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・米農家ifストーリー
・夢主が連載最終話の容姿


私は今、夜も更けた旧男子寮の二階の角部屋で正座をしていた。この部屋は物置として使われていたらしくベッドや机も無いただの空き部屋。カーテンも無くうっすらと月の光が室内に入り込んで来る。
階段がある方の壁の近くに真っ先に陣取った。これならもし誰かが私達を脅かそうとして階段を上がってきたとしても直ぐに気付ける。

事の発端は奥村くんの「夏といったらホラーだよな」の一言だった。
其れから京都の三人組、杜山さん、私、奥村くんに杜山さんと私の保護者役として奥村先生の七人が集められた。私はどちらかと言うと怖いの苦手なのだが、奥村くんの輝く瞳と熱意に負けてしまった。
最初は肝試しだったのだが夜中に外を出歩くのは危険だと勝呂くんと奥村先生がNGを出し、結局奥村兄弟の住居である旧男子寮の一角を拝借して百物語をする事になった。

真っ暗な室内でぼんやりと燃える蝋燭を囲んで私の右隣から勝呂くん、志摩くん、三輪くん、杜山さん、奥村先生が座り、私の左隣には奥村くんがにこにこと上機嫌で胡座を掻いている。しかしこの位置は少し居づらい。マイペースな奥村くんと少々細かい性格の勝呂くんは何かと衝突しやすい。その間に挟まれるのは些か辛い。何事も有りませんように。

「では手短に。兄さん、この人数とこんな時間じゃ百物語なんて無理だから、一周して解散でいいよね?」

「おー。あんまり遅ぇといけないしな、これ終わったら何か作ってやるよ」

念を押して確認する弟とへらりと笑いながら頷く兄。その光景を全員が溜め息や苦笑混じりに見つめる。
くい、と蝋燭の光を反射させた眼鏡を上げて奥村先生が先陣を切って話し始める。

「僕が小学校の頃でした。体調が悪くて保健室で休ませてもらってる時、用事が出来て養護教諭の方が出て行ったんです。そしたら、ベッド脇の窓からひょっこり男の子が出て来て」

「おぉっ、何かすげーな雪男!」

「兄さん煩い。その男の子と少し話しをしていて…気付いたら男の子が居なくなってました。具合は悪かったですが会話した記憶もあったので夢とは言い難くて…。それに僕、眼鏡を外していたのに男の子をはっきりと認識出来ていたんです。窓の外はベランダもありませんし保健室は二階にありますし、あれは何だったのか…」

「おぉー、奥村先生結構ベタな話のチョイスやねぇ」

「ベタですがこれでも実体験なんですよ」

「すごい!雪ちゃんすごいよ!」

話を終えた奥村先生に志摩くんや杜山さんが拍手をする。奥村くんもほーとかへぇなんて相槌を打ちながら楽しそうに尻尾を揺らしている。そんな奥村くんを見て勝呂くんが本日数度目の溜め息を吐くのだった。



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