愛しいひとへ






―――ウ゛ーッウ゛―ッ


私は、耳元で聞こえる機械的なモーター音と振動に気がついた。
腕を伸ばし、その物を手探りして掴めば、手に振動が伝わる。
薄く瞳を開ければ暗闇の中光るケータイ。
朝起きる為に設定したアラームが鳴ってしまったのだろうかと、その振動を止めようと画面を開ければ、暗闇の中の急な明るい光で重い瞼をより細めさせた。

細めた目で見る画面には”柔造さん”の名前。

((電話…柔造さん…からだ))

未だに振動しているそれをボタンを押して答えた


「はぃ…も…しもし?」


自分ではしっかりと話したつもりだったが、私から出た声は何とも滑舌が悪いハッキリとしない声だった。
寝ていた頭がまだ働いていないからかもしれない。


『○○…悪い…起こしてしもたな?』


”寝てたやろ?”と言い当てられて、自分でも先程の声ではな…と納得してしまった。


「ん…大丈夫です…ょ…どうしましたか?」


繋かってきた電話をそのまま出てしまったので、そういえば今何時なのだろうと耳元からケータイを外して時間を確認すると《0:32》の文字。

普段柔造さんから遅くに電話は繋かってきた事が無かったから、もしかして…と不安が過ぎる。


「何かあっ…『○○っっ……』」


”何かあったんですか”と聞こうと思ったら柔造さんの方から話しかけられてしまい、言葉を紡いだ。



『……○○っ…好きやぁ』

「〜〜っっ!?」

『めっちゃ…好きやねん』


急に聞こえた言葉に私はドキっとしてしまった。

柔造さんは普段あまり好きと言葉にはしない……それなのにどうしたのだろうかと私はドキドキしていたら、どうも様子が可笑しい事に気が付いた。

((もしかして……))


「柔造さん……酔ってますね?」

『酔っとらん〜!素面やで〜ハハハ!』

「……………」


柔造さんは完全に酔っていた。同じ言葉を繰り返し、何度も柔造さんに好きだと言われだが、嬉しい様な悲しい様な複雑な気分になってしまった。


「柔造さん、大丈夫ですか?」

『…○○……○○の声が聴きとぉなって…』

「はい。今、何処に居るんです?」

『今?……今、は○○の部屋ん前や…』


随分酔っている様子だったので、大丈夫かと心配になり何処にいるかと尋ねれば私の部屋の前だと言う。
本当かどうか解らなかったが、私はベッドから起き、電気の眩しさに目を細めながら軽くカーディガンを羽織り急いでドアに向かった。

ドアを開けて外を見れば壁にもたれて座り込んでいる柔造さんの姿。


「ど…したんですか!急にっ…大丈夫ですか!?」


話しかければ、柔造さんの持っていたケータイから私の声が聞こえる。

ドアを開けて出て来た私に柔造さんは少し驚いた様子だった。
酔っているせいか赤い顔をしていたが、柔造さんは私を見て少し笑う。


「と、とりあえず遅いですし中入って下さい…」


どのくらい外に居たのか解らなかったが、寒い中外に居るのはよく無いと柔造さんを部屋の中に招いた。
後から入った私がバタンとドアを閉めたと同時に柔造さんにぎゅっと抱きしめられた。


「○○……○○……」


私の名前を呼び、ぎゅうっと力強く抱きしめてくる柔造さんからはお酒の香りが漂っていた。


「○○に逢いとぉなった……」


私はドキドキしながら柔造さんが言ってくれた言葉に答える様に強く抱きしめ返す。


「○○ほんま好きや…」

「私も、柔造さんが大好きですよ」


”好きです、大好きです”と腕のなかで呟く。
少し身体を離して柔造さんの顔をみれば、赤い顔で嬉しそうに微笑む。

そして、柔造さんは今度は私の身体を引き寄せ口を塞ぐ。


「んっ……」


柔造さんと何度も角度をかえて重ねる唇からはアルコールの香りがして、その香にクラクラとした。


「…ん…ふっ…」


深く口付け、口を割って入ってきた舌にドキっとしながら、同じ様に……と

思っていたら柔造さんは私から唇を離して私の肩にコツンとうなだれた……


「○○…………スマン…水…」


赤い顔をしていた柔造さんは少し青ざめた様で、急いで部屋に案内してソファーに座らせた。

逆に私の方が赤いのは気のせいだろうか……


キッチンからグラスに水を注ぎ柔造さんへと持っていく。


「おおきに…」


と言って私が持っていった水を飲む。
水を飲んで落ち着いたのかソファーの後ろにもたれ掛かってハーッと息を吐く。


「今日は流石の俺も飲み過ぎたわ……」

「そうみたいですね。普段聞けない言葉が聞けました」


クスっと笑えば柔造さんは私をチラっと見て、自分の隣に来るように促した。
それに答えて隣に座れば、私の肩に柔造さんが頭を乗せてくる。


「○○、俺は口には出さんかもやけど、いつも思っとるんやで?」


傍に有った私の手を握り柔造さんは話しだす。


「飲んでたらな、何や○○の声聴きとぉなったし逢いとぉなってしもたんや………なんやコレえらい落ち着くな…」


”眠たくなってしもたわ”そう言って甘える柔造さんを私は片方の手で頭を優しく撫でる。
短いけれどさらさらとした髪を何度かすいてやると、しばらくしてから柔造さんからスースーと寝息が聴こえてきた。


((可愛い…寝ちゃった))


起こさない様にそっと退けてクッションを枕変わりにし、毛布をかけてやる。

スースーと寝息をたてる柔造さんを見て私は何だか可愛らしいなぁと思ってしまう。


いつも真面目でしっかりとしていて格好よくしているのに、こんなに酔って甘える様な仕草を見れて嬉しくなった。

男の人に可愛いなんて言ったら失礼で怒られるかもしれないけれど、可愛いと思うのはそれだけ彼が好きで、愛しいからだと思う。


酔って電話を繋かけてきてくれた事も、こうして逢いたいと思ってくれた事も全部私を嬉しくさせ、柔造さんを本当に好きなんだと実感する。

そんな彼を愛しいと思う。



寝ている、柔造さんの髪をすいて静かに言葉をかける



「柔造さん、大好きです。おやすみなさい」



そして

愛しいひとへ………

口づけを




。。




酔って甘える柔造さん!
絶対可愛い!!と書いた話し(笑)

お酒は絶対強そうだけど、飲み過ぎて逢いたくなったり電話してきて欲しい!可愛いよ!


男の人が可愛いと思えたら凄くその人を好きなんじゃないかと思います。


青エクキャラは皆カッコ可愛いです!!



12/02/19


[bookmark]



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -