※幼少銀時時代
私を見るその眼差しから汲み取ることの出来る感情はほぼなかった。先程までの情景からは天と地程も差のあるこの静けさはこの場にいる殆どの仲間、若しくは全員が目前にいる少年に殺されたということになる。かく言う私も、腹には大きな穴が開いている訳だが
ほてった頬に冷たい地面が気持ち良い
当事者の少年は今、しゃがみ込み私の目の前で横たわっている亡きがらの胸元をごそごそと漁っていたかと思うとまた私へと目を向けた
「アンタ何か食いもん持ってる?」
無言で少年を見つめていると今度は近づき私の胸元を漁りだした。生憎だがそこには何もないよ
ぼうとする意識の中視界から一向に消えない少年は、どさりと少し大きな音をたてて目の前に座り見下ろして来た。あとはもう死ぬだけの私に何の興味を見出だしたのかはわからないが立ち去るそぶりは見せずにまた視線を合わせてきた。その目は深く淀んでいるようにも見えるのに霧の中でぼんやりとする朧げな光を点しているようにも見える何とも不思議な色合いだった
「ねぇ、アンタ死ぬの?」
「、…そのようだ」
随分と素っ気ない言い方だが、それしか言いようがなかった。私は死にたくはないのだ
「…アンタにもカゾクってあるんだろ?」
「そうだよ。お前と違ってね」
「……。」
「こんなふうにお前みたいなガキが剣を振るっているなんて、お前の身の上など易々と想像出来るさ」
表情は変えない少年だが、目の奥深くがひんやりと冷えた気がした
づきり
そろそろ腹の熱も篭って辛い。もう早く死んでいいかな、死ぬのって案外恐ろしくないのかもしれない
「…少年、お前歳は幾つだ」
「…」
「答えたくなければいいさ、」
「少年、ここでお前に殺されるのも、こうやって少しの間だがまだ生きているのも、お前が私に興味を持ったのも、何かの、縁だ、ッ」
ひゅうひゅうと鳴る喉も限界かもしれない
「…痛ぇか?」
「、もう大分わからない、よ」
「そっか」
「嗚呼。だから、もう少しだけ付き合ってくれないか、な」
「アンタが死ぬまでって意味?」
「そうだよ」
「俺が殺したのに?」
「そうだよ」
暫く続く沈黙は私にとっては心地好かった。心地好い、というよりも気にしていないだけかもしれないが
少年は眉間に皺を寄せ何とも言えない表情をしていてそれが妙に可笑しかった
「アンタ、変だな」
「そうだね」
「アンタみたいなやつ始めてだ」
「私も、お前みたいな馬鹿強いガキは初めて、会った、よ」
「…ぎんとき」
「…そうかい」
「うん」
この右手さえ上がればその銀色を撫でていたのに
ふ、と
いきなりの暗転
落ちた瞼だと気づき一生懸命上げ、薄れゆく視界の中ぼやける銀色を目に止めた
いい名前だ、と思った
ここで絶える運命を呪い
少年に少しの感謝と恨みを贈る
よまい言
20100219
20101121修正