一度だけ、一度だけやってしまったことがある。きっと他人から見れば頭のイかれてる女だろうし、もしかしたら狂愛者と見られても可笑しくない状況だったのかもしれない。勿論、断じて違うと言い切れるし、あの平和島静雄にそんな歪んだ感情を持っているなんて思われるのは御免被りたい。ただ、只"興味"であったとしか言いようのないことだ



その日私は偶偶保健室に向かった。偶偶、というのは何時も通り偶偶保健室へ行っただけで目的はなく、只私の気の赴くまま何の気無しに行っただけだ

そう、何時も通り

しかしその日は何時も通りではなかった。何時も私が使うベッドには先客がいて、しかもそれがあの平和島静雄だった。初めて見る平和島静雄の大人しい寝顔は、とても穏やかだなんて言える訳なく、眉間に皺は寄り、汗で張り付いた髪は無駄に色気を醸し出していた

今思えばあの時の私は妙に興奮しており、上手く頭が働いていなかったのだろう

あの、『平和島静雄』が寝ている。同じクラスではあるが喋ったこともなく、視線だって交わったこともない。でも噂だけはよく聞いていた。彼はヒトを宙に舞わせナイフも貫かない"怪物"だ、と。その『平和島静雄』が隙だらけで寝ている

確かめたい、と思った

心臓が煩い。脳味噌まで響く程にガツガツと肋骨を打ちつけている。養護教諭の机に無防備に置いてあるカッターを手に取った。やばい、こんなにも何かを押さえられなかったことがあったろうか、ああ、すごく、すごくいい、すごく、やばい、


チキチキと伸びゆくカッターナイフ

最大限まで伸ばし、包帯も絆創膏も貼られていない真っさらな首筋に宛がう。ハハ、荒い息が抑えられない。まあこんなことをして興奮する私は変態か



あと、少しで、







「ねぇ、何やってんの?」


刹那、私が振り返るよりも速く



ガツン





「う、ぐあッ…!あ、あ」

「ねぇ、何やってんのってば」


頭がぐらぐらする
揺れる視界を無理矢理働かせるとそこには、『折原臨也』


――――――――

ぐだぐだくだぐだ


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