「おはようレギュラス。今日もかっこいいわね」
嗚呼、まただ。朝食をとりに大広間に向かう途中、また今日もいつものように声をかけられた。後ろなんか見なくてもわかる、ナマエ先輩だ。
「おはようございます、先輩。先輩はもう朝食とられたんですか?」
「いいえ、まだよ。レギュ、どうせなら一緒に食べちゃってもいいかしら?」
「もちろんですよ」
正直、面倒臭い。僕は朝は一人でゆっくりと食べたいのに。普段なら何かと用事をつけて断るものの、それができない理由は彼女だからと言っていい。まあ彼女がと言うよりは、彼女の家が、と言ったほうがいいだろうが(とゆうかそれしかない)。僕が次期当主と言えどもブラック家よりも名高い名家はたくさんある。そのひとつがミョウジ家という訳だ。彼女は僕のことをブラック家次期当主としか見てないだろうし、僕も彼女のことはミョウジ家令嬢としか見てなどいない。
「ねぇレギュ、そういえば貴方のお兄様、最近悪戯がちょっと過ぎるようね」
「、は?」
「昨日私の友達がフィルチへの悪戯に巻き込まれて顔中ニキビだらけになってしまったの」
「…それは大変ですね」
びっくりした。彼女の話よりも朝食のほうに集中しててあまり聞いていなかったら、いきなり
この女、家の兄が、などと僕が謝るとでも思っているのか?
あの馬鹿兄貴がブラック家を裏切ってから周りの人間はアイツの話をしたがらなかったし、入学してからは噂は耳にしても皆、僕の機嫌を伺ってその話題には触れなかった。それなのにこのミョウジ家令嬢はそんなものスルリと飛び越えて。今、僕は不意打ちで仕掛けられたこの何気ない会話にいつも通りの澄まし顔をしていられただろうか。ああ面倒臭い。
「悪戯はよろしくないと思うけど、彼って人気者よね。確かに成績優秀だしクィディッチも上手で、それにほらハンサムよね」
…この人は一体何故僕にこの話題を振ってくるのか。久々に真正面から聞くアイツの話は僕を不機嫌にさせるには十分な効果があった。普段クールだと周りの人間から言われる自信のある表情も、今は固くなってゆくのがわかった
「ふふふ。レギュラス、貴方今ものすごく酷い顔よ」
「…すみません。少し、体調が悪くて。」
くすくす
「嘘おっしゃい、貴方はお兄様のことが嫌いだものね」
…この女、わざとか。
「…ナマエ先輩、一体なにがしたいんです?後輩イジメも程々にしてくださいよ」
「ふふ、ごめんなさいね。私、貴方のその表情が大好きなのよ」
憎しみと寂しさに揺れる強い瞳が
がたりと席を立ち、呆けた僕を置いて去っていく
寂しさ?そんなものあってたまるか
20090805
20101119修正