ぴりりと辺りに緊張感が走った。目が合ったその瞬間、それは突如に始まる。
数メートル離れた先にいる短パン姿の男の子もモンスターボール片手にぐっと眉に皺を寄せている。
ポケモンバトルの中でも一番最初のポケモンを互いに出し合うこの瞬間が一番好きなのかもしれない。青々と野草が生える草むらにモンスターボールを投げれば中からニタリ、口元に緩やかな弧を描いたぬいぐるみのような外見のジュペッタが現れる。
対して短パン男子がくり出してきたのはシママ。いいなあ、イッシュ地方のポケモン欲しいなあ。
シンオウから来たばかりで見たこともないイッシュのポケモンに新鮮な気分を味わっている間にもジュペッタの特性であるおみとおしが発動した。

「ジュペッタ、相手が持っている道具を教えて!」

カッとジュペッタの妖しげな瞳が見開かれシママと短パン男子が思わず後退る。特性おみとおしは相手のポケモンが持っている道具が分かる。これで此方の戦略の幅が広がり、バトルの主導権を握りやすくなる。おみとおしによりシママが持っている道具を見たのかフ、とジュペッタが目を伏せる。
そして、私にしか聞こえない声がバトルの場に響き渡る。

「ピンク」

「……え?ピンクの、何?」

ピンク?ピンクが付く名前の道具、あっただろうか。イッシュ限定の道具だろうか。
首を傾ける私に向かって顔を向けたジュペッタのニタリ顔にはちょっぴり悪戯心を含んでいた。

「今日の主の下着はピンクである」

お前ってやつは!
思わず未使用のモンスターボールを投げ付ければ袖が余ったような手でバシンと打ち返された。この野郎。

「パンツの色がピンクとか、そういう下らない事おみとおししなくていいから!!」

「フヒヒ、サーセン」

思わず足を擦り寄せ内股になってしまう。というか言っちゃったよ。私のパンツおみとおしされた事口に出しちゃったよ。ほら見ろ、短パン男子が顔真っ赤にしちゃってるじゃないか!
そんな事には我関せずというかのようにジュペッタはケラケラ笑いながら草を千切っては宙に放り投げている。

「うわああんグレイシア交代いいいい」

「うるさいだまれぽけちゃんねらー」

「グレ氏のお仕置きキタコレ!」

私が放り投げたモンスターボールから出てきたグレイシアが真っ直ぐにジュペッタにとびげりを食らわしていた。もう嫌だこいつ、私暫くお外歩けない。
っていうかグレイシア、貴方とびげりなんて使えないでしょ。

「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -