記念撮影







−−−−カシャッ−


「ありがとう〜!上手く撮れた?」



ケータイのカメラの前で少しおすましして撮って貰う。

友達からケータイを受け取り、撮って貰った写真を確認すると、手には卒業証書を持ち、少し照れ臭そうに笑う、袴姿の自分が写っていた。


今日は大学の卒業式で、周りは色鮮やかな袴を着た人々で溢れている。

袴など見慣れないのもあるけれど、袴も髪も巻いたり飾りを付け、凄く華やかで皆キラキラと綺麗だった。

卒業式も終わり、式場から出て皆あちらこちらで撮影会をしていた。



((この写真、柔造さんに送っちゃおうかな…))



撮って貰った袴姿の写真を添付して、宛先を柔造さんに設定し、
”無事卒業出来ました!”と、メールを送る。



しばらく友達と写真を撮っていると、私のケータイが鳴り、画面には”柔造さん”の文字。



「もしもし?」

『お、○○、式終わったんか?今何処におるん?』

「はい、さっき終わってまだ会場付近ですけど」

『ほんまか!ちょそこで待っとれよ!』

「え?柔造さん!?」


柔造さんは私の言葉も聞かずに、電話を切ってしまった。

本当にこちらに来るつもりなのだろうか……その前に、今日ってお休みだったのかな…と考えていた。


ちなみに私は、高校は正十字学園の祓摩塾を出て詠唱騎士の資格を取り、祓摩師として仕事もしながら、大学に通っていた。

どちらかと言えば、仏教の方に興味があり、初めから京都出張所勤務を希望し、仏教と歴史の深い京都に来る事と、そこにある大学で学ぶ事が一つの夢であったからだ。

もっと深い知識を得ようと、専攻は民族学で、日本文化の歴史や文化、宗教について学んだ。

経典についての勉強は詠唱騎士を取る時に覚えていたから割と楽だった気がする。


大学と祓摩師の両立は大変な所もあったけれど、バイトをするよりも割と給料がよかったりするので、一人暮らしには有り難かった。

4年も暮らす京都が、今では第ニの故郷になり、この街が本当に大好きだった。


来たばかりの頃は、まだ大学と祓摩師の両立に慣れなくて倒れたり、よく風邪を引いて迷惑をかけた事も……今となってはいい思い出だ。

私が京都出張所に来て、よく面倒を見てくれていたのが柔造さんで、今は彼とお付き合いさせて貰っている。

柔造さんは隊長さんで、私は部下なのだけれど、学生と言う事もあり、いつも迷惑をかけてしまっていた。

でも大学を無事卒業出来たので、今度からは祓摩師に専念出来ると私は意気込んでいた。



((柔造さん、今日はお仕事だって言っていた気がするのだけれど……))



そんな時、また私のケータイが鳴り相手は柔造さんからで、どうやら近くに着いたらしく、私は一度友達と別れて、わかりやすい場所へと移動する。


その場所へ向かい辺りを見回すと、團服姿の柔造さんが直ぐにわかった。

見つけた私は、パタパタと柔造さんに駆け寄る。



「柔造さん!……ひゃっ!」

「うぉっ!○○っ!……危なっかしいなぁ」

「す、すみません……」



袴に草履を履いていたのだが、いつも慣れてる訳では無いので滑ってしまい、何とか柔造さんに支えて貰う形になった。



「せっかくの可愛らしい姿が台無しなるとこやったな!」

「はい……ありがとうございました」

「おん!」



会って早々見事なコケっぷりを披露してしまい、”立派に卒業しました!”と言いづらくなってしまった。

そんな柔造さんは、黙り込んで私の袴姿をジーッと上から下まで見る………



「変……でしょうか?」

「いや物凄い○○に似合とる!!めちゃくちゃ可愛ええっ!」

「本当ですか!やった!」



写メを送ったのは恥ずかしかったけれど、柔造さんの”可愛い”と言う言葉が聞きたかった。

直接会って聞けるとは思わなかったから、本当嬉しかった。


私は柔造さんの言葉で調子に乗って、袴の袖を持って柔造さんの前でくるりと回って見る。

えへへと笑って見せれば、柔造さんは自分の口元に手をあてて、顔を少し赤くしながら



「○○、それはあかんっ!あかんやろ!…可愛い過ぎるわっ!にやけてまう……ほんま抜けて見に来てよかったわ!」

「えっ!!抜けて来たんですか!?それは駄目です戻って下さいっ!」

「大丈夫や!直ぐ戻るし、きちんと用あるて断ってきた。…怒られても構わんわ!出張所居て、○○の晴れ姿見れん方が後悔しそうやったもんな」



そう言って笑う柔造さんの笑顔にドキドキとしてしまう。



「だから俺はまだ大丈夫なんやけど、○○時間あるか?」

「夜はクラスの飲み会有りますけど、まだ大丈夫ですよ?」

「よっしゃ!そんじゃ俺に少し付き合うてくれるか?」



何だろうと思いながらも”はい”と私は答え、ニコニコとした柔造さんに手を取られて歩きだす。



「あ、着替えんでそのままな!……ついでに俺も記念に一枚撮ってええか?」



と、ケータイを出されたので、私は照れながらも柔造さんのカメラに写るのだった。




距離があるからと、タクシーに乗り街中で降りると連れて来られたのは、袴と團服が似合わないゲームセンター。



「え!?ゲームセンター?」

「おん。せっかくやから中々無い事でもしてみようかと…お、空いとるな」



どれがいい?と手を引かれるのはプリクラの機械で…こ、この状態は一体!?

しかも柔造さんは何だか手慣れてて……



「柔造さん…私凄く驚いてるんですが……慣れてらっしゃいますね」

「兄弟達とたまになぁ…無理矢理撮らされるんもんやから慣れてもうた」



私は柔造さんはプリクラなんて苦手かな……と思ってたから遊びに来ても一度も撮った事が無かった。



「私、苦手なのかと思ってました…」

「そやろ。だと思ったわ。でも○○たまにプリクラ機械チラチラ見とったろ?」

((う、バレてましたか……))



友人がよく彼氏と一緒のプリクラを撮ってるのを見て、ちょっと羨ましいなぁて思う事もあって……でも柔造さんは苦手かと思って話した事が無かった。

友人にプリクラを見せられて、彼氏自慢をされるのだか、それを見ながらいつも

”柔造さんの方が格好いいんだから”

なんて思ったりもして……



「ほれ、○○笑わんと?」

「……え?あっ!」


−−−−カシャッ−


「あぁぁぁ!私今凄い変な顔にっ!!」

「よし、今の一枚決定な。ぼーっとしとった○○が悪いで」

「……自分だけちゃっかりキメてズルイですね」



いつの間にか撮影は始まってて、考え事をしていた私には不意打ちで変な顔で撮られてしまう。

私の隣に写る笑った柔造さんは、思っていた通り格好よかった。


柔造さんはニコニコしながら、私を前に立たせてくれて、



「せっかくの○○の可愛らしい袴姿、今度は綺麗に撮らんとな?」

「………はい」



柔造さんにそんな事を言われて、私は照れながらもカメラに笑顔を向ける。画面に一緒に写る柔造さんが何だか嬉しかった。

今度は自分でもマシに撮れた気がする。


次は…と、私はある悪戯を思い付いて



「……隙アリ!」

「うむっ」



先程のお返しとばかりに、柔造さんの顔を横に引っ張っる。

笑った私に、顔を引っ張られた柔造さんが画面に写る。



「これも一枚決定ですね!」



とクスクスと笑いながら言うと、やってくれたなという顔をして柔造さんもまた私に、”仕返しや”とくすぐってきたり、後ろから私の首に腕を回して絞める様な仕草をとったりと、二人で一緒に笑いながらプリクラを撮った。

撮影が終わって、撮った写真を画面で見てみると……



「まともなのが一枚しかないんですが……」

「いいんやないか?俺は楽しかったで」

「私も楽しかったですけど。じゃぁ……ラクガキしに移動しますか。というかそうですよ!柔造さん早く戻らないとっ」



と、ラクガキコーナーに移動しようとしたら、手を取られて、柔造さんにぎゅっと抱き寄せられ、私はドキっとしてしまう。



「じゅ、柔造さんっ」

「○○、袴着替えてまうんやろ?こない可愛らしいのに、なんや着替えさすん勿体なくなってもうた」



耳元で聞こえる柔造さんの声と、ぎゅっと抱きしめられて背中に回る柔造さんの腕に、私は心拍数が上がる……



「…借り物ですし…着替えて返さないと……」

「………このまま誰にも見せんで、俺の腕ん中におってくれたらええのになぁ」

「〜〜〜〜っ!」



柔造さんの言葉に、私は顔に一気に熱が行くのがわかる。


そっと、私の頬に柔造さんの手が触れて、真っ直ぐ見つめられる。

柔造さんの真っ直ぐな瞳にドキリとしながら、私は瞳を閉じると柔造さんからの優しい口づけが落とされる。



「………ん」



角度をかえて交わされる口づけに、甘い声が漏れる。


と、ガヤガヤと賑わう音と人の声が耳に入り、今居る場所を思い出す。



「ん、柔造さん…人がっ」

「も少し…誰も来いへんから…○○の可愛らしい姿、俺だけに見せたって……」

「ん、ふ………」



そしてまた、今度は深く口づけされる。



「………○○が、あんま可愛らしゅうて……止まらんくなりそうやわ……」

「……もう…怒りますよ」

「そやな…乱してしもたら出られへんもんな」

「みっ………」



カアっと恥ずかしくて赤くなる。
そんな私に柔造さんはニコニコと笑う。

そしてもう一度だけ、私をぎゅっと抱きしめて軽く口づける。



「○○、卒業おめでとう」

「はい。ありがとうございます」



そう言って私も笑顔を返し、ぎゅっと柔造さんを抱きしめる。



私にとって、本当に嬉しい卒業祝いとなった。




しばらく、卒業記念で一緒に撮ったプリクラを眺めて、私の顔は綻ぶのだった。






。。







○○ちゃん大学卒業話!袴ですよ袴!!可愛いですよね〜!

袴姿にきゅんきゅんする柔造さんと、一緒にプリクラなんて撮っていただきましたww

似合わないけどそれもいい!撮ってみたい!!

柔造さん金造とかに無理やり一緒にプリクラ撮らされてたらいいなぁなんてwそれで実は意外に慣れてたりしたらいいな!

ついでに、せっかくの袴姿の○○ちゃんと外ではベタベタ出来ないじゃないですかw
なんで一応見えない所でベタベタさせてみました!(笑)

プリクラもだけど…ホント楽しかったww

袴姿の○○ちゃんの写メ、しばらく柔造さんの待ち受けだったら凄くいい(*^q^*)


大学卒業された皆様おめでとうございます〜〜!


12/03/25




[bookmark]



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -