レベルの低い野生ポケモンとトレーナーを難なく蹴散らしながら19番道路を抜け、ヒオウギと19番道路を繋ぐ建物に入れば見慣れぬ巨大な電光掲示板と風景を映し出すモニターがあった。
細長い電光掲示板からは絶えず周辺地帯の天気や町の紹介文が流れる。その中の一文に私の意識が持って行かれる。

「“ヒオウギのトレーナーズスクールは温かみのある学校です”……」

腰にベルトについた三つのモンスターボールが私の声に呼応するかのようにかたかたと音を立てて揺れる。ボールをゆっくりと撫でて宥めてやりながら一歩一歩を踏みしめて関所を抜ける。
高い山間部の中にあるヒオウギシティに入った途端、ふわりと花の香りが全身を包み込む。成る程、確かに"始まり"には適していそうな環境だ。

装備は既にサンギタウンのフレンドリーショップで揃えたものの、道中で体力を多少削られていたので一度ポケモンセンターに寄り先頭のポケモンをグレイシアからフワライドへと並べかえる。そしてポケモンセンターの隣という分かりやすすぎる扉を開けば。

「……」

バトルフィールドどころか玄関とロッカーが広がってました。
流石ジム兼トレーナーズスクール…というよりスクールの方が全面に押し出されている気がする。

「あら…もしかして挑戦者かしら?チェレン先生なら今外で実践の監督をしてらっしゃるわよ」

玄関付近でロッカーの整理をしていたスクールの事務と思しき女性に声を掛けられた。奥にどうぞ、と言われ土足の儘学校の中を歩く。座学と実践を兼ねてなのか教室と外のグラウンドが一直線に繋がっている。
黒板に書かれた状態異常の効果と教室にちらほら残っている生徒の姿を眺めつつ教室の右を抜けて廊下に出ると、直ぐにジムの彫像が目に入って来る。
……うん、非常口も兼ねているジムの入口を見るのは初めてだ。

スクールの先生って大変なんだなあ、と考えながら扉を開くと、スクールくらいの広さのグラウンドにバトルフィールドが二つ置かれそれぞれに二人の生徒らしき子供がバトルの支度をしていて、その更に奥にある朝礼台には私の目的の人物らしき男性が此方を見下ろしている。

「ようこそ、ヒオウギジムへ!まずは私達を倒してからよ!」

奥のバトルフィールドにいる女の子が声をあげるやいなや、手前のフィールドにいた男の子も緊張した面持ちでボールを構えてくる。きっとこの子は公式な対人戦は初めてなのだろうな、と考えながら手前のバトルフィールドへと足を踏み入れた。


「ふひひ!ミニスカたんの生足ぺろぺろ」

「まじやめろ」

戦力の差が開きすぎている為か手応えのないあっさりとした二連戦を終え、ミニスカちゃんとのバトルを担当したジュペッタが低い体躯を更に低くさせてミニスカちゃんのスカートの中を覗こうとしていたので取り敢えず踏んでおいた。
エスエムキタコレ!と喜ぶジュペッタをさっさとボールに戻すと改めて朝礼台へと視線を向ける。
白い朝礼台が太陽に反射して何だか彼自身も眩しく見える。それでも分かる、二人と戦っている最中値踏みをするような目で私を見ていた事。そしてどうやら私は彼の中の『強者』の基準を満たしたらしい。太陽の眩しさの中で私を見下ろす彼は確かに笑っていた。
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