楽しい時間を待ち侘びて




もうすぐ私にとって特別な日。
素敵な1日にしたい。



「じゅ、柔造さん!あ、明日って空いて…ますか?」


((やっと言えた!))

私は朝から柔造さんに話かけたかったのだけれど、中々タイミングがあわなくて言えたのは夕方だった。
……緊張して声が裏返ってしまったのが恥ずかしい。


「急にどないしたんや?○○」

「そ、その…お暇かなと……」


ハッキリと伝えられずにもごもごと言う。
どうしても柔造さんの前だと、緊張……と言うよりもドキドキとして上手く話せない気がする。

柔造さんを意識する前の方が上手く喋れていたのではと思う。


「確か、明日は普通だったはずやな」

「そう…ですよね……」


自分でも、今までの勢いはどうした!と言わんばかりにしゅんとしたのがわかる。


「でも、夜なら何も無いから大丈夫やで?何時になるかわからんけど」


しゅんとしてしまった私を見兼ねてか、柔造さんは私の髪を撫でて笑う。


「ほ、本当ですか!何時でも大丈夫です!待ってます!」


柔造さんの言葉に一喜一憂してしまう私は単純なんだろうけど、やっぱり嬉しいので仕方ない。


明日は仕事が終わったら連絡を貰える事になった。
ただ、それだけの約束でも心がフワフワとして足どりも軽くなる。
早く時間がたてばいいのにと思った。



+++++++




−−−プルルル。ガチャ”おかけになった電話は…”


((繋がらん。遅くなってしもたし……大丈夫やろか…))


今日は珍しく○○から誘いを受けていた。
それが嬉しく無いわけなく、柄にもなく、浮かれてたと思う。

早く終わらせて○○を迎えに行く予定だったのだが、どうも集中力が欠けて、少しやらかしてしまった。
怪我こそしなかったものの、皆を危険に曝したのは間違いない。
そんな俺には勿論、お父からの小言があった訳で……時間がかかってしまった。

急いで○○の住むアパートへ向かう。
連絡すると言ったのにそれ所ではなかった。
連絡をしてみるが、さっきから留守電に代わり繋がらない。


((やっぱ怒らしてもうたか…))


ふと公園にある時計が目に映る。
針は23時を過ぎており、もうすぐ日付が代わろうとしていた。
随分と遅くなってしまった罪悪感と、怒らせてしまったのでは…
……いや、もしかしたら何かあったのかも…と不安が過ぎり、向かう足が次第に早くなる。



○○の待つであろうアパートについた時には少し息があがっていた。
体力には自信があるが、不安な事ばかり頭に過ぎり、途中から全力疾走してきた。


((部屋、明かりついとる))


2階の○○の部屋の明かりが見え、俺は少しホッとした。

それを見て、外からまた電話をかけるが繋がらない。
しかもさっきまで留守電だったのが、今度は電源が入っていない。

((………相当怒っとる……))

嫌な汗がダラダラと流れる。これは走って来たせいではない。

電話が繋がらないならば、と部屋の前まで行く事にした。
怒った○○にどんな顔をして謝ろうかと、あーでもないこーでもないと考え、ドキドキしながらインターフォンを鳴らす。

−−ピンポ−ン

((…………))

−−ピンポ−ン

((は…反応なし…))


電気は着いてるから居るはずなのに、出る気配がない。

((何か変や))

まさか、と…そっとドアノブを回すとカチャとドアが開いた。

玄関から中をそっと覗いたら奥の部屋が明かりがともっているのが見えた。
ただ、違和感があったのは部屋からは何の物音もしなかった。


「○○おるんか?入るで?」


勝手に入ってきてしまったのは申し訳ないと思ったが、明かりのともる部屋へと足を運び、ドアに手をかけた……



「!!○○!?」



その部屋へのドアを開けて中を見たら○○が床に倒れていた。
その手の先にはケータイが転がりチカチカと光が点滅していた。


「○○!どないしたっ!しっかりせ!」


俺は急いで駆け寄り○○を抱き抱え揺さぶる様に声をかける。


「○○!」

「……んっ」


○○から声が漏れるのが聞こえ意識がある事にホッとした。


「…じゅ…ぞうさん?」

「俺や!わかるか!?」


○○は意識がハッキリしないのか朧げな声をしていた……
見た限りでは外傷も無いし、額に手をあて熱が無いかも確認する。

((大丈夫みたいやな…))


「ん…じゅぞうさん…おかえり…なさい」


俺はぽつりぽつりと聞こえた声に耳を傾けながら顔を見てやる。
そして、○○は俺の頬に手を伸ばし


「早い…ですけど……お誕生日…おめでとうございます」


俺の好きな、優しい笑みを浮かべながらそう言った。


「っ!!」


○○の言葉に驚き、部屋にあるカレンダーを見る。

忘れていたが、今日は2月4日、明日の5日は俺の誕生日だった。

部屋に入った時、まず先に○○に目がいき気づかなかったが、よく見るとテーブルには料理が並んでいた。
どれも俺が好きな料理だった。

○○が俺に内緒でお祝いしようとしてくれていたのがわかる。
その様子を思い浮かべると心が暖かく、何とも言えない気持ちが溢れ、○○をぎゅっと抱きしめる。


「○○…ありがとな」


俺の言葉に○○は笑みを浮かべる。
安心したのか瞼がまた閉じ、スースーと寝息が聞こえてきた。

倒れていた時は心底心配したが、寝てただけで本当よかったと思う。


「それに、もう…5日や」


気づけば、時計は0時を過ぎ日付も5日に代わっていた。

腕の中で寝息をたてる○○をそのままにしておく訳にもいかず、ベットまで運び寝かせてやった。

さらさらとした髪を撫でて愛らしい寝顔を見る。


今日はバタバタとしてしまったが、○○のおかげでよい誕生日を迎えられた。

((ありがとな))

愛しい人に誕生日を祝って貰えるのが、こんなに嬉しいものだと思わなかった。


「○○、好きやで」


愛しい彼女を起こさない様にと、そっと口づけをする。



目覚めた○○にもう一度御礼を言って
そして二人で何処かに出掛けようか。


俺も○○と一緒に居られる

楽しい時間を待ち侘びていたのだから………



。。



HAPPY BIRTHDAY!柔造さん!
誕生日前夜。1番にお祝いしたかったのです!!
ヒロインは楽しみに待ってたのに寝ちゃったていうね。


2012/01/31




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