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◎拍手お礼SS hikari番外編
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【キスの日】

「ねぇねぇ莉央さん、今日がなんの日か知ってますー?」
「えっ?え、んー……、何の日?」
「今日はね、キスの日なんだって!」
「へぇ〜」
「今日はその話題多かったよね」


そんな会話が交わされているのはポアロのソファー席の一角。莉央と蘭、園子による女子会が開催されるのはこれで三度目だ。
約束をしているわけではなく、莉央がいつもの様に本を読みに来ているタイミングで彼女達がやって来ると、こうして自然とお喋りをするようになっていた。
先程の話題を持ち出したのは園子だった。5月23日がキスの日というのは初耳だ。


「でも、なんでキスの日?」


首を傾げた莉央の声に答えたのは、園子でも蘭でもない声だった。


「それは、今日が日本で初めてキスシーンが登場する映画が封切りになった日だから、ですよね」
「さっすが安室さん!正解でーす!」


お待たせしました、と三人の前にヨーグルトパフェをサーブした安室がさらりと答えをくれた。なるほど、と納得して莉央は机の上のスプーンを二人に手渡す。ごゆっくりどうぞ、と笑顔で言い残して安室はカウンターに戻っていった。

頬杖をついた園子は、悔しそうな表情でパフェを口に運んでいた。


「あーあ、今日真さんに会えたなら、キスの日なんだからキスしてよ!って迫れたのにぃ」
「園子ったら、今日はずーっとこればっかりなんだから」
「だって、ねぇ?こんな日にかこつけてオネダリでもしなきゃ、キスしてもらえる日なんてまた当分先の話になっちゃいそうじゃない!」
「オネダリって、」


盛り上がる女子高生達の様子を、莉央はパフェをつつきながらニコニコと見守っていた。
どうすれば奥手な彼氏からキスをしてもらえるか、なんて、高校生のピュアな恋愛話は可愛くて微笑ましいと思う。
どうやら二人とも、まだ彼氏とはそこまでの関係には至っていないそうで。修学旅行中に蘭が新一の頬にキスをしていたという話を園子が暴露し、慌てて弁解する蘭に青春だなぁと莉央は笑った。
そんな話題はいつの間にかパフェの上に乗っていたチェリーの茎を舌で結べるかという話になり、そこから誰がキスが上手かという話に変わっていた。


「安室さんは絶対テクニシャンだと思うのよね」
「……確かに、」


園子と蘭がカウンターに立つ彼へ視線を向ければ、ん?と安室はいつものスマイルを浮かべて首を傾げていた。ちなみに莉央は茎を結ぶことができなかったのだが、彼ならばあっという間にできてしまう気がする。


「ね、莉央さんの彼はキス上手なんですか!?」
「へ、?えーっと、」


上手いかどうかと聞かれれば、間違いなく上手いと思う。けれど、それを正直に言うのもどうかと思って莉央は曖昧に笑った。
張本人に聞かれているような状況ではなかなか口に出し辛い上に、彼女達が思っているような可愛いキスは、おはようや行ってきますの挨拶くらいでしかしないのだから。
先程の会話を莉央が微笑ましく思ったのも、自分からおねだりしなければしてくれないような状況の場合、その後に待っているのは可愛らしいキスではなく、ベッドでどろどろに溶かされる時間だということを知っているからである。


「まさかキスしたことないなんて言うんじゃ…」
「あはは、さすがに……。もういい大人なので」
「ですよね!」


さぁさぁ!と言い逃れは許さないとでも言うようにこちらを見つめる園子の視線に負けて、莉央はちらりと横目でカウンター側を伺った。
彼はちょうど、カウンター席のお客さんと話をしていた。


「上手だと思う…よ?」
「どんな感じなんですか、大人のキスって!」


興味津々といった様子で身を乗り出してくる園子に、蘭も控えめながら同じようなキラキラとした瞳で莉央を見つめている。


「えっ!?えーっと、優しいんだけど、ちょっと強引な感じもするというか…」
「「キャー!!」」


それでそれで?と続ける女子高生達に、これ以上は勘弁して、と莉央は赤くなった耳をパタパタと扇いだ。どんな、と言われても、彼からのキスを言葉にして説明など出来るわけがない。

莉央の視線に気付いて僅かに上がる口角も、自分より少し薄い唇が掠めるように触れる瞬間の吐息の擽ったさも。最初は優しく触れる癖に、一度搦め取られてしまえば、あとは溺れることしか出来ないような激しいキス。
それなのに、離れていく時はやけにあっさりとしているから、気付けばもっと、と自分から言わされてしまうのだ。そうオネダリした後の、満足そうに甘く細められる青い瞳も大好きで。

色々と鮮明に思い出してしまったそれを言葉にするなどという羞恥プレイに莉央が耐えられるはずもなく。
はい、わたしの話はお終い!と莉央は食べかけのパフェを口に運んだ。


えぇーと残念そうな二人の声と、頑なにそれ以上を語ろうとしない莉央の様子に、カウンターの向こうからその様子を観察していた安室はくすりと笑った。