稲光に少女は悲鳴こそあげなかったもののその小さな体躯を縮こませ抱えていた膝に目元を押し当てる仕草をした。雷が怖くない子供はそうそう居ない、幼い頃雷雨の夜に弟と二人で手を握りあって眠った日を何となく思い出した。流石にこの歳になれば雷は怖くはない、たまにベタなギャグ漫画で雷が電流が流れ骨が見えているページを読むと生身に直撃したら、なんて真っ黒焦げになった自分を想像はしたりもするけれど。

「俺も、お前と一緒だ」

傘に当たる雨の音は存外に煩くて、ぽつりと漏らした声は少女には届かないしれないと一瞬ひやりとしたのは杞憂だったらしい。ぱっと顔を上げた少女が真っ直ぐに自分を見つめてきたので声は届いたのだと安堵する。

「帰らねえといけねえなら送るから。ずっとこんな所に居っと風邪引くし、取り敢えずうちに来いよ」

ちょっと怖え弟が居っけど、話せば分かる奴だから。
そう言って少女に手を差し伸べれば少女の瞳に困惑の色が広がる。それはそうだ、知らない人にはついて行っちゃいけませんと自分も幼稚園の頃保育士から何度も言われていたのをぼんやりと思い出す。別に取って食う気はねえんだ、ただ何となく分かった。帰る家があってもお前は孤独なのだと。小さい頃から化物だなんだと罵られ疎外されずっと一人だった俺にお前の姿が重なる、俺と同じ思いはさせたくない。だから手を貸してやりたい。
少女はふう、と息を吐き出しておずおずと俺の手に自分のを重ねてきた。雨で冷えた俺の手に確かに小さな熱が伝わってくる。遠くでドォン、と音を立てる雷に俺の手を握る力が一瞬強まった。

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