ガタリとい組の優等生らしくもなく大きな物音を立てて部屋に入ってきた兵助に何事かと刮目する。慌てた様子で話す知らせを聞いて一目散に飛び出した三郎を追って保健室に駆け込んだ。


「雷蔵!!!!」

「三郎落ち着いて!…大丈夫、寝ているだけだよ」

「優、どうしよう雷蔵が、」

「大丈夫、大丈夫だから」


保健室に横たわる痛々しい雷蔵の姿。顔色は真っ青で掛け布団から出ている右肩は包帯に巻かれている。


「雷蔵、なんで、今日のお使いは簡単なものだって言っていたのに、」


寝ている雷蔵よりも真っ青なんじゃないかと思うくらい顔色の悪い三郎の背中を優しく撫でてやる。大丈夫大丈夫、雷蔵だってずっと忍者のたまごをしていたんだ。こんな柔なことじゃどうにもならないから。


「…善法寺先輩に聞いたんだが、どうやら山中に仕掛けてあった罠にはまってしまったらしい。足に縄の跡があるから避けられなかったんだろうって。」

「そうなんだ。雷蔵も罠の対処くらい出来るはずだろうに、それでもこんな風になってしまうなんてね…」

「誰が通るかも知れない所にこんな罠だなんて。一体…」


難しい顔をして呟く兵助の膝を摩ってやる。大丈夫だよきっと只の事故さ。きっと獣用の罠の目標が無くなってしまっただけなんだよ。


「兵助、難しいことは考えるべきじゃない。下級生が通るかも知れないんだ、どんなつもりかは知らないが罠は一つ残らず解除しないと。」

「…ああ。」


音もなく部屋を出た兵助を見送る。多分、八と勘右衛門にも知らせに行ったんだろう。
隣でずっと俯いている三郎の方を見やってもう一度背中を撫でてやった。


「三郎、雷蔵も油断しただけだ。ほらさっきよりも顔色が良くなっているよ、もう直ぐで目を覚ます。」

「…、ああ。」

「三郎、」


まだ俯いている三郎の顔を面が剥がれないようにそっと両手で包み此方を向かせる。俺の目を見て、大丈夫だよ。


「雷蔵が目を覚ましたときに泣きそうな顔をしてみろ。きっと雷蔵だって泣きそうになる。頭を叩いて罵るくらいのことをしておけ。」

「…そう、だな。」


やっと顔色のよくなった三郎に俺もそっと息を吐く。良かった、良かった。本当に良かった。


「優、お前にそう言われると一番安心する。」









透明な仮面








ああ良かった良かった。
俺の一等好きなその顔が見れて。
一生懸命頑張った甲斐があった。

騙してごめんよ、三郎。



20120519


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