「こら、指を噛むのはやめろと言っているだろう」

「あっ、ご、ごめん」


私は昔から自分の指を噛むのが癖だ。蓮二に言われてからはなるべく噛まないようにと気をつけているのに、気付けば無意識のうちに噛んでしまっている。単純に噛まなければいいのだ、なんで私はそんなに簡単なことができないんだろう。はあ、とため息をつくと蓮二と目が合う。


「そんなに指が噛みたいなら俺の指を噛めばいい」


綺麗に笑いながら、なんてこというんだろうと思った。蓮二は頬杖をついている手とは逆の手を私の方へと差し出す。蓮二の手は私の手と違って綺麗で、でも骨っぽくて大きくてちゃんとした男の子の手だ。


「全部なまえにやろう、」


自分の手を噛んでいる時は何も感じないのに、差し出された蓮二のすらっとした長い指にどきりと心臓が疼いた。おいしそう、純粋にそう思ったと同時に私は彼の指にかぶりついた。

(といっても甘噛み程度だが)


どくどくと心臓の音がうるさい。鼓動というものはこんなにも速くなるものなのだろうか、そんなこと頭の悪い私には分からない。でもこれだけは分かる。私、今興奮してる。…我ながら変態だと思う。だって目の前にいる蓮二にこんなにも欲情しきっているのだから。

最後にぺろりと一舐めして口を離した。ああ、惜しいなあ、もったいない。もう少し噛んでいたらよかった、なんて。指から口を離してからそんな後悔に苛まれた。


「…なんだかこれは、癖になりそうだな」


はは、と笑いながらそう言う彼も私に負けず劣らずの変態らしい。

おそろいの牙の痕


20100409


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