二人で買い物デートに行った時、"泡立ち最高!"と店員手書きのポップが貼られたまるで香水を連想させる可愛いデザインのボディソープのボトルを見つけてしまった。幸いボディソープが切れ掛かっていた、と自分に言い訳をして衝動的にレジへと持って行ってしまった。ショーケースに並ぶ男性ものの香水を見ていた廉造を回収し夕飯の買い物をして、私の部屋へと帰って来るなり今日の戦利品を取り出していく。
廉造のCD、廉造の分のスリッパ、枕と枕カバー、そして先程購入したボディソープを取り出した所で冷蔵庫に食料を入れていた廉造が反応を示した。

「そのボトル何ですのん?香水にしてはえらい大きいですね」

「やっぱり香水に見える?これ、ボディソープ」

「ふんふん、女の子が好きそうなデザインですね」

白と紺のストライプ柄のスリッパのタグを切り離し、小さな箱に窮屈そうに詰め込まれた枕カバーを取り出す。一人暮らし向けの狭い私の部屋には徐々に廉造の私物が増えていき、その内この部屋に移り住むんじゃないかという位あちこちに廉造の物が散らばっている。
クッションを抱いてボディソープのボトルと睨めっこする廉造と入れ違いに台所に入った私は冷蔵庫から朝作っておいた肉じゃがの鍋に火を掛けて温めていく。二つあるコンロのもう片方には水を入れた小さい鍋を乗せて味噌汁を作る準備を進めていく。ご飯は夕方に炊きあがるように予約をしていたお陰で帰って来る少し前に炊き上がっていて、台所にはほんのりとご飯の匂いが漂っていた。

「もずくの味噌汁美味しいですねー!もずくって酢漬けでしか見た事あらへんわあ」

「沖縄じゃよく味噌汁の具になるらしいよ。美味しいよね、私も好き」

肉じゃが、ご飯、豆腐ともずくの味噌汁に梅肉ドレッシングをぶっかけたサラダが並んだ小さいテーブルを二人で囲んで食事を進めていく。わかめやとろろとは違う食感や喉越しを廉造はすんなり受け入れてくれたらしく美味しい美味しいと言って食べてくれた。
野菜は嫌やと駄々を捏ねるので無理矢理に口に詰め込むのも今や週末には必ずと言っていい程見掛ける日常の一部分になってしまった。
洗い物は俺がやりますからーと言って台所で慣れない手付きで皿洗いをする廉造はあまり家の手伝いはしていなかったんだと思う。聞けば大家族な上に近所のお家とも仲が良くて、夕飯は友達の家でいただく事が多かったんだそうな。正十字学園はありとあらゆる施設が詰まった一つの大都市のようなものだし、廉造が通う正十字学園もお金持ちの坊っちゃんやお嬢様が主を占めている。そんな中で更に塾にも通っているのだから彼の実家も大きいに違いない。普段はシャボン玉より軽い廉造の口からは学校や塾の話、家族の職業などは一切出て来ない。
少しだけ疎外感を感じて寂しくなるが私も家族の事は一切教えていないのでお互い様と言えるだろう。私だけ廉造の全てを知るのは不公平というもので、その辺りは私も大人なのだからあまり気にしないでおこう。

「名前ちゃん、お風呂一緒に入りません?」

「やらしい事しないならいいよ」

「ははは…そんな、廉造くんは紳士ですよ?そないな事しませんえ」

「私知ってるよ。廉造くんが変態だって知ってるよ」

洗い物を終えた廉造が濡れた手で私の頬を包んで風呂のお誘いをしてくる。その手を払い落としながら渋々立ち上がり窓際に干していたバスタオルを取りに行く。その後ろで廉造が部屋の端に置いてあったボディソープのボトルを手に取った。

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