彼女は人を疑うことを知らない。全員が全員、自分のようにいい人だと思っているらしい。僕は彼女のそういうところが気にくわなくてたまらなかった。ほら、今だってなまえは僕の前でのんきにへらへらと笑っている。


「ねえ、逃げなくていいの」


僕はなにをやってるんだろう。わざわざなまえを呼び出して、なまえの小さい体を冷たいタイルの壁に押し付けたりして。


「リーマスはひどいことしないもん…優しいからできないよ」


真っ黒で大きい瞳に見つめられると僕が悪いことをしているみたいで少し胸がちくりとした。(しようとはしてるんだけどね)


「そんなこと言ってると騙されちゃうよ」

「誰に?」

「僕とか、他の男とか。」


そう言いながら、視線を空にうつす。こんなにも真っ白な彼女を僕は傷つけようとしているんだ。傷つけて、傷つけて、僕しか見えないように、いつまでも僕というみえない糸でなまえが縛られればいいなんて、最低だね。


「他の人はやだけどね、」


くい、とローブを引っ張られる感覚と耳元に寄せられる小さなくちびる。


「リーマスになら、騙されてもいいよ」



殺し文句で崩壊
(ああ、もうどうにでもなれ)


20101228


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