のよい双子だったから、あまり離れるという事も無かった様に思う。

正十字学園は全寮制で、クラスも□□は特進科だからクラスも違い、二人が一緒に居ないのは、こちらに来て初めてでは無いのだろうか。

まだ東京に来たばかりで、□□も慣れていないのかもしれない……


俺は、□□の頭を優しく撫でながら、落ち着かせる。



「志摩の変わりにはならんかもやけど、□□の傍におるから、安心せ」

「……っ…竜士さまっ…ありがとうございますっ…心強いですっ」



□□は雷に怯え、涙目になりながらも、俺に一生懸命笑顔を作ってくれる。

そんな□□の震える肩を、自分の方へと抱き寄せようと俺は手を伸ばす。



「□□っ!!大丈夫かっ!?」



伸ばした手が、□□の肩に触れそうな所で、志摩の声にハッとし、手を引っ込める。


志摩は随分走ってきたのか息を切らしていた。



「……っ!れんぞう!」


□□は志摩の姿を見て、思い切り抱き着く。



「おん大丈夫やで。……坊すんません、□□ほんま雷苦手なんすよ」

「そうみたいやな、知らんかったわ」



志摩は学園に来る途中で雷に気付き、走ってきたらしい。手には俺と□□の傘が握られていた。



「□□も、早く雷慣れんと……今までみたいに俺も柔兄達もおらんのやで」

「おん…わかっとる……」



志摩は慣れた様に、ポンポンと□□の背中を撫でて落ち着かせる。

□□が、こんなにも雷が苦手だったとは知らなかった。



「坊もすんませんでした。この傘使って下さい。□□は俺が送って来ます」

「おん。悪いな。使わせて貰うわ」



志摩から借りた傘を開いて、一本外に出ると、傘にあたる雨音は強く、耳に響いた。


途中で女子寮へと向かう二人を見送り、一人で男子寮へ足を向ける。




随分遠くなったが、まだ空では雷が鳴り響く。

この音が聞こえる度に怯え、□□はまた肩を震わせているのだろうか。


怯えて、俺に抱き着いてきた震える□□を思い出す。

その肩を俺は抱いてやる事が出来なかった。




自分の掌を見つめ、ぎゅっと握る。



今度は、あの肩を抱いて

□□が安心出来る様に、

俺が傍にいてやりたい、何だかそう思った………









。。






坊で、ヒロインが志摩双子(姉)設定でした!

「竜士さま」て呼んで欲しかっただけに志摩双子にww

双子とか面白いなと!
双子の絆って強いですよね!奥村兄弟素敵だもん!

双子だからわかる事とかいっぱいあるんだろうなぁて!

あと、主従関係スキ!!

時期的に、入学したてくらいで!

途中で廉造に持ってかれたけど、双子ゆえの仲良しって事で……でもこれから坊の方へシフトチェンジしてほしいなぁ!

坊も意識したらいいよ!!


ありがとうございましたー!

12/3/23



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