「普通科の名字名前と申します。以後宜しくお願いします」

正十字学園の女子寮。勉強机とクローゼット付きのロフトが両壁に二つずつ並んだこの四人部屋が今日から私の住居となる。
荷物の整理を終えると皆で部屋の真ん中に集まり各々自己紹介をする。それから話し合ってゴミ出しのローテーションの仕方や部屋のリーダーを決めた。
皆優しそうでおっとりしていてとてもいい子達で良かった。そう思いながら一階の自販機でオレンジとリンゴのパックジュースを買い、廊下を進む。同じ階のとある一室をノックして扉を開き、私はお目当ての人物へと走り寄った。

「お疲れ様です、出雲様!朴さん!」

私と同じ四人部屋の窓際で談笑していた二人の少女が此方を向いた。どうやら残りはまだ寮に着いていないらしい。山積みになった儘放ったらかしにされている段ボールの山を眺めながら私は二人に近寄る。

「お疲れ様、名前ちゃん」

細い目を更に細めて笑うのは朴朔子さん。同じ中学からこの正十字学園に来た人だ。B型特有のマイペースな人だが、気分屋でも攻撃的でもない。優しい人だと思う。
いえいえ、と笑いつつ朴さんの隣に立つ少女を見遣る。目が合った途端釣り上がる眼にああ怒られるのかと思うと胸がきゅうと締め付けられ、自然と頬が紅潮していく。

「遅い!今まで何してたのよ!」

「ふぁあっ!私服姿の出雲様からの叱咤…!此処は天国!?楽園!?」




「部屋のリーダーとか面倒くさい。名前、アンタやってよ」

「そうしたいのは山々なのですが塾ありますし。その代わりゴミ出しなら毎日でも行きますよ!」

二人は相変わらず窓際で外の景色を眺めている。出雲様がリンゴ、朴さんがオレンジ。果物の匂いを感じながら私は明日の入学式の準備をしている。朴さんのもやれとご命令されたのだが、朴さんが「私は大丈夫だから」と言われたので出雲様の鞄に筆箱や入学式のしおりを詰め込んでいく。
配布された時間割を机の傍の壁に貼り、机の上に出しっ放しにされていた教材から明日の授業の分を引き抜き残りを本棚に詰めて行く。
ジュースを飲みながら寮生の心得、と書かれた寮の規則を見ながら面倒そうに呟く出雲様に作業する手を止めて私は眉を下げた。
部屋のリーダーの役割は自分の部屋の寮生の点呼や連絡事項などの伝達、洗濯や掃除の指示など。私が担えればいいのだが、祓魔塾は学園の授業が終わってから行われる。合宿や実戦訓練などもあると聞いたので、リーダーにはなれない。

「塾って、どれくらい人がはいるのかな…?」

「大丈夫、朴は私が守るから!」

「朴さんを守る出雲様は、私が守りますから!」

「余計なお世話よバカ。あーあ、お腹空いた。朴も空いたよね?」

不安気に呟く朴さんに薄いカーディガンを羽織った出雲様がきゅ、と両手を握る。出雲様のデレ最高!そう思いながら鞄のファスナーを閉め机の横に置いた。
わざとらしく腹を撫でる出雲様にメロンパンで良いですか?そう聞くと朴の分もね、と返事が来た。
追加あったらメール下さいとだけ伝えて財布を取りに部屋を出ると丁度この部屋に向かって歩いて来る女の子二人とすれ違った。何だか気が強そうだ、出雲様と喧嘩にならないといいけど。
そう思いながらワックスでピカピカになった廊下をスリッパを鳴らして駆け抜けていった。

「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -