お楽しみはこれから







放課後、祓摩塾に行くと、いつも一人で入ってくる若先生が、綺麗な人を連れて入って来た。


清楚で可憐な雰囲気と、大人の魅力も備えた様な…つまりは物凄く綺麗な人で、入って来た時から目が離せなくなってしまった。



「今日から祓摩塾の講師として働く事になりました××○○です。どうぞよろしくお願い致します」



少し緊張しながらも、挨拶をして笑った顔は、そこだけ華が咲いた様に明るくなった気がした。


俺の中の可愛い子、美女リストに”××○○”の名前が即インプットされる。


しかも若先生と一緒に、俺ら1年のクラスを担当するとの事だったから、俺は心の中で思いっ切りガッツポーズをした。


今日は挨拶のみで帰ってしまったけれど、これから塾が行くのが楽しみになった。


塾の帰り道、あまりにも楽しみで、顔が緩みっぱなしだったらしく、坊や子猫さんに”考えとる事が筒抜け””煩悩まみれ””気持ち悪い”と暴言を吐かれたが、俺はそんな些細な事は気にしない器の広い男なのだ。




そして放課後になるのが待ち遠しくて、午後になるとソワソワとしながら過ごし、高校の授業が終わると直ぐに鍵を使って塾へと向かった。


何故かと言うと、今日は○○先生の初めての授業がある日だった。


何か手伝う事はあるか、聞きに行って仲良くなろうという作戦だった。

ウキウキと足取りを軽くしながら職員室へ向かう。



「失礼します。○○先生おりますか?」

「はい?どうかしましたか?」



キョロキョロと職員室を見渡すと、机上の教材の山影からひょこっと○○先生が顔を出した。

その姿に気付いて近付くと、○○先生は何だろうという顔をしていた。



「俺、一年の志摩廉造言います。今日授業の当番やったんで何か手伝うことあったら思て来たんです」



ニコリと笑って言うが、”今日の当番”などもちろん出任せだった。



「志摩…くん……て……」

「はい?」

「あ、ゴメンね!じゃあ手伝って欲しいのあるからいいかな!」

「何でも言うて下さい〜!○○先生のお手伝いなら何だってしますわぁ!」



と、○○先生と一緒に、物凄い数の教材資料のコピーをとり、ホチキスで資料を止める単純作業を黙々と繰り返していた。



「○○先生、この量を一人でこなすんはしんどかったんやないですか?」

「そうなの…だから廉造くんが手伝ってくれて本当助かっちゃった」



そういって笑う○○先生の笑顔は、近くで見たらまた素敵だと思った。


作業をしていたら急に○○先生が、俺の顔を間近でジーっと覗いてきて思わずドキドキとした。



「な、何かしはったんですか?」

「うーん……廉造くん、柔造くんにそっくりだね。髪はピンクだけど」



そう言って○○先生は軽く俺の髪に触れて、ニコリと笑うのだった。


俺は、柔兄の名前にピクっと反応し、心臓がドクっと音を立てる。



「……何で、柔兄知っとるんすか?」

「私、柔造くんと同級生だったの…柔造くんは元気してる?」

「……京都で、元気しとりますで」

「そっかぁ……」



○○先生が柔兄の事を話す顔を見て、なんだか胸の中がモヤモヤとしてきた。



「兄弟多いの聞いてたんだけど、まさか担当するクラスに弟くんが居るとは思わなかったなぁ…」

「そやったんですね。○○先生お綺麗やから、もっと俺らくらいで、柔兄と同い歳に見えへんかったですわ!」

「廉造くん上手だね〜嬉しいわ」



クスクスと笑う○○先生に、俺もニコリと笑う。



「○○先生、一つ言うてえぇですか?」

「ん、どうしたの?」



俺は、ニコリと笑っていた顔から、きつく真っ直ぐな眼差しで、○○先生の目を見る。

そして、今度はぐいっと、俺の方が○○先生に顔を近付ける様にし、低い声で耳元で囁く………






俺は、柔兄やない






耳元から顔を離し、目線を合わせたまま





「覚えとって下さいね?」




そのまま、俺の手を伸ばし髪に触れると○○先生はビクっとする。



「あ、”○○ちゃん”髪にゴミついとりましたよ!」



と、またいつもの様にニコニコと笑って見せると、○○ちゃんはホっとした様な顔で”ありがとう”と言う。




「俺、○○ちゃん気に入ったみたいやわ」

「えっ…………」

「あ!これ出来たの先に教室行って配っときますね!」

「あ……よ、よろしくね」




”失礼します”と言ってその場から離れた。






俺は、自分で器が広いと思っていたけれど、柔兄に嫉妬するなんてまだまだだなと思った。





((また柔兄に似とる…か…))




柔兄に似てるからと言って、自分に柔兄の影を重ねる人はどれだけいただろう。




まぁ……俺は俺やから、これから○○ちゃんに、俺らしくアタックしてけばいいのだけれど。




俺は、ますます○○ちゃんがいる、塾の授業が楽しみになったのだった。








「あ〜楽しみやな!俺ん事でいっぱいにしたろ!」








そうして俺はまた、ウキウキと足取りを軽くしながら歩いて行くのだった。











。。




新任塾講師と黒廉造。


黒廉造…なんだか廉造らしからぬ話になってしまって…(>□<)

廉造も柔兄に嫉妬とかしたらいいな、なんて思ったんだけど、なんか思ったよりドロドロとした感じにっ……

柔兄に似てるって見た目にコンプレックスがあって、女性絡みだとなお悔しくて嫌だみたいな。

柔兄に思いを寄せてた年上ヒロインとかに、俺が柔兄なんて消してやる!!くらいの若さ溢れるくらいでガンガン押して欲しいなw

廉造の攻撃、褒めちぎる、好き好き言う、ベタつく、ちょっかい出す、とりあえず絡む…とか廉造らしさで?


落ちるかな…どうだろう(笑)





12/03/28




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