使い古しのタオルを使ってペットボトルホルダーを作る事になったので、箪笥の肥やしになっていたピンクの水玉模様のを使った。これは昔しーちゃんとお揃いのものが欲しいと駄々を捏ねた私に母親が私としーちゃんに買ってくれたお揃いの模様のタオルである。因みにしーちゃんは緑。
出来上がったホルダーに早速自販機で買ったペットボトルを入れて持ち歩いてみる。思い入れのあるタオルだけに「気合い入れすぎよ」と家庭科の先生に笑われる位に集中してしまった。初めて作ったにしては上手に出来たと思う。
自販機から教室へ上機嫌で鼻歌混じりに歩いていると、後ろから名前を呼ばれた。

「そのチャラい声は……ずばり高尾くんだね!」

「ひっで!!俺別にチャラくねーし!」

今日も今日とて凛々しいお顔の高尾くんだった。珍しく隣にしーちゃんが居らず一人で購買のビニール袋を下げている。今日はお弁当無しの日か……妹ちゃんと喧嘩でもしたのだろうか。

「ん?それ何?」

「家庭科の時間に作ったペットボトルホルダー!可愛いでしょ?」

「や、可愛いけどさ…なんかそのタオル明らかに使い込んでますーって感じなんだけど」

「数あるタオルの中で世界一思い入れのあるタオルを捧げたんだよ!」

「感情込め過ぎじゃね!?」

家庭科の先生みたいな苦笑を浮かべる高尾くんに私は笑顔で返す。タオルとしての役目をほぼ終えて後は捨てられるだけなんて嫌で、汚くてもボロでもいいから私の手で作り替えて可能な限り手元に置いておきたい。しーちゃんはこんなタオル、もう忘れちゃってるかもしれないけど。それでも私にとっては大切な物だから。

「いいのっ!」

ただの自己満足だとしても誰かにこの気持ちを押し付けたいわけじゃないから、多少は目を瞑って欲しい。

家庭科の授業から一週間。
授業もHRも終えさっさと帰ってご飯を作ろうと昇降口を出て校門に向かって歩いていると、ドアを開け放した体育館からしーちゃんが出て来るのを見つけた。ぱちっと目が合ったので小さく手を振ってみると、ずんずんと大きな歩幅を使って此方に歩み寄ってきた。取り敢えず後ろと左右を見て対象が他にいないのを確認し標的は私に違いない事を確信する。何だろう、何かしたっけか……あ、この前携帯借りた時に付き合いでやってるって言ってたツイッターのプロフィールを「キセキ戦隊バスケンジャー☆ミドリマン☆参上<(`・ω・´)/ナノダヨ!」にした事かな。あれ結構自信作だったのにな…。

「どうしたの?」

「来い」

「ふぁい」

拒否する間もなく手を引かれ体育館に連れて行かれた。体育館に上がってしーちゃんはその儘何処かに行ってしまい、知らない人達が沢山居る所に連れて来られ委縮してしまう。せめて、せめて高尾くんが居てくれたら……!
何故連れて来られたのか理解出来ない儘おろおろしているとしーちゃんが小さな紙袋を持って戻って来て、勢い良く私に突き出してきた。その際にいただいた「一人で勝手な事をするな」という小言に首を傾けつつ紙袋を覗いて、一瞬息が出来なくなった。綺麗に手入れをされた緑の水玉模様のタオルがこれまた綺麗に畳まれて鎮座していたからだった。

「…え、」

しーちゃんの家には何回も行っている。でも、このタオルを見掛けた事は一度もなかった。だからもう捨ててたのだと思った。とうの昔に忘れてしまったのだと、だからこんな綺麗な状態で、このタイミングで出されるなんて思いもしなくて。

「それもホルダーにするのだよ」

「えっ」

「今度は…ちゃんと使うのだよ」

「ええっ」

「不満か」

「だってこれ、凄く綺麗」

「……使っていないからな」

「……もう捨てたんだと思ってた」

「今度はちゃんと使うと言っただろう」

「そしたらボロボロになっちゃうよ…こんなに綺麗な儘なのに…」

「それなら、」

紙袋を握った儘うつ向く私の頭にテーピングを外した手が乗せられた。髪を撫でる事も掻き回す事もせずただ置いた儘。私は顔を上げられずにしーちゃんのバスケシューズを見つめる。

「また揃いで買えばいい」

やっぱりこの人、私に甘い。
降って来た言葉が胸に染みていくのを感じながら私は小さく頷いたのだった。

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