美味しいものを食べながら
-------ガガガガガガガ
「・・・・・・」
-------ガガガガガガガ
「ねぇ・・・・金造・・・・」
「・・・ふ、ふぁんや?」
「 汚いっ!! 」
私は我慢できずに思い切りテーブルを叩いて叫んでしまった。
いつものコトなのかもだけれども、この時はどうしても気になって言ってしまったのだ。
金造のゴハンの食べ方が・・・・・・・だって・・・あまりにも酷かったものだから。
ゴハンを音が聞こえるってくらい勢いよく食べる金造。
初めて見た時は、それはそれは驚いたんだけれど、特に気にしてなかった。
前は部署も違うし、一緒に食事を取る事がなかったからかもしれない。
金造は《志摩》の人だし、見た目も金髪だってこともあるからかもしれないが、他の部署に居ても有名だった。
私が警邏二番隊に移動になって、歳が近いからか金造とは仲良くなった。
初めは私も《志摩》の人だって敬語とか気を使っていたんだけど、金造は
”堅苦しい事言わんでえぇ。俺は全く気にしとらん”
そんな事を言うのだった。
金造は誰とでも仲良く出来るし凄く好かれる。そんな金造の明るい性格だからかもしれない。
柔造さんに言わせればそんな金造は”ドアホ”らしいけど。・・・わからなくはない。
最近一緒に仕事をしているからか、それがよくわかるようになった。
そして今日も金造と同じ仕事に就いていたわけだけど、私には珍しく夜勤だったのだ。
夜勤の時は、昼の時には無い事がある。
それは、夜任務に就く前に、皆で一緒に食事をとるのが習慣なのだ。
この時間は、厳しい任務に就く前の休息の時間でもあり、同じ任に就く皆との交流を深める場でもある。
ここも一つの仲間と団結する為に考えられた事なのかもしれないが、その食事は《自分たちで》作る。
夜勤になると食事当番というものが回ってきて、意外に大変だと話を聞いていた。
私はほとんど昼だけで、前回の夜勤は別の人が当番だったから、食事当番も初めてだったりする。
それで、私が同じ当番の人と作って食事を皆に出したわけなのだが・・・・・・
金蔵のゴハンの食べ方が気になって仕方がなかったのだ。
自分が作ったからからかもしれないけれど・・・・・
「 汚いっ!! 」
「ふぃたなぃ?(汚い?)・・・」
「ちゃんと食べてから喋る!!・・・そういう所がだよ」
口をもぐもぐさせながら話そうとした金造をまた叱る。
きちんと食べ物を飲み込んだ金造が”○○はオカンか”と言う。
・・・そんなつもりでは無いがどうしても気になってしまったから。
「だってもう金造だけだし、もっとゆっくり食べたらいいのにって思って。まだあるしさ」
いつもは皆で一緒に食べるのだが、今日は金造が一人遅れてきたのだ。
私を含め、他のみんなはもう食べ終わり、先に任務に就いている。
今日の当番である私は、金造が食べ終わるまで一人で残り、片付けなどすませて行く事にしたのだ。
食べ方が汚いとも思ったのもそれはあるけれど、慌てて勢いよく食べる金造に言ってしまったのだ。
多く作って量もあるのだから慌てなくてもいいのにと。
「あ、それか何か急いで食べなきゃいけないくらい急いでたの?」
「んな事はない」
そんなに慌ててる何か理由があるのかと思って金造に尋ねるもそういう訳ではないらしい。
ズズっと味噌汁を飲む金造は、先ほどの音が出るくらい勢いのある食べ方とは正反対に落ち着いていた。
飲み終わって、御椀をテーブルに置いた金造は笑顔になって
「ごっそさん!・・・あ、いや”ご馳走様でした”」
何故か丁寧な言葉に言い直し、手を合わせてご馳走様と口にした。
凄い食べ方をしていた金造からは考えつかない、行儀のよい行動に私は意外だった。
「今日の○○が作たんやろ?」
「え、あぁ・・・うん。私だけじゃないけど大体は・・・」
今日の当番だと知った時に、初めてだからと気合を入れすぎて、他の人よりも早く来て作ってしまっていたのだ。
だから私が殆ど作ったといってもいい。
「だと思たわ!○○が作たからやろか?いつもと違ごて、めっちゃ美味くて止まらんかってん!」
”勢い良くかっこんでしもたわ!”
そう言いながらケラケラと笑う金造。
勢いよく食べていたのはどうやらそういう事だったらしい。
「○○が作る飯、俺好きやなぁ!ホンマ毎日作て欲しいくらいやわ!お、そや茶とかあるん?」
”お茶”と言われたので、私はすぐ立って移動した。
金造がそう言ってくれなければ・・・・・・すぐその場を離れなければ、きっと私はダメだった。
だって私は、金造の言葉に凄く顔を真っ赤にしてしまったから。
金造は思った事も正直に素直に言う。本当馬鹿正直だと思う。だから”ドアホ”なのだ。
その素直でストレートな言葉に傷つく事もあるけど、嬉しい事だっていっぱい言う。
今日のゴハンだって、ただ思った事で金造の事だから深い意味なんて無いのだろう。
けれど、私はその言葉が凄く嬉しかった。
私が作ったからとか、毎日食べたいなんて言ってもらえたら、頑張って作ったかいがあったなと。
私の赤くなって熱をおびてしまった顔だけれど、自分で笑顔になるのがわかる。
お茶を汲んで、金造の所に運ぶ。
「じゃぁ、今度はもっと丁寧に味わって食べてよね。」
”また美味しいって言ってくれるの作るからさ”
そう笑顔でお茶を手渡しながら私はいう。
慌しい時間を過ごす日々に、せめて食事の時くらいは落ち着いて。
美味しいものを食べながら。
。。
金造夢でゴハンがテーマでした。
原作で、金造が虎屋で朝食を食べているシーンを見ながら思いついて書いた話です(笑)
だって金造のゴハンの食べかた勢いありすきだよ!!
そんなバカな金造も好きだけどね!
食べ方汚いけど「美味しいんだから仕方ないやろ」て言ってあの食べ方したらいいなってところです。
あ、ヒロインちゃんに言わせるの忘れてた。
「お粗末さまでした!」
2012/02/09
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