廉造もまだお昼は食べていないと言っているので、適当に入ったカフェで日替わりランチメニューを二つ注文する。ランチを注文した人はおかわり自由になっているスープを注いだカップを二つ持って戻って来ると、眉を寄せて首を捻っていた廉造が気付いたように手を叩いた。

「今日、生足や!」

「うん、そうだね」

「何で?めっちゃ嫌がってたやん」

席に座って廉造の前にカップを置くと間髪入れずに足を出している理由を聞かれた。駅で話した時は何も言わなかったから気付いていないのだと思っていたが、どうやら違和感は抱いていたらしい。
カップを傾けてスープを飲みながら私は小さく笑った。



「よく考えたら私がくるみだって気付く物好きは廉造くらいしか居ないなって思ったの」

ランチとして出されたパスタをフォークで絡め取りながら私が吹っ切れる経緯を説明した。もっと自分に自信を持つ事にした事、くるみもまた自分の一部だと受け入れる事。
向かい側でパスタを頬張る廉造は黙って其れを聞いていた。

「改めてそう言われると意識してまうなぁ」

「廉造は雑誌では私の胸より足を見てたの?」

「……っ…」

ドレッシングが掛かったサラダにフォークをさくりと刺しながら問い掛けると、目の前の私と雑誌の私を比べたのか廉造の頬に赤みが差す。恐らく彼は私の胸でも足でも無く、全身を隈無く見ていたのだろう。
分かりやすいね、と肩を竦めてフォークで絡め取った最後の一口を廉造の口元に運ぶ。口を開けるよう促し廉造がフォークを咥えてパスタを食べるのを見て間接キスだねと囁けば彼は大きく咳き込んだのだった。


「ああ…今日そういえば地震あったねぇ。大丈夫だった?」

「大丈夫も何も、俺震源地に居ったらしいで」

「……」

「足有りますから!往生してません!」

ランチを終えて私の部屋に帰って来る。外は暑くて手を繋ぐのすら億劫に感じてしまい、ならばクーラーもある私の部屋ならと早々に帰宅する。私は一人掛けのソファに、廉造はラグの上に座って私を見上げている。膝を組んで廉造の太股をわざとらしく踏めば彼の表情が僅かに強ばった。

「明日塾は?」

「特に無いです」

廉造がそう言って出して来たのは外泊届だった。そういえば付き合い始めてからのお泊まりは始めてだな、と考えながら外泊届の保護者欄に必要事項を書き込んでいく。この作業も毎度お馴染みというか、慣れた作業になりつつあった。

「夕飯の買い物行くついでに寮に出しに行こうか」

「そうですね。…夕飯は何にします?」

「廉造くん、早速だが腕枕をしたまえ」

「人の話聞いてます?」

クーラーの効いた部屋で好きな人に腕枕してもらいながらシエスタとは私はなんて幸せ者なのだろう。幸せをもっと感じていたくて廉造の胸元に手を這わせ廉造お気に入りの足を彼のに絡める。密着した廉造の身体に抱かれながらふわふわとした幸福感に浸って微睡むのは私だけで、私にべったり抱き付かれた廉造は悩みを抱えているらしく深い溜め息を吐くだけだった。

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