目の前がパッと明るくなった事で意識が強制的に眠りから覚醒へとシフトしていく。奥村さんから雪男さん呼びになってから数日、あまり以前と変わらない日々を過ごしている。夕飯の下拵えを終えてベッドでごろごろしていたらいつの間にか寝てしまったようだ。
洗濯物の取り込みは家主に任せるとしても料理だけはやらねばならない。が、一度昼寝した身としては起き上がりたくのが本音。うう、と唸ってタオルケットに顔を埋めると頭や肩を撫でる心地よい温もり。あー、それは反則だー眠くなるー。
「良ければ抱き締めてもいいですか?」
穏やかで、優しい声色。
顔を僅かに上へ向ければ頭に描いた通りの表情を浮かべている雪男さん。つられてしまったのか私の口元にも笑みが浮かぶ。
「調子に乗らないで下さい」
「すみません」
立場も以前とあまり変わりはない。しょげて項垂れながら洗濯物を取り込みに行った雪男さんを余所に私は漸くベッドから起き上がったのであった。