それは俺の役目やから

【君と甘い関係にはまだ】続き



−−ピンポ−ン



−−ピポピポピポピポーン!




バタン!!!

「うっさいわー!!聞こえてるっちゅーねん!!近所迷惑やろがーっ!!」



「○○…お前関東生まれやろ……」


ドアを勢いよく開け、凄い剣幕な顔つきで出て来た○○。
この顔は、言い争いになるたびに良く見る顔だったりするので、特に驚きはしない。


「あ、何だ金造か。おはよ!いや、近所の子供達の新手の嫌がらせかと…」

((コイツそんなん近所のガキ共に悪戯されてるんか?))

「ちょっと待ってね!今準備してくるから!」

「お…おん」


((な…何んや、あがっとんか俺?…いや気のせいや!))


朝、柔兄に”デートか?”なんてニヤニヤして言われたもんだから変に意識してしまった。

((クソっ!うっさいわ!))


「何変な顔してんの金造?」

「おわぁぁぁ!」

「変な声もだして……頭大丈夫?」


急に声をかけられたもんだからビビった。
とりあえず心を落ち着かせようとした矢先に
額に冷たい物が触れる。


「熱でもあんの??…んーなさそうだけど」


額に手を当てられて熱を計られる。本当心臓に悪い。急にそんな事されて逆に熱が出そうになった。


「アホか!頭大丈夫とか!いっつも人の事馬鹿にしてるやろ!」


((あ……またやってもうた))

自分の悪い癖だと思うが、○○の前だとどうしても余計な一言が多くなる。


「べっつに!金造が
”前の詫び見つけたから喰い行くぞ”
なんて、珍しい事言ってくるから変なんじゃないかって思っただけですー!」

「こォんの!………」


いやいや、ちょい待て。冷静になれ俺!
俺は何の為に来たのか目的を思い出して、


「”そうですかー!”……ほな行こか」


わざと○○の口まねしてごまかし、自分をなんとか落ち着かせた。
あのままでは何時までたっても出掛けられず、下手すればいつもと変わらず、口喧嘩して今日は終了…な所だった。
危ない。来た意味が無くなる所やった。
や、別に意味ないわけじゃないが……

ドカドカと○○の一歩前を歩いていく。チラっとその少し後ろを歩く○○を見る。
怒っている訳ではないが、あまり良い顔はしていなかった。
俺は○○をいつもこんな顔にさせてる気がする。


”○○に素直になったらどうや”


なんて柔兄には言われたけど、○○は柔兄の前だと笑うし違う顔をする。
そんな柔兄には敵わない……
て思ってたのに、急に素直になれ、なんてどうしていいか正直わからん。
ただ、何かきっかけが欲しかったし、変えたかった。


((なんや、気まずいわ……そや))


「あれやな、私服初めて見た気するわ。なんちゅうか、清楚や可憐て言葉はまず似合わんな」


ハハハと笑って言ってみる。
”うわ酷いっ!”て当たり前に言われる。


「やけど、なんや○○らしくてええな」


○○の私服姿。
よく考えると、いつもは団服だから、初めてだった。
いつもと違って髪もアレンジして、服や鞄などもオシャレでバランスが取れている気がして、凄く○○らしくて良いなという印象だった。


「あ、ありがと」

「おん」


ぶっきらぼうな御礼の言葉が返ってきたのを聞いて、俺も少し笑った。

それから、俺の変な緊張も解けたのか、○○とどうでもいい様な話をして盛り上がった。

話てわかったのだが、○○の甘い物に対する情熱は物凄かった………

それを聞いていたら申し訳なくなって


「○○、その…なんや、この前はほんま悪「あー!○○や!!」「ほんまや!○○ねぇちゃんや!!」
………あ゛?」


店に向かう途中、小さな公園の前を通ろうとしたら急に声がかかった……○○に。
((なんや!人が真面目な話をしとる時に!!))



公園からガキ共が走って○○に話かけてくる。


「○○!!何しとるん?今日は遊ばんの!」
「○○ねぇちゃん!今なーめっちゃおもろい事してんねん」

「ホラ!そんな皆一気にしゃべったらわかんないよ」


○○と仲のよい子供なんだろうか、普通に遊びに誘ってくる。
……そういえば、迎えに行った時”ちびっこ達の新手の悪戯かと”とか言ってたしな。

○○は子供達の目線に合わせて、少しかがみながら話しかける。


「今日はね、この金色のお兄ちゃんが私の好きなケーキご馳走してくれるんだよ」


子供達が聞き取り易い様にゆっくり話す○○の”金色のお兄ちゃん”と言った事よりも、何よりも先ず先に、○○の子供達に話す笑顔に俺はドキっとした。
○○のこんな顔を初めて見たからだ。

((こんな顔するんか))

「((はっ!))”金色のお兄ちゃん”てなんやそれ!金造さまと呼べや!」


子供達はよくわからないと言う顔をしていたけど、”きんぞー?”と言ってきた。まぁ、ええか。

そしたら○○が《ケーキ》なんて単語だしたが為に子供達もケーキを食べたいと騒ぎだしてしまった。

「ん〜困ったな…私もケーキ大好きだから絶対譲れないんだよね!あ!そうだ」


”何の悩みや”とツッコミたくなったが○○はなにか思い付いたらしい。

「金造、ゴメン。一緒に連れてってあげてもいいかな?」

「なにぃ!俺!奢るんか!?」


”スマン!とりあえず連れてって”なんて言うから仕方なく子供達も連れていく事にした。

((クソっ……○○んせいやぞ!……なんや足りるか心配なってきたわ))



なんやかんやで店に着いた。

途中○○が子供達に
”きんぞーはお唄が上手なんだよ”
なんて笑って言うもんだから何か断れなくて、ヒーローもんの唄とか一緒に歌わされた。音楽は何でも聞くけどさすがに恥ずかしかったわ。


「皆ちょっと待っててね!ケーキに目がない、おねぇちゃんが美味しーの探して来てあげるから!」

”金造もそのまま待ってて”とコソっと話して○○は先に店に入ってしまった。

どうするのだろうかと思っている時、子供の一人に”きんぞー”と言われた。


「きんぞーは○○の[かれし]なん?」

「な!…いや」

「おれな!もっとおっきくなったら○○の[かれし]んなって!○○のすきな甘いのいっぱい食べさしてやるんや!」


自分よりも一回りくらい違う、こんな小さな子供は素直に自分の好きな事やりたい事を伝える。

((あぁ、そうやったんか))

俺が○○に素直になるってこういう事じゃないのかって思った。
好きなものは好きだと言える事。

俺は真っ直ぐな気持ちで伝えて来たコイツに、俺も素直に答えなきゃと思った。
その子の頭にポンと手をやって


「悪ぃな。それは俺の役目やから、お前にはどうしても譲れんのや。堪忍な」


そう俺が言ったら。そいつはブスっとしたふて腐れた顔をした。


「お待たせ!どうかしたの?」


タイミングが良いのか、○○が戻ってきた。
”何もないで”と答える。
他の子達は”ケーキはー!”て言ってるがそいつはまだ顔が曇っていた。


「それがね…売り切れだったのっ!もぅ私も本当残念でっ!!

……だけどねー!いいのあったんだよ!」


○○の残念そうな顔に”えー”っと子供達も残念なそうになるが、○○の笑顔で”何なに?”と子供達もつられて笑顔になる。


「じゃーん!マカロン!ほらいろんな色があって綺麗でしょ!甘くて美味しいんだよ!」


子供達は○○につられてわいわいと騒ぐ。○○は一人一人に配っていた。


「ハイ。これは金造に。」


コロっと。俺の手にもマカロンが渡される。
もちろん、俺のせいでふて腐れてしまったコイツにもニコッと笑ってマカロンを手渡す○○。
もしかしたらコイツが変だってわかったのかもしれない。

俺は、○○から貰ったマカロンを、ぐいっと二人の前に差し出した。


「○○やる。俺、お前に甘いの食べさせんといかん役目やからな!
でも、お前がいらんかったら、ソイツにやったらええ」

「...ありがと金造。はいコレもあげるね!やったね!
あ、ホラ見て!このマカロンきんぞーとおんなじ色だね」


○○は俺が急に言った言葉に何も言わず、マカロンをあげた。
ソイツは俺と同じ《金》ではなく、黄色い色したマカロンを見て笑った。



帰り道。ソイツは俺に手を差し出してきたから繋いでやった。
ギュッと握りしめる手から、何も言わないけれど何だか認めてくれたのかな、と思った。




「そういえば、なんだけど。公園でなにか言いかけて無かった?」

「あぁ……、なんや。この間はほんま、悪かったな…て言おうとしてたんや。まぁ結局何もせんへんかったけど」

「そんなことないよ!ありがと金造。
でも今日は凄い楽しかった!皆で一緒に食べるお菓子もいいね!」


”ケーキも本当はあったんやろ?”て俺が言ったら
”やっぱバレバレか”なんて言って、でも今日は本当楽しかったなっと笑った。

子供達に振り回されて疲れはしたが、そんな俺も満更ではなく、なんだか楽しかったと思った。


「せっかく案内してくれたのに、こんな事になってゆっくり出来なかったけど……
今度、また一緒に行ってくれる?その時はケーキ食べたいな」

「おん。……ガキ共抜きでやったらな」



○○は”あはは”と今日よくみせてくれた笑顔で笑った。


いつもは○○を怒らせてばかりだけど。

今日はいろいろな○○の顔を見れて、それだけでも誘ってよかったと思った。





デザートみたいに甘い関係にはまだまだ遠いけれど、


○○の好きな《甘いもの》を、
いっぱい食べさしてやる役目には


そんなに遠くないんじゃないか、なんて気がした。




((……次まで別の道探しとこ))



。。

金造【君と甘い関係にはまだ】の続き。まだまだ遠いけどいい感じにはなれたかなぁなんて。お互い素直じゃないんで。

ヒロインのいろんな一面(子供好きとか笑顔)にドキっとしたらよいな、なんて思って!

あと前回プリンで今回マカロンにしてゴメン金造!


2012/02/02



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