春の訪れ
最近私は、日課になっている事がある。
放課後図書館に行くことだ。
初めは出された課題を調べようと思ったのがきっかけだった。
そこで私は彼、奥村雪男くんと出会ったのだ。
出された課題が、私にとって超難問で……
それでも普通に翌日まで提出とか言われるのだから、流石名門校の正十字学園である。
いやむしろ、私以外皆スラスラと解けてしまうのだから難問ですらないのかもしれない。
私は、そんな学園によく入学出来たなと思うくらい、ハッキリ言って授業について行けてない。残念な頭だった。
ぐるぐると頭が変になりそうで、何か私の助けになりそうな物を…と図書館に来てみた。
学園は広すぎて図書館に来るのも一苦労だったりして、私のクラスはきっと1番遠い……そんな気さえしてくる。
「失礼します……」
図書館に入った時が無いものだから、何故かドアを開けるのもドキドキとしてしまった。
入った図書館はシーンと静まり返っていて、図書館は静かで当たり前だけど……変な感じがする。
辺りをキョロキョロと見回していた私は、
「すみません。今日はもう終わりですよ?」
「わっ!!」
後ろから声をかけられて、思わずビックリして声を出してしまった。
声をかけて来た彼こそ、奥村雪男くんだった。
「お、奥村雪男くん!?」
「はい?僕は、奥村雪男ですが何か?」
彼は同じ学年でも有名だったし、新入生代表の挨拶をしたくらいだったから顔も知っていた。
「あっ!ごめんなさい、ただ有名人に声をかけられて驚いてしまって……奥村くんは図書委員なの?」
「有名人なんて…僕はただの貴女と同じ生徒ですよ。先生が急用で席を外しているので、その代わりです。今日はもう閉めるみたいですよ」
ニコッと優しく笑う彼に、クラスの子達が騒いでいたのがわかった気がした。
そういえば…奥村くんて……
「奥村くん!あのね!急に見知らぬ女から声かけられて、驚くとは思うんだけど、私に勉強教えてくれないかな!」
新入生代表の挨拶をするということは、彼は入試トップ…頭いい!
単純な方程式によって、私の頭が導き出した答えは、このまま彼に課題を教えて貰えばいいのだ!ということだった。
突然の私の申し出に、奥村くんは驚いていた。
それはそうだろう。知り合って数分の女に突然、”勉強を教えてくれ”と言われるのだ。
「あ、えーと…私は、同じ学年の▽▽□□。出された課題が私には難しくて…期限が明日までで困ってたの…教えて貰えたら嬉しい、な…と……」
話をしていて、徐々に言い出さなければよかった…と思えてきてしまって、口ごもってしまう。
奥村くんからの反応も何も無かったので、不安になってきてやっぱり断ろうと思っていたら、
「僕でよければ力になりますよ?」
奥村くんから聞こえた声に、私は驚きつつも嬉しかった。
「本当!?凄く助かるっ!奥村くんありがとう!」
「今日は先生が戻って来るまででよければですが、わかる範囲で教えますよ?”▽▽さん”とお呼びして良いですか?」
「は、はい!お願いしますっ!」
同じ歳なのに落ち着いていて、先輩の様な雰囲気の奥村くんに、私はビシっと綺麗なお辞儀をしたら、奥村くんにくすくすと笑われてしまった。
奥村くんは、私がわからない所をスラスラとペンを動かして解いていく。
そのペンは魔法にでもかけられているかの様に、止まることなく綺麗な文字を書いていく。
教え方も上手で、残念な頭の私にもすぐ解った。
そんな奥村くんに”塾の先生みたいだね”って言ったら、”そうですね”と笑っていた。
図書館の先生が戻って来るまで、奥村くんは私に教えてくれて、進まなかった課題は最後まで終わらせる事が出来た。
有名な彼とは、今まで話をした事がなかったけれど、勉強を教わる間にぽつりぽつりと奥村くんの話を聞いた。
それは私からの一方的な質問だったけれど、それでも奥村くんは優しく答えてくれた。
奥村くんは双子で、お兄さんがいるのもそれで知った。
そのお兄さんは勉強が苦手で、奥村くんはいつも教えるのに苦労しているらしい。
だから私に教えるのは大変じゃないと言ってくれた。
先生に帰るように促されて、片付けを済ませて、図書館から一緒に出た。
放課後の西日が射す廊下を、奥村くんと並んで歩いているのが不思議な気分だった。
「奥村くん、今日は本当にありがとう!凄く助かりました。…もしよかったらなんだけど…また教えてくれないかな?」
「たまにしか来られ無いかもしれないですが、それでも▽▽さんがよかったら、僕はいつでも力になりますよ」
「本当!嬉しい!奥村くんの話もっと聞いてみたくて!そのお兄さんにも会ってみたいな」
「兄…ですか。そうですね、▽▽さんと一緒だったら兄の勉強も捗るかもしれませんね。言ってみます」
私は今日、奥村くんに無茶なお願いばかりしている気がするけれど、それでも奥村くんは優しく笑ってくれてるので安心する。
”ああ、そしたら…”と奥村くんは話し出した。
「兄も奥村、なので僕を今度は下の名前で呼んで下さいね?」
そう言う、奥村くんの笑顔にドキっとしてしまった。
「それでは、”□□さん”僕はこれで」
と帰って行く奥村くんの背中を見送りながら、私は胸がドキドキとしているのが止まらなかった。
そうして私は、彼に会うために、図書館へと足を運ぶのが日課になるのだった。
ひとつひとつ、自分の足を動かしながら、少しの間の出来事を思い出す。
放課後の夕暮れ時の日差しに包まれて見える、奥村君の姿。
魔法にかかった様にスラスラと動いて、綺麗な字を書いていくペン。
奥村くんの優しい笑顔、奥村くんの話す声・・・・・・
瞳を閉じれば、奥村くんの姿が思い浮かぶ。
どきどきとした胸の高鳴りは、新たな始まりを意味していた。
「名前・・・”雪男くん”・・・か・・・・・・」
3月の優しい風が頬をかすめていく。
見上げた空は、綺麗で凛としていてゆっくりと雲が流れていった。
夕暮れの優しい日差しに包まれて、心も身体もぽかぽかと暖かい
花咲く季節はもうすぐそばに・・・・・・
。。
雪男で図書館!3月9日!
レミオ○メン、3月9日の曲が好きで、それを少しイメージました。
まるっきしだとダメなので、ほんの少しその世界観をもらおうと思ったのですが・・・
曲が素敵過ぎて、無理でしたww
雪男さんの魅力に取り付かれてしまった□□ちゃんですw
これから図書館デートを重ねて欲しいですねw
「雪男で図書館」とかありかと思って!秀才には図書館が似合う!
ありがとうございました!
12/03/09
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