まだ、心に留めて

※ 注意 ※

アニメオリジナルキャラが出てきます!









(( う……届かないっ ))


私は学生生活において、これ程自分の身長が恨めしいと思う時は無い。

一つは『身体測定』と、この『黒板消し』だ。



自分の身長がピタリと止まってしまい早数年……

高校に入ったら伸びるのではと期待したが、一向に伸びる気配がない。

牛乳だけではダメなのだろうか……。


(( 後少し上が消せないっっ ))


ぴょんぴょんと飛び跳ねながら、そうして今日も黒板消しに奮闘していると、


「貸してみぃ」


とスッと大きな影が出来たと思ったら、私が持つ黒板消しを手に取りそれは簡単に消えてしまった。

その大きな影の持ち主を見れば、同じ祓魔塾に通う勝呂くんだった。


「あ、ありがとう勝呂くん」

「おん。▽▽さんいつも黒板消してくれとるやろ?なんや毎回大変そうやなと思っとったんや」


(( 勝呂くん、いつも私が消してたの知ってたのかな? ))

”ありがとう”と私が勝呂くんにお礼を言うと、席の方から


「ヒュ〜〜!坊やっさしぃー!」

「志摩っ!!コノ…やかましぃわ!!たまにはお前も見習って働かんかいっ!!」


私を手伝ってくれた勝呂くんを、志摩くんがからかっていた。

隣にいた勝呂くんは真っ赤になって怒ってたけど、私は何だかそんな二人のやり取りが可笑しくてクスクスと笑ってしまった。


「何か可笑しいんか?」


と眉間にシワを寄せる勝呂くんに私は”違うよ”と言い


「勝呂くんは優しいね」


と笑ったら勝呂くんはフン!とそっぽをむいて”そんな事あらへん”て言った。

私はその時、勝呂くんは凄く優しい人なんだなって気が付いた。





それから、私はよく勝呂くん達3人と話す様になっていた。

勝呂くんは塾でも優秀だったから、私はわからない所を教えて貰った。


「▽▽さんはいつもしっかり勉強してはりますよね」


今日も授業でわからない所を教えて貰っていたら一緒にいた三輪くんに言われた。


「そんな事ないよ?私より皆の方が真面目だと思うけどな」

「子猫さん〜!▽▽ちゃんよりも他にもっと勉強しとるヘンタイがいるやないですか〜〜」

「志摩…それ俺んことちゃうやろな?あ゛?」


青筋立てて言う勝呂くんに志摩くんは焦りながら、

”そ、そないな事あらしませんがなぁ…ハハハ”

と言って、いつもと変わらない会話に私はまたクスっと笑うのだった。


「あ……勝呂くんここの所だったんだけど……」


と、私が話しかけた時だった。ガラガラとドアが開いて、


「あ!いた!竜ちゃ〜〜〜〜〜ん!」


と聞き慣れない声と、パタパタと走ってくる音がしたと思ったら、私の前にいた勝呂くんにぎゅうっと抱き着くのだった。

私は目の前で起こる突然の出来事に、持っていたペンが手から転げ落ちた……


「んな〜〜っっ!!よ、吉国っっ!?何でお前がここにおんねんっっ!!」

「竜ちゃんに逢いに来てん!」


”よしくに”と呼ばれた小柄で眼鏡をかけた可愛いらしい人は、勝呂くんにぎゅうっと抱き着いたまま”逢いに来た”と言う。

((この人は一体……))

勝呂くんは”よしくにさん?”に抱き着かれて真っ赤になりながら、私が困惑してたのに気付いたのか”いい加減離れろボゲぇ!”と自分から引っぺがした。


「あら、可愛らしゅう子がおる!竜ちゃんこちらは?」


目の前にいた私に気付いたのか、その人は勝呂くんを”竜ちゃん”と呼び私の事を聞いてきた。
その呼び方に、私は二人が親密な関係なのだと理解する。


「おん。彼女は同じ祓魔塾に通う▽▽□□さんや。お前も挨拶せい!」 バシっ

「イタっ!叩かんとってな。▽▽さん初めまして。うちは吉国、京都で刀鍛冶をしとって十一代目の吉国や。竜ちゃんとは幼い頃からの知り合いなんや」


”よろしゅうな”と笑顔で手を差し出されて私も”はぃ……”と握手に答える。

話しを聞くと『吉国』とは『魔剣倶利伽羅』を打った鍛冶屋らしく、勝呂くんの寺と交流があるらしい。


「しっかし、なんでお前がこんな所におんねん!」

「竜ちゃんに逢いにって言うたやんか〜!てのは嘘で仕事で来たってん」


どうやら吉国さんは京都から東京の正十字騎士團に、打った刀を届けに来たらしい。
そのついでに顔を見に来たとの事だった。

吉国さんは勝呂くんの幼なじみと言う事は志摩くんと三輪くんの幼なじみでもあるわけだ。


吉国さんと懐かしい故郷の話しに華を咲かす3人に、私は一人置いていかれた様だった。


「竜ちゃん、うちがおらんと寂しかったやろ?」

「だぁー!だからくっつくな!アホぬかせ!!」


幼なじみなのだから、私がその場に混ざれないのはわかる。
話しもついていけるわけがない。

けど、私は…私の……このモヤモヤした気持ちは何なんだろう。


気分が悪い………


ガタっ!

「わ、私帰るね!」

「お…▽▽さ「吉国さんとゆっくり話したらいいんじゃないかな!また明日ね!」


”ホントありがとう!”と言って教室を後にする。

ガラガラっと勢いよくドアを閉め、私は廊下に出た。



中からはまた楽しそうな声が響く。



私は気付いてしまった。

勝呂くん達と仲良くなれた気がしていたけれど、私は所詮同じ塾に通う”ただのクラスメート”なのだ。


勝呂くんは”吉国”って呼んで、吉国さんが勝呂くんを”竜ちゃん”と呼ぶ。

私は、 ”▽▽さん” なんだ。



ただのクラスメートでしかない。

その事が何だか切なくて胸が苦しかった。

過去を遡る事は出来ないから、幼なじみにはなれるわけはないし、この壁は越えられない。

そうわかってはいるけれど……


(( そっか…私、吉国さんが、勝呂くんと仲良くしてるのが羨ましかったんだ… ))


きっと私は自分の居場所を吉国さんに取られた気分になって嫉妬していた。


私の場所なんて元々無かったんだ。


そんなマイナス思考に捕われて涙が出て来てしまう。


(( 寂しいっ…… ))



ガラッ!

「▽▽さん!」




ドアを勢いよく開けて勝呂くんが教室から出て来た。

私はまだドアの前に居たからその音と急に声をかけられた事に驚いてしまう。


「………っ!なっ…なに泣いてっ!どっか調子悪いんかっ!」

「す…ぐろくん…ううん。何でもないよ。ゴメンね邪魔しないから、私帰るね!」


私は目に浮かんだ涙を急いで袖で拭い、いつもの様に笑って答える。



「せやかてそないな顔してっ……!それに!!俺は▽▽さん事、邪魔て思った事一度もあらへん!」


勝呂くんは強くそう言ってくれる。彼は優しい人だからきっと気を使ってくれているのだと思った。


「も、もし…吉国の事で何や誤解してるんやったら…その、アイツのはいつもの挨拶みたいなもんで……」


”何とも思っとらんのや”と勝呂くんは赤くなりながら言葉を濁す。


勝呂くんは本当に優しいと思う。

そんな勝呂くんだから、きっと私が思ってる事を言っても……優しく受け止めてくれるんじゃないのかなって思った。


「私、何だか”竜ちゃん”て呼ぶ吉国さんと話す勝呂くん達を見て壁を感じて……
幼なじみだし仕方ないんだけど…私はそんな風に仲良く出来ないなって…寂しくなって……」


私はモヤモヤとした気持ちを素直に勝呂くんに話す。

こんな事を言ってしまって、私は勝呂くんの顔をまともに見れなかった。



「仲良く出来ひん思っとるのは違うで!!俺は充分仲良うさしてもろとる思てる……」



そう言ってからしばらく勝呂くんは間を空けて、何か考えた様子で、


「せやな……。俺も知らんうちに壁作っとったんもしれんな……」


”せやから……”と勝呂くんは私の方を見て



「” ▽▽さん ”やなくて” □□ ”て呼ぶ事にするわ!」



”ちょっとは仲良うなった気ぃせんか?”

と少し笑って声をかけてくれる勝呂くんに私はやっぱり優しい人だと思うのだった。


「ぇ…じゃ…じゃぁ…私は……”竜ちゃん”??」

「竜ちゃんはやめいっ!こっぱずかしいっ!」


本当に恥ずかしそうに照れて言う勝呂くんに、私はいつもの様にクスっと笑って



「” 竜 士 ”ありがとう……」



私がそう笑顔で言えば。”竜士”はフンって真っ赤になってそっぽを向く。

そして私の前にズイっと一冊のノートを差し出す。


「さっきわからんて言っとったとこ。俺がまとめたヤツやけど…」


吉国さんが来る前に、私が教えてもらおうと思っていた事を覚えててくれたのだろう。

ぶっきらぼうに差し出されたそれを受け取りながら、私はまた今日何度目かわからない”ありがとう”と言うのだった。



「それから…俺は…□□ん事…「坊ーーー!吉国帰るてーー!」……っ!」


「〜〜〜〜っっ!志摩ぁぁぁあ!!」



私、今何か言いかけられていた気がするけれど、ドタバタと騒ぐ二人を見て、私はまた一緒に居ていいんだなと嬉しくて顔が綻ぶのだった。


吉国さんが帰る時に私にコソっと”竜ちゃんあんなんやけど、▽▽さんよろしくね”と言って帰っていった。



「□□も帰るで!」



”□□”と呼ばれた私はそれを聞いてまた笑顔になる。

私は、前より少し近くにいけただろうか?



「うん!竜士帰ろうっ!」



ただのクラスメートじゃなくて、


今はもっと仲良くなれたかな?


そして、竜士の側に居るのが当たり前になれたらいい



私の芽生えた”好き”って気持ちは、


まだ心に留めて。







Thanks 555hit!
。。



キリバン「555」陸都サマよりリクエスト!

【勝呂夢】

背が低いヒロインで
アニメオリキャラの吉国にモヤモヤするお話w

『坊を塾仲間ぐらいしか思ってなかったけど、仲の良さそうな二人を見てモヤモヤな感じで

性格は、皆に優しい子でニコニコしてて、そんなヒロインに坊もこっそり実は気にしてて』


という素敵なリクを戴いたのです!

詳しい設定だったので、それを活かせるように頑張ってみたのですが…いかがですかね?(^^;)ドキドキ


イメージと違ったりするかもなのですが、頑張って書かせていただきました!


なので、ただのクラスメイトから親密な関係へ一歩前進!

な所にしたので、甘くはないのですが・・・・・・。

モヤモヤとした葛藤とか坊やヒロインの気持ちが見え隠れ出来てたらいいなぁと思います。

志摩さんとの掛け合いが楽しくて、やりすぎた所はあるのですが多めに見ていただけたらと思います(笑)


勝呂夢!喜んでいただけたら嬉しいです!



陸都さまいつもありがとうございます。

リクエスト戴けて大変嬉しかったです!

拙い文章でまだまだ未熟ではありますが、これからも精一杯頑張って行きたいと思います!

よろしければお持ち帰り下さいね!

555hitご報告ありがとうございました!


12/02/26





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