つつめども袖にたまらぬ白玉は




 月すら溶けてしまいそうな熱だった。
 今、布団の上にはひとりだけ。熱は冷めて、欲は散って、彼は去った。ぐったりと布団に顔をうずめると、慣れた匂いがする。
 数刻前のことは朧気にしか覚えていない。とにかく痛くて、苦しくて、頭がおかしくなるほど気持ちよかった。声を殺す為に噛んだ唇は、夜が明け始めた今でも痛みを持つ。
 乱暴で容赦のない扱いを受けた。こちらへの気遣いなんてなかった。苦痛だった。地獄のような痛みだった。

 ――それでも、焦がれてしまうのか。
 目頭が焼けるように熱くなる。まだ流せるの。一生分の涙は流れたというのに。
 あんな目に会って、刹那の為に利用されて、それが堪らなく哀しかったはずだ。
 なのにどうして、それでもいいと思う。どんな繋がりでもいい、なんて。

「……愛なんて、いらないから」

 もう決して、結ばれることはないのだから。

「捨てないでください、若っ……」



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