夏。雑誌の撮影の為に私達は京都を訪れていた。物好きで思い立ったらすぐ行動、に定評のある上司が最近着物エロに目覚めたらしくそれならチープな創作感漂うものより本格的なものを、とのことで急遽京都にある貸衣装付きのハウススタジオを借りる事になりモデル四人とカメラマン、プロデューサーで数日の撮影旅行に出掛ける事になった。
新幹線で二時間半で行ける距離だというのに初めて足を踏み入れた其処は正十字に劣らず人で溢れかえっていた。日焼け止めを塗るのをすっかり失念していた私は履いてかたグラディエーターの形に足が焼けないかはらはらしつつ今度はバスに揺られてスタジオへと向かった。

東京を出たのが昼前だったのでスタジオに着いた頃にはもうお昼だった。行きに食べた駅弁も美味しかったけれど、やはり何か物足りない。折角京都に来たんだから何か美味しいものでも食べたいなあ。
夕飯の前に一仕事、と茶髪をネットに押し込みいつものボブカットのウィッグを被りながらふと昨夜電話で廉造と話した事を思い出した。確か廉造も塾の授業の一環で京都遠征に行くと言っていなかったか。
下着を清楚な白いレースのものへと着替えつつも視線が持参した鞄へと向いていく。ああ駄目だ、撮影なんだから集中しないと。
仕事の合間を縫って落ち合いあわよくばデート、なんてうかれた乙女のような自分を制しながら鏡の中の「高貴なる御御足」と向き合った。

廉造が通っている塾の実態。
彼が関わっている実習とやらに、これから一般人である私達も巻き込まれる事。
初めての京都で浮かれる中でその事実を身をもって体験する事など知る由も無く、私はただただ無知であった。

「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -