君と甘い関係にはまだ
「…はぁ……また始まりおった……」
それはもう日常茶飯事とも言える事だった。
耳に響く様な騒がしい声に俺はため息をついた。
「金造ッ!!また私のデザート勝手に食べたでしょっ!めっちゃ楽しみにしてたのにっ!!」
「はぁ!?そんなん知るか!!急に突っ掛かってきおって!」
「いっつもそうやって!私の休憩の楽しみをッ!!前もだったじゃないっ!」
今日も京都出張所に二人の声が響く。
今日も、だ。
もうそれが当たり前の様になってしまった。
くだらない事でぎゃいぎゃいと言い争ってるのは弟の金造と○○だ。
○○は金造と同期で京都出張所に入ったんだが、
なぜか二人は顔を合わせる度に喧嘩とはいかないまでも……
−−ガシャーン!!
いや、もう言い争いレベルじゃなく喧嘩だな。
「何しやがるコノあまぁぁぁ!!」
どうやら、あまりにも頭にきた○○が金造が飲んでいたジュース(瓶)を割ったらしい……
「私がどれ程悔しかったか!
アレは限定販売の幻のデザートと言ってもいいくらいのだったんだから!」
”食べ物の恨みは恐ろしい”とは言ったもんだが、○○はそれが酷いくらい根に持つ。
甘い物なんか得に………
「それにっ!私ちゃんと名前書いてたんだから!見てみ!ホラっ!字も読めないわけ!?」
「そっんなちっこくて汚い字読めるかぁ!!」
「!?…ひっどっ!金造のが字汚いじゃない!プリンみたいな頭してるくせにっ!中身もプリンなんじゃないの!」
「なんやと!人様の綺麗な髪をプリン呼ばわりかッ!このブ
−−−ガゴンッ!!!
割といい音が響いたと思う。
「ぎゃいぎゃい!うっさいわゴラァァ!静かにせいっ!!」
「〜〜〜〜ッッッァ!」
「じゅ柔造さん!」
さすがにこのままでは他の人から苦情が入りかねんと止めに入る。
俺も煩くて勘弁して欲しかったしな。
「ぃ……っったいわ!柔兄!いきなり何すんねん!」
「ぎゃいぎゃい騒いでるお前が悪い!」
「何で俺だけや!○○も殴ったってや!」
”○○には手はあげん。可愛い妹分だからや”なんて事を言ったら、○○にキラキラとした眼差しで”柔にぃ”と言われた。
相当甘いのかもしれないが、本当○○はかあええなぁと撫でてやりたくなる。
「まぁ、毎度いつもの事やろが……
お前ら、もうとっくに時間すぎとるの気づいとったか?」
「「あ……」」
やっぱ気付いてなかったか。
この集中を仕事に活かしてくれたら…と思う。得に金造。
「はよう戻る!」
「は、はい!」「…おん」
「あー、金造は後片付けな」
「!?また俺だけ!」
○○は”悪かった!でも私のデザート変わりはキッチリ貰うからよろしく!”と早々とその場を金造に任せ行ってしまった。
きちんと変わりを要求して行くのは○○らしい。
その後には、まだ怒りが収まり切らない金造が、渋々後片付け(○○が割った瓶)をしていた。
「なぁ金造、少し○○に素直になったらどや」
「…ぶっ!」
そんな弟を見兼ねて、爆弾を投下してやると、金造は盛大に噴き出し、驚いた顔をして俺を見る。
「兄ちゃん、早う○○に妹としてウチに来て貰いたいんやけどなぁ」
にやにやとしながら金造に言ってやった。
毎度同じ事で騒ぎ、割って入る俺も結構大変で、腹いせにこのくらい言ってもいいだろう。
「んなっ!!?」
本人はバレてないと思ってる様だが、周囲にはバレバレだ。
返す言葉に詰まってるのか、金造は口をパクパクさせ面白い顔をしていた。
「ぶっ!ははははっ!金造なんやその顔!」
あまりにも変な顔をしてたのを見て笑った。腹が痛いわ。
いやぁ、今日の手間賃くらいにはなったかな。
”からかったんか!”なんて言う金造に少し涙目になりながら
「ま、がんばれや。○○は気付いとらんからな」
ぽんと肩を叩く。
何だかんだ言っても弟の事が心配だからな。
「そんなん……わかっとるわ」
少しふて腐れてボソッと金造が言ったのが聞こえた。
それを聞いて何だか嬉しくなって、また今日も俺も頑張ろうかなぁと思った。
ついでに、近所に新しく出来たケーキ屋を教えてやった。
後はどうするかは金造次第−−−
。。柔兄視点。金造と喧嘩したくて、それで柔兄におこられたかった←
2012/02/01
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