学校の授業が終わった後、集合時間に合わせて出雲様と朴さんと肩を並べて歩く。二人が楽しそうに会話をする中で私の頭の中は杜山さんの事で一杯で、寧ろパンクしそうだった。
オーバーフロー寸前、打開策無し!
出雲様の一週間分の荷物は鞄二つに及び私物もあるせいで左手に私の鞄、右手に出雲様の重い方の鞄を持って歩いている。無口を貫く私に時折朴さんが心配そうに視線をやるのをあんなのに構わなくていいからと制している出雲様の声が右耳から左耳へと流れていった。

合宿の舞台である旧男子寮は使われなくなってから大分経つようで、見た目は完全に廃墟かお化け屋敷のどちらかだった。集合場所に着いたのは私達が最後だったらしく点呼を終えた奥村先生についてぞろぞろと寮の中へと入って行く中、出雲様はまるでいつもそうやっているかのように自分が持っていた鞄を杜山さんに渡して寮の中へと入って行く。嬉しそうににこにこと笑う杜山さんに朴さんが何か話し掛けていたようだが、元より頭がパンク寸前な私にはその会話も、後ろから入って来た奥村くんが喉に何かが引っ掛かっているような表情をしていた事も気付かなかった。


出雲様と出会って祓魔師というものを知ってから、私は基礎という基礎から悪魔祓いについて独学で学んできた。地元はあまり悪魔祓いと縁は無く、大きい図書館に行かなければその実態について学ぶ事が出来なかった。図書館、ネット或いは古本屋。ありとあらゆるものを使って私は予習と言うには些か過ぎる悪魔祓いの勉強を重ねていった。そのお陰か今やっている授業には聞き覚えがあるものばかりで、懐かしいなとかこの問題のは図書館で見たっけなんて小テストの問題を解きながら懐古する余裕があった。
全て解いてしまってはまた出雲様に睨まれてしまうから、適当な箇所を空欄にしてぼんやりと消しゴムで遊んでいると奥村先生から終了を告げられ、裏返しにした皆のテスト用紙を回収していく。
今日の合宿日程の終了を言い渡された皆は頭を冷やしに行ったり風呂に行ったりと様々な行動をとる。出雲様達の後について部屋を出て行った杜山さんを窓硝子越しに見つめながら奥村先生に纏めたテスト用紙を渡すと足早に部屋を出た。

出雲様はフルーツ牛乳を好むから、風呂上がりに持って行こう。そう思って着替えが入った鞄を肩に下げて寮の外にある自動販売機でフルーツ牛乳を買い寮に入ると、目の前を杜山さんと奥村が続けざまに走り過ぎて行った。
首を傾けつつ浴場へと向かって歩き出した瞬間、その目的地である浴場から甲高い悲鳴が聞こえた。この声は出雲様と朴さんだ。
逆流するかのように今度は奥村に続いて浴場へと向かう杜山さんの背中を見て、私は徐ろに踵を返して浴場とは反対方向の階段を上がって行く。
二階で悲鳴を聞いて勝呂達が廊下を覗くのを横目に見つつ更に三階へと上がると、階段の直ぐ傍にある杜山さんと私に宛てがわれた二人部屋へと転がり込んだ。

私が持って来た荷物は出雲様より多い三つ。その内二つは着替えが入ったショルダーバッグに学生鞄、そしてもう一つの荷物であるアタッシュケースへと真っ先に近寄り蓋を開ける。中には小柄の拳銃と投擲型の閃光弾やC濃度の聖水のボトルが入っている。
着替えが入った鞄を下ろして拳銃にサイレンサーを取り付けて弾を装填し、予備の弾をスカートのポケットへと入れる。聖水のボトルを左手に持ち、拳銃を右手に持ってケースの蓋を閉じる。これは非常用だし何より私は実戦経験が無い。出来るだけ使いたくなかったけど…仕方ない、出雲様の緊急事態だ。
部屋を出ると階下から何かが派手に破壊されている音がする。上がってきた方より反対側の階段なら浴場には幾らか近いだろう。
廊下を掛けて下りの階段へと足を掛けた瞬間、真下にある踊り場で何かが蠢くのを感じて目を凝らす。グルルォと濁った咆哮を上げるソレは、先日魔法円・印章術でネイガウス先生が召喚していたような屍系の悪魔だった。

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