始業式というだるいことこの上ない会も終わり、クラスに帰る列の中さっそく友達になった巴ちゃんと弥生ちゃんに話しかけに行った。先程新入生に部活動の話があり、上級生も勧誘や新入生のことについてで話はもちきりだった。

「二人は部活なにやってるの?」
「私らは文芸部だよ。漫研なくってさー」
「ねー。そういうの好きな子で集まって自己満の冊子とか作ってるよー」
「えっ!なにそれちょう羨ましい!!私見栄はって家庭科部とか入ってるけど今年から文芸部にしようかな!?」
「すごい食い付きだね。いいよ来なよー大歓迎!」
「名前ちゃん漫画とかも描くの?」
「漫画はノートにさらっと描くくらいだけど…絵は描いたりするよ。主に男と男的なアレを」
「あ、仲間でしたかこんにちはようこそ大歓迎です」
「よかった引かれたらどうしようかとよろしくおなしゃす!」
「名前ちゃんオタクどころかそっちの人だったとは…。文芸部、いいところだよ!┌(┌^o^)┐ホモォ....」
「やめwwww私中三デビューしてよかった…!!」

立海にもやっぱり腐った人っているんだね。私大勝利!二人共文も絵も描くみたいだし、文芸部に入って間違いはないだろう。しかもまだお仲間いるみたいだし!家庭科部とか女子力高すぎてやってられんわ。…あ、でもお菓子は食べたいなぁ。活動そんなには頻繁じゃないし、兼部しよっかな。

「よし決めた。兼部するわ。先生に後で入部届け貰ってくる」
「うん。今日も普通に部活やってる…っていうかお試し期間みたいなのだからよかったら見においでよ」
「行く行くー!あとついでに個人冊子も見せてほしいなぁ…」
「あ…でも、ちょっと耳かして」
「うん?」
「最近の活動もっぱらテニス部のアレなんだよね…版権ものとかじゃなくて」
「そういうのを待ってたの。てか求めてたの。文芸部仕事しすぎ今から楽しみだわ」
「ならいいんだけどね!待ってるよー」

私の求める全てが文芸部にはあった。もう入るしかないじゃんね。選択肢ひとつだからね。
じゃあホームルーム中はうちのクラスのあいつらでネタ考えようねってことで私らは笑顔で解散した。最低とかいう言葉は聞こえん。要はバレなきゃいいんだよバレなきゃ。
以前の私が愛してやまなかった仁王(主に同人的な意味で)がいることでテンションは更に上がり、委員決めやらなんやらの時間は主に丸井と仁王での妄想で消えていった。放課後になったら入部届け出して文芸部に顔出して、時間があればテニス部にネタ探しに見学に行こう。二人共一緒に来てくれたらいいなむふふ。新学期は出だしは好調だ。この調子で学生ライフ、楽しめたらいいな!

そんな呑気に構えていた私を殴りたくなるのは、これから30分後のことである。


「あっ名前ちゃん!」
「ん、あれ、綾香ちゃん!どうしたの?こんなとこに」

職員室の前で一呼吸置き、扉を開けようとしたところだった。ガラリと勢い良く開いてばっちり目があったのは、今朝方ぶりに会った綾香ちゃんだった。相変わらず美少女。可愛い。
そんな彼女はふふっ、とふんわり微笑んで私に何かを差し出してきた。天使や…じゃなくて何だろう。

「名前ちゃんの分も貰っておいたの。入部するんだよね?」
「あっこれ…!ありがとう!」
「ううん、二人で入ろうねって決めたから」

綾香ちゃんがくれたのは入部届けだった。も、もしかして以心伝心!?さすが親友、私の考えがわかるんだね!というか綾香ちゃんもそういう趣味があったんだね、これは意外!本日二度目の嬉しい出来事だ。部活見に行って判子貰いに行こうよ!と言われ、私は疑いもせず綾香ちゃんに笑顔で着いていった。迷わず外に向かった時点でおかしいと思わなかった私は本当にバカだと思う。

「キャーーーッ!幸村くん頑張ってーー!!」
「仁王くんかっこいいー!!」
「丸井くんこっち向いてーー!!あっ手振ってくれた!キャアアアアア!!」

やばい。テニス部やばい。
何故か綾香ちゃんに着いていくとそこは大量の女子の歓声で犇めいていて、正直圧倒された。部活のアピール期間だし騒いでいいのかもしれないけど、これは想像していたよりもすごかった。テニス部って本当に人気なんだな…。軽く引きながら綾香ちゃんに着いていくと、彼女は戸惑いもせずにテニス部の部室であろう場所に入っていった。…うん?そういや今さらだけどなんでテニス部?文芸部は?あっ、文芸部の顧問がテニス部の顧問もやってるとか?
とにかく綾香ちゃんを放置するわけにはいかないので、私も部室に入らせていただいた。やめときゃ良かったなんてもう言っても遅かったのだ。

「綾香ちゃん?ねぇ文芸部は…」
「名前ちゃん、柳くんに名前言って!」
「え?あ、名字名前です…?」
「名字名前…。ああ、確かにファンクラブには入っていないようだな」
「あ、はあ…」

一人状況に着いていけない中、私はファンクラブってマジであるのかよ、と衝撃を受けていた。だってそんなの夢小説にしか出てこないと思うじゃん…。あと初めてテニスキャラと喋っちゃったよ…。何この地味な感動。柳くんテライケメン。

「では一先ず入部届けは預けてくれ。記入は名前だけでいい」
「あ、はい」
「…よし、確かに預かった。明日また放課後に来てくれ」
「はぁい。行こっ名前ちゃん」
「え?うん…?失礼します…」

一向に話がわからないまま部室を後にした。一体今のは何だったんだ。私の入部届け柳くんとこ行っちゃったよ。どういうことなの。

「ねぇ綾香ちゃん、私文芸部に…」
「文芸部?用があるの?それじゃあここでお別れになっちゃうね」
「あ、うん…」
「名前ちゃん、明日頑張ろうね!二人とも選ばれるといいねっ!一緒にがんばろ!」
「…そうだね、頑張ろう!」
「うんっ!それじゃあまた明日ねー!」
「また明日〜」

ぎゅっと手を握られ、綾香ちゃんのかわいさにきゅんきゅんしているうちに一人になっていた。…え、何。私明日何を頑張ればいいの…。終始頭にハテナを浮かべていた私は、とりあえず当初の目的である文芸部に向かった。二人なら何か知ってるかもしれないし。
青ざめるまで、あと3分。


(入部届けを出しました)
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