あなたが望むのなら何度でも
掃除をしていたら出て来た一枚の写真
それを見た時に、私は何だか凄く嬉しくなってしまったのだ。
「柔造見て!凄く懐かしいでしょ」
そこには学生時代の柔造が写っていた。
「お、ほんまや。えらい懐かしいなぁ………なんや俺めっちゃ若々しいわ」
「これちょうど今の時期かなぁ…マフラーとかしてるし……あ、思い出した」
しばらく写真を見ていた私はその時の状況を思い出した。
写真に写る風景は学園の外で、カメラ目線ではないのだが、自転車を引く柔造が写っている。その手には紙袋があって……
「あ、いや違う。何でもない」
「なんやねん」
本当は覚えてる。
そこには写真を残したいくらいの気持ちがあったのだけれど、何だかそれは恥ずかしくなって言わないでおこうと思った。
だから私は話を反らすことにした。
「この自転車今どうしてるの?」
「そん時のは流石に壊れてしもたなぁ…」
「そうなんだぁ…ちょっと残念だな。私好きだったのに」
”自転車がか!?”と言う柔造に笑ってしまった。間違いではないけれど、ちょっと違う。
私が好きだったのは自転車というよりも、”柔造と二人乗りをする自転車が”だった。
いろいろな想い出があった自転車がもう無いのは残念に思う。
「今度これで迎えに来てよ」
「そんなん好きなんか?この歳で流石に恥ずかしゅうてかなわんなぁ」
”考えとくわ”と恥ずかしいといいつつ、一応考えてくれる柔造は優しい。
「そんかわり、や○○?」
「ん?」
”ほい”と手を出してくる柔造に私は”ちゃんとあるから”と言って紙袋を渡す。
「毎年恒例のだけど…柔造、いつもありがとう。……ハッピーバレンタイン」
「ありがとうな。ほんま嬉しいわ」
昔は恥ずかしくて渡せなかったチョコも今では普通に渡せる。勿論、気持ちは込めて。
「俺、○○の作る生チョコ好きやねん。一年に一回やろ?」
「ありがとう。そんなに好きだったら言ってくれたら作るのに」
「やっぱ今日貰うのがえぇ」
柔造は早速包みを開け、串を使って一口生チョコを口に含む。
「美味しい?」
そう聞く私に柔造は”美味い”と言って食べてくれる。毎年変わらぬやり取りでも凄く嬉しい。
「○○も食べたんか?」
「ちゃんと試食くらいするよ……んっ!」
口に広がる甘いチョコの味。柔らかい生チョコは口の中ですぐに溶けてしまった。
目の前には満足げな柔造の顔。
「美味いやろ?○○にも…思てな」
「それは…ごちそうさま」
急に柔造にチョコを口移しされてしまう。不意をつかれたのが少し悔しい。顔は赤くなってしまっただろうか…
そして柔造は私の腰を引き寄せて、顔を覗き込みむ。
「○○、俺にもくれん?」
そんなお願いに私はくすっと笑ってしまう。
そして柔造の首に手を回し
「お望みの通り、いくつでも?」
引き寄せて甘い口づけを。
今日だけ特別の甘いチョコを一緒に味わう。
写真は、本当偶然だったけれど、それはバレンタインの写真で私が初めて柔造にチョコをあげた時に撮ったものだった。
義理じゃなくて本命として初めて渡した日。
凄く恥ずかしくて、でも受けとってくれたのが何だか嬉しくて、想い出として取っておきたかった。
その時から柔造と一緒に居て、今年もチョコを渡す。
そしてきっと来年も、これからもずっと渡すのだろう
甘い甘いチョコレートを……
「来年も頼むで?」
「ん……こちらこそ、飽きないでね?」
「こんなん美味いの飽きるわけないやろ」
クスっと二人で一緒に笑い、そしてどちらともなく口付ける。
あなたが望むのなら何度でも。
バレンタインの甘い夜。
。。
バレンタイン柔造さん2つめ!二つとか愛が偏ってますww
♪バレンタインデーキッス・・・まさにww
一つだけの予定が14日バレンタイン当日になってどうしても書きたくなってしまった・・・
高校同級生の恋人設定で、今柔造さん26歳くらいで!
本当は自転車の話が書きたかったんだけ、やっぱり今日はバレンタインだからとバレンタイン仕様になりました(笑)
学生時代の話はまた今度にします!!
裏は書けたら・・・かなぁ。。
とりあえずハッピーバレンタイン!
2012/02/14
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