君は真実を手に入れたようだね。
ああ、そんな顔をしないでくれ。我輩は通りすがりの猫又。ただこの家の夕飯の食べ残しを少々拝借しようと思って、この割れたガラスをするりと通り抜けただけなのだ。
酷い顔じゃないか。悪魔落ちになったというのに目が澱み隈が出来ている。ああ、ああ、その姿の何と見苦しい事か!我輩、猫又で良かった良かった。
しかし、君は記憶を取り戻したようだが…名前は思い出せたのかい?
「思い出したよ」
そうかそうか、其れは良かった。ならば、君の名前を教えてくれないか?君とはもう会わないだろうが名前位なら覚えていてあげても構わない。悪魔に落ちた哀れな女の子だと。
「…私の名前は…」