今日の授業内容はこうだ。接吻をさせる。くのたま5年生としては物凄く簡単だし、今更感が半端ないが課題は課題なのでこなす。まぁ私は行儀見習いなのでプロになるつもりもない。プロのくのたまを目指している同級生なんかはもっとお色気ムンムンの色の授業をやっているらしいけれど私には関係ないや。
うーん、接吻…接吻ってどうやってするの?
今まで忍たまなんてからかう存在でしかなかったから惚れた腫れたのそういうことなんて経験してこなかったから分からないや。
でも課題だし…やっぱりまずは告白でもしなきゃいけないのかしら。
ってことでたまたま近くにいた不破に告白してみることにする。
「ふ、不破!」
「え?あ、くのたまの東條さん…なにどうかした?」
「あ、あのね、禁書をちょっと見たいんだけど中在家先輩がいらっしゃらないから不破に出してもらいたくて…」
「げっ、アイツは東條じゃないか!」
「うん、そういうことなら今から行くよ」
「雷蔵、相手は東條だぞ。気をつけろよ!」
「三郎は黙ってて」
「あ、じゃあ行こっか」
ふはは鉢屋め。お前の不破は貰った。
接吻の相手は誰でもいいんだけど正直鉢屋だけはどうしても警戒を解いてもらえる気がしないので止めた。昔これでもかと下剤を仕込んだのがいけなかったらしい。
ザクザクと広い庭を進んで行く。人影もないしそろそろこの辺でいいか。
くのいち教室直伝の男の心をグッと掴む仕草であるらしい不破の服の裾をキュッと引っ張って立ち止まらせる。
「不破、ちょっと待って」
「え?」
「ごめん…禁書が見たいって嘘なの…。本当は私、不破に言いたいことがあって…」
「え、…えっ?」
俯いていた顔を上げて上目遣いで目を合わせる。もちろんこの時に涙腺を緩めて瞳を潤ませることは忘れない。完璧だ。
「わ、私、実は不破のことが…!」
「ち、ちょっと待って!!」
す、まで言いかけて変な口の形のまま思わず固まってしまった。呆然としながら不破の様子を伺うと、首まで赤くさせながら口をあわあわとさせている。待って、これは、もしや、嫌な予感。
「ぼ、僕も東條さんのことが好きなんだ!」
や、やっぱりいいいいいいい
ボッと、それこそ顔から火が出そうなくらい体温が急上昇したのを自分でも感じた。え、まってなにこれ、こんなの、まずい。
「昔からずっと東條さんのことが好きだったんだ。だから今すごく嬉しいよ」
えへへとだらしない表情で笑う不破にもう何も言えない。ど、どうしようなんでこんなに私まで心臓がバクバクいってんのよ。こんな予定じゃ、
「口ぱくぱくしてるよ。…可愛いね」
「…ッ!」
もう、ダメだった。逃げた。ダッシュで逃げた。不破の顔と頬に添えられた手の感触が消えそうにない。きっと私の顔は鬼灯みたいに真っ赤なんだろう。明日からの学園生活を思うと頭と心臓が痛かった。
それもまた始まり
ごめんなさい山本シナ先生。課題はこなせそうにないです。
20120523