目が覚めると、知らないベッドで寝ていた。


ああどうやら昨日起きたことは現実だったらしい。もう過ぎてしまったことは仕方がない。というかどうしようもない。私はこの世界で生きていくしかないのだ。いつまでもうだうだ言ってても仕方がないし、この世界から帰る方法を探しつつ生活していくしかないじゃないか。1日置いてすっかり諦めがついたのか、私の心は昨日ほどは重くなかった。
しかし泣き張らした瞼は重い。時計を見れば時刻はもう10時頃を指していて、仕方ないと顔を洗いに行くとした。

それにしても不思議だ。ここは知らない家のはずなのに、どこに何があってどうすれば動くのかが手に取るようにわかる。体が覚えているんだろうか?真っ直ぐに洗面所に行き顔を洗った私は、しかしこの顔可愛いなぁ羨ましい、とまだどこか他人事だった。

顔を洗ってすっきりした私は、とりあえず暇なので家を観察してみることにした。こちらの私は随分と女の子らしい人物だったようだ。部屋はシンプルかつ可愛らしい雰囲気で、服もガーリーなものばかり。美少女だから確かに似合うけれど、いつもカジュアルなものばかり着ていた私には少し可愛すぎるんじゃないかと戸惑った。いやでも今の私は可愛いし、まあそのうち慣れるだろう。なんか今のナルシストみたいで嫌だな。あくまで今の体は私のじゃなくて美少女ちゃんの体だから、そこんとこ勘違いしてもらっては困る。…そもそも私は誰に言い訳しているんだ。

部屋を見ていると、机に学校の予定表が挟まっているのが見えた。名字名前というプリントに記された名前が目に入る。私と同じ名前だ。なんとも奇妙な感覚。
そういや私は中3みたいだが、いつから学校へ行けばいいのだろう。始業式を確認してから携帯を開いて日付を見る。
…っておい、明日ってマジか!もっと余裕で春休みもう少し満喫できるかと思ってた!どうしよう、いろいろと心の準備が!

焦りに焦った私は何を思ったのかパソコンを開き、インターネットのトップページを見つめていた。
まずは落ち着くことが第一だよね。だから私はネットサーフィンでもしていつものだらけた私に戻ることにしたのだ。
…結果、2時間くらいかかった(純粋に楽しんでいたとも言う)。どうやらこちらとあちらの大型検索サービスや動画サイト、果てやイラスト投稿サイトまでだいたい同じようだった。イラストサイトには一切テニプリ関連のものは無かったけれども。つらい。まあ他の漫画やアニメは有るようなので安心だ。少しだけ私の世界とは違うアニメを期待していたのでそこは残念だけど。

そういやお腹すいたなとリビングのカウンターに置いてあったパンをかじりながら、ふと思う。いくらなんでもこの家生活感有りすぎじゃあないか。私がイレギュラーな存在としてこちらに来たにしては、あまりにも前にいた存在を意識せずにはいられない。もしかして、私がこちらに来たんじゃなくて、こちらの私と入れ替わったのだろうか。そうだとしたら今向こうの私になっているこちらの私が不憫すぎる。気付いたらオタクだったなんて…、私より悲惨じゃないか。

まあわからないことを考えても仕方ないか、と冷蔵庫の中身を確認しながら、今日はひとまず買い出しに行くことに決めた。ついでに漫画も買って帰ろう。


「私本当にいつもと変わらんな…」

買い出しを終え、近くに古本屋があったので目ぼしいものをいくつか購入し家に帰った。駅から近くてさらに学校も歩いてすぐだなんて最高の立地じゃないか。こちらの私がハイスペックすぎて何も言えない。棚ぼたありがとうございます。そして帰宅した私は部屋に戻り、ごろごろしながら漫画を読み耽っていた。いやいくらなんでも落ち着きすぎだと思う。本当に明日から学校なのに、こんなんでいいんだろうか。3秒くらい考えてみたが、やっぱり私らしくが一番いいよねという結論に至り、結局その日は漫画を読んで終わった。夜更かししなかっただけ私は成長していると思う。

しかしなんやかんやで明日から立海か。もし漫画に出てくる時代と何も関係ない時だったらどうしよう、と少しだけ緊張しながら瞼を閉じるのだった。


(あまり違いは無いようです)
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