まず気付いたのは、臭い
何時も香らせる薬品の落ち着かない臭いは注意しなきゃ感じ取れないような些細なものだったけれが、それがあるのとないのでは全く違った
そこで一旦不信を感じてしまえばボロボロと何もかもが剥がれ落ちていく様に思われた
私を見るその視線すらどこか距離を感じ、私の不信感はいつしか確信へと変化していく
目の前にいるのは一体誰なのだ。見た目も雰囲気もあの人なのに何が違う?
すれ違いざまにぱちりと目が合って軽く会釈だけして行ってしまったのは誰?
カツカツ、カツ。
足音が止まる。私の視線に気付いたのかその年齢には重すぎる装束を翻して向き合う
「…どうしました?」
声まで同じ。そっくりじゃなくて、おんなじ
ぞわり 粟立つ
やだ、いやだ
気持ち悪い
「…やめて。イオン様はどこにいるのよ」
それは困ったような笑顔を浮かべるばかりだ
20101123