西正十字のとある廃墟には一匹の悪魔が棲みついている。
変わった特性を持ち他の悪魔とは異なったタイプの魔障を負わせる。他の支部からはそういった悪魔の出現の把握はされておらず、新種の悪魔として見なし情報収集の為に数人の祓魔師が西十字へと派遣された。その悪魔の致死節は当然明らかになっていないし、魔障は怪我をするものではないから自然と派遣される祓魔師は絞られていく。そうして結局派遣されたのはシュラさんと雪男と私だった。

その悪魔との戦闘中に廃墟のコンクリート片に足を取られ転倒した私に当然悪魔は狙いを定める。つんざくような高音の声を使った攻撃にこれはもろに魔障を食らう――そう覚悟を決めた瞬間目の前が真っ暗になって温かい何かが耳を塞ぐ。
私への攻撃を雪男が盾になって身代わりになってくれている間に私の使い魔である雷獣が雷撃を放って悪魔を蹴散らす。わざと軌道を逸らしたから当たってはいない筈…!頭を押さえ呻く雪男は戦闘にはもう使えないし、反撃を食らった悪魔はこちらを警戒して此方に近付いてこない。撤退を余儀なくされ雪男を脇に抱えてシュラさんと共に廃墟を後にした。

脇に抱えている間に雪男が受けた魔障は身体を侵食し、私達の職場である日本支部に着いた時には殆ど小脇に抱えていたものの体重は感じなくなっていた。

「おーおー、マジで退化すんのな」

「……」

「ごめん…雪男、私のせいで、」

あの悪魔の魔障の効果は退化。高音を使った音波に悪魔の力が加わり、どの年の人間が魔障を食らっても必ず三歳か四歳位の年齢に退化してしまう。噂によるとあの悪魔、元は人間で子供を失った悲しみから悪魔堕ちし理性を失った今も我が子を探してあの廃墟をうろついているのだとか。
私の腕の中で不満げにシュラさんを睨む雪男の頭を撫でながら取り敢えず医工騎士に見てもらう為医務室に向かった。





「良かったねぇ雪男。二、三日で戻るってさ」

「それはいいですけど…なんでぼくはなまえさんのいえにいなきゃいけないんですかっ!?」

「だって燐くんに見られたら絶対笑われるでしょ?」

「……」

「考えてなかったんだね」

チキンライスを作りながら肩越しに振り返るとソファの上で不貞腐れる小さな雪男が居て苦笑いが浮かぶ。
医工騎士の診断結果は日が経てば治るだろうとの事。小さくなった雪男は危なっかしいので私が預かる事になり燐くんには雪男は急な任務が入った、二・三日は戻れない、携帯の電波が届かない為電話は繋がらないと説明しておいた。まあ二つは嘘をついていない。得体の知れない悪魔の魔障を受けた雪男は悪魔研究家の格好の餌食になり、血液検査からCT、レントゲン、MRIまでやり何か変化があれば報告するようにと言われている。

「なまえさん、おなかすきました」

「はいはい。もうちょっとで出来るからねぇ」

バターをひいたフライパンに卵を流し固まった所でフライパンごとひっくり返してチキンライスの上に被せる。面倒臭いのでオムライスを作る時はいつもこうだ。卵にケチャップで「ゆきおラブ」と書いて周りをハートでデコってやり、スプーンと一緒に食卓に出してやると雪男の顔があからさまに嫌そうに歪んだ。子供のこいつマジ素直すぎ。

「雪男くーん、美味しいぃ?」

「…むぅ…」

卵をまた焼くのが面倒でチキンライスだけを皿によそい適当に用意したオニオンスープをマグカップに注いで出しながら嫌みったらしく聞いてみるも食べるのに夢中で全く聞いてない。なまえ寂しい、チキンライスを咀嚼しながらテレビのリモコンに手を伸ばす。丁度子供が好む国民的キャラクターが出てくるアニメの時間だったらしい、かなり久しぶりだ懐かしいなーなんて思ってたら雪男の視線がオムライスからテレビに移行していた。うわあ、ほんとに子供なんだなあ。じーっと食い入るようにテレビを見つめる雪男は全くご飯を食べなくなったので仕方なくレコーダーに未開封のDVD突っ込んで録画してやることにした。テレビを消したら今いい所とか僕が見てたのにとかわーぎゃー喚きだした。

「今録画してる今飯中後で見ろ」

句読点を一切付けず淡々と述べるとハッとしたような顔をして再びオムライスを食べ始めた。
中途半端に記憶があるだけにお互いやりづらいなあ、スープを飲みながらのんびりとそう考えた。

「じゃあ風呂ね」

「ねむい…」

「馬鹿言うなよーアニメ見るんでしょ?はい雪男ちゃーんちゃぽちゃぽしましょうねぇー」

「うるさいっ!」

ねむいと駄々を捏ねる雪男を強引に抱えて脱衣所で服を剥いていく。因みに服は私の甥っ子のを借りた。叔母も祓魔師だから話が早く通じて助かる。
三歳児に一人で風呂を任せる訳にはいかないので恥を忍んで私も裸になる。裸に剥かれもじもじしていた雪男はいきなり脱ぎだした私にぎょっとした顔をして終いには逃げ出そうとしていた。

「いいじゃん裸くらい」

「いいわけあるか!!」

「暴れない暴れない」

「おぼえてろよ…!」

口調が荒い。もう雪男ってば腹黒さんなんだからー。
マットを敷き胡座を掻いて座り膝の上に雪男を乗せる。ぬるめのお湯をぶっかけて頭と身体を満遍なく洗い回してやった。
散々弄くり回して楽しんで、風呂から上がって二人でアニメ見てベッドで添い寝して寝た。これは明日も色々遊べるねやっふー。……なんて思っていた時期が私にもありました。

「……アレ…?」

翌朝。目を覚ましたら雪男に押し倒されていた。
床に散らばる甥っ子の服、目の前には裸の雪男。あれ、これ、もしかして私終了のお知らせ?

「おはようございます」

「やあやあ、いい朝だね。こういう日は二度寝を決め込みたいんだが」

「昨日は有難う御座いました」

「ははは、可愛い部下の面倒は見てやるものさ」

「ええ。とても世話になったのでたっぷり御礼をしようと思って」

「あー私今日は朝から任務がー…」

「逃げられると思うなよ」

今日の結論:部下を虐めるのは程々にしましょう。

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AZ様、リクエスト有難う御座いました!
ええ、この後は御礼と称したお仕置きタイムです。みょうじなまえさんにはスペシャルなお仕置きを用意しましたー!それではいきましょう、おっ仕置っきターイム(ぴこーん☆)ですね分かりま……あれ?(笑)
訳分からん設定思い付く→一話じゃ説明しきれない→なら数話→気に入ってちょこちょこ書く このループのせいで拙宅には連載ものやら続きものがごろごろ転がっているわけですが。短いのも書きたいです…スマートな文章を書く才能を下さい。
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