これでも夫婦円満です。








「八百造!きゅうりもろてくわ〜〜」

「あっ コラ坊!!八百造はそないなコソ泥に育てた覚えはありません!!」

「お父、ええやんかウチの寺貧乏なんやさかい。おやつ代わりにあげとき」



遠くの方でそないなやり取りが聞こえてきて、私は思わずクスクスと笑ってしもた。






「わ、○○にも見付かってもうた!」

「おげッ、お母!」

「”おげッ”てなんやの廉造、お母さんに向かって!」



前方から駆けて来た坊に”こんにちは”と挨拶をする。

私に見付かって、怒られたり、言い付けられると思ったのか、子供達は少し焦った表情をした。


そないな3人にクスっと笑いながら、私は坊の目線に合わせて少し屈み込んで、鞄に入れてきたクッキーを渡す。



「坊、ナイショどすからね?」



しーっ、と人差し指を口にあてて言うと、坊はぱぁっと明るい表情をして笑った。

坊の隣にいた廉造と子猫丸くんの頭を撫でて、”仲良く食べるんどすよ”と言うと、3人は私の脇を元気一杯に楽しそうに走っていった。

走って行く子供達の姿を少し心配しながら見送った。



「こんにちは、お疲れやす。志摩○○どすが、八百造はんはおいでですか?」



私は、旦那と息子達と同じ門徒の方々に笑顔で挨拶をする。

夫である八百造はんが忘れ物をしたとの事やったさかい、届け物をしに来とったのやった。



畑の奥の方を指され、作業をしとる八百造はんと、息子の柔造が見えた。

先に気付いたのは柔造で、隣に居る八百造はんに声をかけてくれとった。


私を見た八百造はんは、何処か焦った表情になったのがわかる。


二人とも手を休めて私の方へと歩いて来てくれた。



「お母がこっち来るん珍しいなぁ」

「柔造、ご苦労様。さいぜん坊達に会ったんやけど、心配やし後で見てきてくれる?」

「おん、えぇで。ほんまにお母は人使い荒いんやから〜」

「お兄ちゃんお願いな」



柔造に笑顔で弟達の面倒を見る様にお願いをすると”はいはい”と戻って行った。

”ほんで!”と、くるっと先程から何処か大人しい八百造はんに向き直り、



「八百造はん!私言いましたどすやろっ!?これも忘れんと持ってって下さいって!」

「お、おん・・・」



私はは少しキツく言うと、八百造はんは焦った様やった。

朝、八百造はんが家を出る前に私はきちんと話をしとったのやった。



『達磨様から戴いたリンゴでアップルパイを焼いたさかい、八百造はん忘れんと持って行ってくだいさいね!』

『おん、置いといてくれるか?』



そして午後に”忘れ物をしてしもたから持ってきて欲しい”と八百造はんに連絡をもろたのだけれど、気付いたら私が朝置いた包みが、そのまんま置き忘れられとったのやった。



「私がせっかく戴いた御礼にと作ったものを!」

「わ、わかったから取り合えず・・・場所を変えよう」



あ、と…そういえば他の門徒の方々がいる前やった事に気付き、”おほほ、失礼しました”と場所を移動した。


畑より少し離れて本堂の方へ歩いて来た私は、持っとった包みを八百造はんに渡す。



「きちんと達磨様や皆はんで召し上がって下さいね!あと八百造はんが大事な経典忘れるなんて珍しいどすな」

「・・・おん。わざわざすまなかった・・・その・・・」



八百造はんは少しバツの悪そうにして言葉を濁した。



「どうかしましたか?」

「その・・・俺の為に焼いて、渡してくれたのかと・・・帰ったら食べるつもりで・・・」



先程から八百造はんが、少々困ったような顔をしとったのはこういう事やったのかと思った。



「○○の焼くアップルパイ好きやったからな・・・勘違いしてもうたわ」

「そないな!心配せんでも八百造はんの分もきちんとあります!」

「そやったんか・・・ならえぇわ。わざわざ届けてもろて悪かったな」


((この人は・・・まるっきし、もう!))


「せやから私、八百造はんが好きなアップルパイにしたんやないですか!もう何年一緒やと思とるんですか!」



あまり笑顔を見せへん八百造はんだけれども、長年一緒にいるからわかる。

私の言葉に八百造はんは少し驚きながらも、どこぞ嬉しそうにしとった。



「私は八百造はんの妻なんどすからね!」



と少々強く言葉にすると八百造はんからは



「ほんま○○は、俺の怖い嫁やなぁ」



なんて言うもんやから、少々頭にきたさかい、他の家族で全部食べてしまおうと決めた。




「・・・・・・今日、早う帰ってこないと八百造はんの分は無いどすからね?むしろ夕飯も無いどすから・・・あと畑・・・」

「ほ・・・ほんまに言うてるのか○○!?畑が何や!?」



「そやし、早う帰ってきて下さいね?」



にこっと笑顔で八百造はんに言う。





志摩○○、こんな私は五男二女のお母はんどす。


旦那様の八百造はんは、硬派で実直、笑顔はほとんど見られません。


趣味は将棋と家庭菜園で、休日はまったり将棋と菜園の手入れや野菜の収穫。


私も一緒にする事もあります。



そないな八百造はんも、あたしに頭が上がれへんんどすよ?



今日も、夫婦円満どす。










。。




書いてしまいましたw八百造さん奥様夢?

・・・夢、夢なんでしょうか?これはっ(笑)


アンケートをさせてもらった時に、八百造さんを書いて下さった方がいらっしゃって、書いてみましたw

本当はこんな鬼嫁みたいなじゃなくて、もっと・・・清楚で可憐な奥様にしようと思っていたのにww
あと、甘い話にしようとしたのに・・・あれれ?



『志摩○○』、『柔造兄弟からオカン』、『八百造さんの嫁』、『ちいさい坊』


私の中の今回のメインですww(あれ?いっぱいあってメインじゃなくね?)


でも、思ったんですけど、八百造さんの奥さんって最高なポジションですよね!!

志摩家の柔造さん、金造、廉造が息子で、生みの親で、お母さんで、八百造さんの奥さんですよ!!


美男子ハーレムですか!!!?(違う、家族や)


柔造さんにオカン言われるんですよ!!わあわっわわ


新しい所に目覚めてしまいそうです(ぇ)


大変失礼いたしましたwこれからもたまに八百造さん書いてみたいと思いますw



12/03/07





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