「おい」


うへぇまた来た。三日連続で来たかと思えば数ヶ月来なかったりまちまちなお客さん。


「おいっつってんだろ」


別に若いし所謂イケメンだしそこはいいんだけどさぁ…面倒臭くて…なにがって性格が。


「聞こえてんだろ東條無視すんなばかぁ!!」

「あーはい、スミマセン。ちょっと考え事してました。」


この人、お客さんのアーサーカークランドさん。聞いての通り外国人。初めてうちの店に来たときは何事かと思った。金髪キラキラで日本人では絶対にないグリーンの目の外人がうちの花を触って英語でブツブツ呟いてるんだもん…私英語喋れないし店長もビビって奥に引っ込んでくしもうどうしようかと。しかもあり得ないことに王子様みたいなその容姿に私はガチガチに緊張していた。王子様とか。当時の自分を思いっきり殴りたい。


「なぁ…実は今から友人の家に行くんだが…なにか花を持って行ったほうがいいと考えてな。なにを…贈れば喜ぶんだ…?」


でたー!!!これだよ!!
頬を染めて言うな!初めてのときも王子様だと思ってたのにこの言葉を聞いて一気に白い目で見るようになった。なんでって、プレゼントの相手が男性だからです。


「なんなんですか…そんな恋する乙女みたいな反応…」

「こ、恋って!ちげぇよばかぁ!本田は大切なゆ、友人だって言ってんだろ…!」

「友人って言葉をそんな真っ赤になって言わなくても…」

「うるせぇ!」


一応、友人、らしい。多分。最初は本気で白い目で見ていたけど、弟に贈るプレゼントの話をされたときも同じ反応だったからアッチではないんだと思う…多分。どっちにしろ正直気持ち悪いです。本田さんも毎回プレゼントとか貰って可哀想に…


「本田さんならどの花を贈っても喜んでもらえると思うんですけれど…。あ、カーネーションとかどうでしょう」


本田さんほどカーネーションの似合う男性はなかなかいないと思う。本田さんは貰ったとき苦笑するかもしれないがそれでもいいだろう。ちょっとした悪戯心だ。


「そうか…ならそれを頼む。」

「分かりました。」


安心したように他の花を見ているカークランドさん。ふふふ、渡したときの本田さんの反応を見て戸惑うがいい。カサカサと手早く花束を作って包みながら自分は見れない様子を想像していたらにやけてしまった。おっと、慌てて顔を俯かせる。


「?なに笑ってんだ東條」

「イエナンデモナイデス。」


出来上がった花束を渡す。多分珍しく満面の笑みになっているだろう。その証拠にかなり訝しげに受け取るカークランドさん。いけないいけない私のほんの細やかな悪戯がばれてしまう。お会計を済ませ、見送るためにお店の外まで一緒に着いて行く。


「どうもありがとうございました」

「ああ」

「あ、そうだ。本田さんが、アーサーさんはやはりイギリスの方らしく紳士然としていて格好良いですよねぇって言ってましたよ!今日渡すときもそうやって渡してあげれば喜ぶんじゃないでしょうか」

「ほ、本当か、そうか、本田そんなこと言っていたのか。あ、ありがとうな優」

「いえいえとんでもないです〜」


もちろんそんなこと言ってませんけどね!
あー面白いどんな風になるんだろう。
次にお店に来てくれるのは苦笑した本田さんか、それとも顔を真っ赤にさせたカークランドさんか。





退屈の極み





20120523



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