わあわあと口から漏れるのは赤子のように弾ける音ばかりで、なんとか止めたいと思えども到底無理な話だった
いま ここに あなたが いないことが かなしくて ならないの です
大聖堂の中央に座る女はそう言ったように思う。此処は未来を詠む場所であって過去を顧みる場所ではないというのに
嗚咽混じりにようやっと聞き取れた言葉から察するに、どうやら彼女は寂しいらしい。「あなた」とは一体誰なのか、そんなことはどうでもよかった。ただ、彼女は心此処に在らずで周りなど見えてもいない、それどころか見ようともしないことに大層腹が立った。不幸なのは世界でお前だけじゃない
嗚呼五月蝿いなあ
ぐいと胸倉を掴んでやる
「いい加減五月蝿いんだよね。そんなにそいつが大切なの?だったら」
一瞬で静まり返る聖堂には先程までいた赤子はいない
そこにはただ、従順な世界の裏切り者がいた
柔らかな刺
「僕達が生き返らせてやってもいいよ」
20100201
20101123修正