景色が流れる窓の外を眺めながら混雑している人の群れに混ざる。私服の中学生やら高校生が楽しそうに話しているのを見て漸く季節が夏の中盤に差し掛かっている事に気付いた。
大きいカーブに差し掛かったからか、緩く片側に重力が傾き思わず吊革に掴まろうと手を伸ばすも隣からにゅっと腕が伸びてきて控え目に鞄を引っ張って私の身体を水平に保ってくれる。

「あ、有難う御座います…」

「……ん、」

鞄を引っ張ってくれたのは、勿論先程俺も一緒に買い物に行くと衝撃発言をぶちまかしてくれた奥村さんである。人混みをちらちらと見ては落ち着かなそうに目を伏せて車内広告をじっと睨み付けている。
車内アナウンスが停車駅を読み上げる。丁度降りる駅だったので奥村さんの袖を引っ張って降りる旨を伝える。乗客のほとんどもこの駅で降りるらしく人々の視線が出入口の扉に集中する。はぐれないようにと引っ張っていた奥村さんの上着をきゅ、と握ると同時に電車が停まり、扉が電子音と共に開いた。
一気に放出するかのように人が電車から降りていく。流れに沿うように歩いてエスカレーターに乗ろうとするも混雑しすぎてなかなか前に進まない。四方から人に押され上着を掴んでいた手も徐々に離れていく。この儘はぐれたら――どうすればいいか分からず押されるが儘に進んでいると。

「ひゃ…っ!?」

ぷらん、と掴まれるが儘だった奥村さんの手が急に私の手を握ったかと思うと勢い良く横に引っ張られエスカレーター待ちの人々の波からあれよあれよという間に引き摺り出される。
ホームの端まで連れて来られて、改めて人の多さに驚いた。これは人が減るまで待っていた方が良いだろう。

「……」

「……」

落ち着いてやっと気付く。手、握られてたんだった。
気まずくて繋がった手を離す事が出来ず沈黙が漂う中、時間はただただ穏やかに流れていく。

「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -