廉造の胸元が濡れたTシャツを剥ぎ取って、以前来た際に置いていったTシャツを手渡す。
童貞らしく恥ずかしそうに背中を向けていそいそとシャツに腕を通す廉造を見ながら、ふと誕生日プレゼントにと買った紙袋をずっと持っていた事に気付いた。
恥ずかしさはあるものの今年の彼の誕生日は今日だけなのだし、今渡してしまおう。

「廉造」

「ちゃっ、ちゃいます!別に緊張なんかしてません!!」

「はい、誕生日プレゼント」

つんつんと肩をつつくと面白い位に身体を跳ねさせた廉造の腹に腕を回し胸元に紙袋を押し付けた。
彼が紙袋を受け取るのを確認すると後ろから抱き付く。分かりやすく赤面しながらがさがさと袋の中身を取り出して包装を解いていく廉造に初だなぁと改めて考え直す。胸を押し付ける度に林檎みたいになるのが面白くてついついやってしまう。

「……ヘッドホン?」

包装紙の下から出てきたのは最近新しく出たばかりの黒いヘッドホン。音楽が好きで勉強するにも私のバイト終わりを待つにもいつでもイヤホンをしていたのを見て思い付いた品だった。
塾に通う生徒は皆バイトはしていないと聞いたし、これならプレゼント被りはしないだろう。

「廉造、いつも音楽聴いてるじゃない?イヤホンは音漏れとかするし…ほら、寮のルームメイトに迷惑掛けないように」

「おおきに、名前ちゃん!大事にするわぁ」

きゃっきゃっと無邪気に喜んでは頭に早速付けている廉造の頭を撫でてやりながら微笑む。
先程は冗談で言ってみたものの時折お前は本当に高校生かと言いたくなる程、無性に可愛い一面を見せる廉造に本当に嫁になればいいのにと考えている辺り、私も相当末期なのかもしれない。

「廉造、記念撮影」

「えっ。でも今まで写メ嫌がってたやんか」

「絶対見せびらかすと思ってたから。ほら、寄って」

携帯を取り出してカメラを起動させた私に、廉造は驚いた表情を浮かべつつもヘッドホンを付けた儘私に顔を寄せる。
パシャリとシャッターを押すとカメラに向かって微笑む私達が画面に映っている。廉造の携帯へと送った後、写メをそっと待ち受けに設定すれば恋人同士になった気分になって胸の奥がじんわりと暖まるのを感じた。
廉造は寮に帰らなければいけないので玄関まで見送りに行った際、坊に電話せなと呟きながら開かれた廉造の携帯の待ち受けが私と同じものになっているのが見えてしまい、思わず笑ってしまった。
何だか私達結構上手くやっていけるんじゃないかな、廉造からの別れ際の抱擁を甘受しながら何となくそう思った。

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
六巻の表紙の志摩くんのヘッドホンが夢主からの贈り物だったらいいなと思って書きました。

「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -