一緒に歩いていこう






俺が出張所の廊下を歩く度、ドカドカと自分でも解るくらいに、強く床を蹴って歩く音がした。

廊下ですれ違う人達が、そんな俺のただならぬ様子に、一歩下がりながら挨拶をする。

金造には鬼の様だと陰口を叩かれたが、そんな金造を怒る気にもならないくらい




俺は、怒り狂っていた。




ドカっと、執務室の椅子に腰掛け、自分の頬に触れる。


少し赤く腫れた頬がヒリヒリ痛み、


俺に先の戦闘での出来事を思い出させるのだった……






『○○っ!お前は下がっとれ!!』

『私は騎士です!!騎士が前に出ずになんで仕事が出来ますかっ!』

『いいから邪魔やっ!隊長命令がきけんのかっ!!』



俺は、指示を聞かず、悪魔相手に一人で突っ込んで行く、○○らしからぬ行動に、命令だと無理矢理下げた。

いつもは冷静で、一人無茶をするヤツでは無い……

チームとしては単独行動は命取りになりかねなく、そこから皆を危険に曝す可能性もある。

俺はそう判断して、○○に下がる様命令したのだった。


そして誰も怪我なく終えた時だった。

俺の方に○○が真っ直ぐ歩いてきたと思ったら



−−−バシッ



と、頬に痛みを感じる。

○○に頬を叩かれた事に一気に頭に血がのぼり、”何すんのや!!”と叫ぶ前より、○○が口を開く方が先だった。



『私は、そんなに騎士として頼りないですかっ!?じゃぁ何で私を隊長の”補佐”にしたんですっ!!』


俺は、○○のこんな怒りが込められた言葉を聞いた事が無かった。

ただ、俺も○○に頬を叩かれ頭に血がのぼって冷静さを失っていた。



『お前みたいな単独行動するやつが、チームに居たら迷惑なんや!!』

『っっ!…解りました。私は補佐の任を降ります。私はもう隊長に付いて行けそうにありませんので移動を希望します』

『あぁ!勝手にせいっ!!』



俺は、○○がその時どんな顔をしていたかわからなかった。


『…柔造の…馬鹿っっ…』


『隊長を殴ってしまいすみませんでした…失礼しますっ』


○○はそう言ってその場を後にした。

俺には、○○への怒りと、叩かれた頬のずきずきとする痛みだけが残った。






周囲にも伝わるくらい、今だに○○への怒りがおさまらない俺は、執務室の空気を悪くしていた。


その時、バタバタと駆けてくる音がしたと思ったら、金造が血相を変えて執務室に飛び込んできた。



「柔兄っっ!!○○さん怪我したって今っ!運ばれてきよった!!」

「なっっ!!何処やっ!」



突然の金造の言葉に、俺は○○への怒りよりも、あの後何故そんな事に…という思いと、頭に不安が過ぎった。

医務室へと駆ける間、俺は○○に強く言ってしまった事を後悔していた。



「………○○っ!!」



急いで医務室に入り見たものは、頭と腕とを包帯に巻かれた○○の姿があった。


俺に気付いた○○は”柔造……”と俺の名前だけをつぶやき、すぐに俺から目線を反らした。

それでも俺は、○○の姿を見てホっとするのだった。



○○を運んで来たやつに話しを聞くと、俺と言い合いになった後で、悪魔の残党と遭遇し、不意をつかれてしまったらしい。

たまたま近くに他の祓魔師が居たからよかったものの、もう少し遅ければ危険だったという。



「悪い、○○と二人にしてもらえんか……」



俺は、金造やその場に居たやつらに席をはずしてもらった。

二人だけになった医務室は、シン…として空気が張り詰める。


言い合いなった相手である俺と、目を合わせようとしない○○に


俺は近付き、



−−− ペ シ っと



優しく頬を叩く。



「俺が、お前を下げんかったんは力不足や思ってたからやない!○○にこないな風に怪我して欲しくなかったからや!」



俺に叩かれた頬を、包帯で吊られていない片方の手で触る○○。



「ほんま……よかったっ……○○にもしもん事があったら…て俺……」



俺は○○を見ながら、自分の手を強く握る。



「俺は、○○が大事やから…俺が護れんくなるんは嫌やったんや………」



俺が怒っていたのは、○○が無茶をして一人で突っ込んでいった所だった。

○○を大事にしたいと思っていた俺は、だからこそ、そうやって無茶をする○○が許せなかった。



「○○……、俺も頭に血がのぼって冷静やなかった……ほんま、すまんかった!」



○○に俺は頭を下げた。謝った所で○○の怪我が治るわけではないのだが……


それでも、あの時もしも言い争いにならなかったら……と、自分の非力さを思い知る。



「っっ…柔造……ご、ゴメンなさいっ……」


○○が口を聞いてくれた……と思ったら、彼女から漏れる同じ謝罪の言葉。

顔を上げてみれば、目から大粒の涙を流す○○の姿があった。



「なっ…○○泣くて、そんなん!!」



俺は、○○が泣いている姿を見た事が無かった。

いつも冷静で、強い志を持って俺の側で戦う○○は、弱い所を見せたりしなかった。

そんな○○が泣きじゃくっているのだから、俺は焦って困惑してしまう。


(( ど、どないしたらえぇんや ))


俺は焦っておろおろとうろたえていると。

○○は”私…もっと…”と、ぽつりぽつりと話し出した。


「強くならなきゃって、強く…なって、私が柔造を護りたかった…護られて、ばかりじゃ嫌だった…」


「おん……」


○○は泣きながらも自分の気持ちを話してくれた。それに答えるように俺は、○○の言葉に耳を傾ける。


「だから補佐になれた時、は…嬉しくて、側で柔造を護れるんだって……でも邪魔だと言われた時は凄く…ショックでっ……」


”私も…柔造が大切だったから…だからっ・・・”


 ぐ っと、


○○を俺は優しく抱きしめる。

怪我をしているから、痛くならないようにと、優しく腕に力をいれて。



「○○……ほんますまんな、俺らお互いに護りたい思ってんのに、話しもせんかったな……」


腕の中の○○は、”そんな事ない…”とふるふると首を横に振る。



「俺はまだまだ、隊長として未熟やし無力や……、せやから○○に補佐してもらわんと駄目やんな……」



そっと、優しく抱きしめていた身体を離し、○○の頬へ手をあてる。


○○の頬へ伝う涙を優しく拭って



「○○、側におって欲しい……俺ん所に戻ってこい」



真っ直ぐに○○を見て言えば、○○もそれに笑顔で”はいっ”と答える。



「やて…俺が護る言うのに、余所で怪我されたらかなわんからなぁ」



ハハハと笑顔になって言えば、○○も笑ってコクんと頷く。


そして、顔をあげた○○と、ぱちっとお互いの視線が重なった時



 −−−ちゅ



と突然俺の頬に○○の柔らかい唇を感じる。


驚いた顔をして○○を見れば、その口付けした俺の頬に手をあて、申し訳なさそうに”叩いてごめんなさい…”と謝った。



「私も、もう一人で無茶はしない……だから、柔造の隣で護らせて?」

「おん!俺の背中は預けたんからな」



そして、俺も○○の頬へ、額へ、瞼へ・・・と優しく口付けを落として、


最後に、○○の唇へと触れるだけのキスをする。




顔を寄せあって、二人で一緒に笑いあった。




俺と○○は、お互いに言葉が足りなかっただけなのだ……


それぞれの想いが噛合わずに、すれ違ってしまった。




でも、今度はもう間違ったりしない




これからは、二人でどんな些細な事でも話していこう。



互いの手をとり、一緒になって……










Thanks! 1000hit

12/02/29 ryo hazuki


。。




1000hit フリリク

秋月様より

『柔造夢、柔造と大喧嘩して、柔造の前で泣いたことがない夢主が泣いちやって柔造が焦りながら、仲直りする話』

ど、どうでしょうか?

うまく書けていたらよいのですが!(><)ドキドキ


大喧嘩をどうするか悩んだのですが、ただの言い合いになってしまってます(^^;)

相手が大切だからこそ自分が傍で護りたいし、無茶したり傷ついて欲しくない。

お互いがそれぞれ思う気持ちがあって、それが衝突してしまう。

そんな風にしました。

思いあうからこその喧嘩もあると思うので。



あまり甘い感じではなくなってしましましたが、気に入っていただけたら嬉しいです!

リクエストして下さって本当にありがとうございました!

秋月様!これからもよろしくお願い致します!








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