だんだんと外が明るくなっていくのを瞼の裏で感じた。また今日が来てしまった、なんてまだはっきりと動き出していない脳で思う。


「…なまえ、」


僕の隣には何もなかった。彼女の姿形、彼女が大切にしていたぬいぐるみ、彼女の体温でさえ、なくなっていた。もしかしたら、最初からなまえなんていう人間は存在していなくて僕の行き過ぎた妄想の産物なのかもしれない、なんて錯覚してしまうほどに世界は色褪せて見えた。

だけど僕は覚えてるよ。なまえの体温、声、匂い。夢なんかじゃない。確かにここに、彼女は存在していたのだ。

なぜ彼女は僕を置いていってしまったのだろうか。その疑問だけがぐるぐると心を巡った。彼女のためなら僕はどんなところにだって行けたし、命なんてすぐに捨てられたのに。

僕はきみの一番にはなれなかったのかな。

彼女に対して怒ってもいるし、悲しくもある、だけど思い出すのは楽しかったことばかり。はは、なんでだろうね、なまえとは喧嘩ばかりしていたのに。そこまで考えて喪失感と絶望感に押しつぶされてしまいそうになった。

ああ、そうか。


きみはもういないのか


20100131


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