ケットシー
我輩は猫又。哀れな彼女を眺める只の傍観者だ。いやいや、傍観猫の間違いか。
どうやらは彼女は悪魔落ちしてしまったらしい。今日から彼女は僕等の仲間だ。ようこそ愉しい悪魔的生活へ!
しかし哀れな彼女は生前の記憶どころか悪魔落ちの際の記憶すら覚えていないらしい。自分の生まれ育った家をきょろりきょろりと初めて見るような目付きで見渡す姿は何とも滑稽だった。我輩、腹を抱えて笑い転げそうになるのを我慢するので精一杯。
これは失敬。我慢したとはいえ同族を笑ったのは失礼だ、代わりに悪魔落ちした彼女が手に入れた能力について教えてやった。つまり、覚えていないのであれば思い出せばいい。そういう事だ、単純だろう?

思い出巡りと可愛らしい響きでも、蓋を開けてみればなんとまあ!彼女にとって思い出すという事はそれはそれは残酷な事だろう。彼女は全てを知り、絶望する。そう、彼女は悪魔の甘い囁きを受け入れ己を対価に桃源郷を求めたのだから。無力な彼女は桃源郷―xanadu―を手に入れる事が出来るのか。残念、我輩のお喋りは此処で終わりだ。真実は君の目で確かめるといいだろう。